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- いのくち・ふみこ/札幌市出身。 (株)いただきますカンパニー 代表取締役。帯広畜産大学卒業後、やりたいことを探して試行錯誤の末に起業。十勝を舞台に「畑ツアー」や「畑カフェ」を通じて、畑でなくてはできない体験を提供し、畑と食卓を結ぶ役割を担う。社名には、“いただきます”の気持ちを育むきっかけを提供するという思いを込めた。自らが観光農場を所有するのではなく、近隣の農家との連携によってそれらの企画を行うのが特徴。起業して以来、お手本のない事業に奮闘し、ファンを拡大する。2児の母。
― 井口さんは羊飼いに憧れていたそうですね。
井口さん :私は18歳までのほとんどの時間を札幌で過ごしましたが、生まれたのは登別市の、しぼりたてのヤギのミルクを飲んでいたほど、牧歌的な環境でした。父はその頃、ニュージーランドから電気牧柵を輸入する仕事をしていました。放牧で用いる柵です。日本の酪農では、多くの場合、牛が牛舎につながれていますが、ニュージーランドではみんな放牧です。父はそういう酪農を広めたかったんですね。そんな父親だったので、札幌時代も、中学生の私を羊の牧場に滞在させてくれたりして、私にとって羊は身近な存在でした。羊飼いの暮らしは、ずっと、いいなぁと思ってましたね。自給自足に近い生活をしている人が多いんですよ。
― なるほど。今の時代の日本ではちょっと個性的な夢ですが、お父さんの影響が大きいのですね。
井口さん :そうですね。父とは、好みを含めて今もよく似ていますから。現在も札幌に住んでいますが、似すぎているからでしょうね、しょっちゅうぶつかってます(笑)。
― 帯広の大学に入学する以前は札幌にいらしたのですね。
井口さん :小中高と札幌です。私は学校というところが肌に合わなくて、だから札幌で過ごした時間は、ちょっと苦い思い出です。学校の、同じ年の子ばかりを集めて同じように行動することを求められる、あのシステムがダメだったんですよね。どうしても馴染めなくて。
― 大学はどうでしたか。
井口さん :楽しかったです。十勝の、高い空の下での生活が実現しましたし、私が通っていたのは帯広畜産大学という、その名の通り畜産を中心にした学校です。価値観の近い人に多く出会えましたし、さまざまな牧場を見て回るなどし、充実した大学生活を送ることができました。
― その頃は畜産農家を目指していたのでしょうか。
井口さん :めん羊農家ですね。羊肉の生産農家です。でも、羊飼いという少女時代からの夢に向かって、イメージを具体化していくほどに、何か違う気がしてきたんです。ほかにやりたいことが見えなかったので、私はきっと農家になりたいんだろう、羊飼いになりたいんだろうと、ずっと思い込んでいました。けれど、おいしいお肉をつくるために心底一生懸命になれるかというとそうではなくて、私が憧れていたのは、職業としての羊飼いというより、羊飼いのような暮らしだったということが、だんだんわかってきたんです。
― それから、本当に進みたい道の模索が始まったんですね。
井口さん :そうですね。振り返ると、このためにすべてあったのだと思えますが、紆余曲折ありました。羊飼いの、お肉づくりではない部分が好きなら何をすればいいのか考えた末に、出てきた答えが「観光」だったんです。食につながる“農”の価値、素敵さを、もっともっと伝えていきたいと思ったからです。答えを見つけてからも、仕事としてどう形にすべきかの肝心なところがわからなかったから、試行錯誤しました。
― 試行錯誤の時期にはいろいろな場所に行かれたみたいですが、十勝に戻っていらした。
井口さん :海外を含めて、けっこういろんなところを見たんですけどね、戻ってきました。小学生の頃、父親に連れてきたもらったことのある十勝の風景や、そこでの体験が、心深くに沁み込んでいたのかなぁと思います。
― 子どもの頃の原体験に導かれたのですね。
井口さん :たぶんそうです。それに、大学のとき実際に生活してみて、冬が楽に感じていたんです。十勝って札幌と比較してもずいぶん雪が少ないんですよ。少なさに拍子抜けするほどでした。
― 確かに、雪が少ないのは、北海道の冬の暮らしを楽にしますね。
井口さん :雪かきだけでも重労働ですからね。でも、そのかわり、寒いですよ。わが家は古い住宅を住まいにしているからというのもあって、水道が凍って、水道管から水道管の形の氷の塊が出てきたときはびっくりしました!最初のうちは業者さんにきてもらっていたのですが、作業の様子を観察しているうちに、自分で取り出せるようになっちゃいました。これも生きるためのスキルです(笑)。
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