• ご加入の皆さま
  • マイページ
  • 共済金のご請求

今月の「生きるヒント」

シリーズ 人生のチャレンジ 移住を選んだ人たち 第3回《後編》畑ガイド 代表 井口芙美子さん

羊飼いになりたかった少女時代。したい仕事が見つからず、「ならば自分でつくろう」と、十勝で起業!

前編はこちら

プロフィール
いのくち・ふみこ/札幌市出身。 (株)いただきますカンパニー 代表取締役。帯広畜産大学卒業後、やりたいことを探して試行錯誤の末に起業。十勝を舞台に「畑ツアー」や「畑カフェ」を通じて、畑でなくてはできない体験を提供し、畑と食卓を結ぶ役割を担う。社名には、“いただきます”の気持ちを育むきっかけを提供するという思いを込めた。自らが観光農場を所有するのではなく、近隣の農家との連携によってそれらの企画を行うのが特徴。起業して以来、お手本のない事業に奮闘し、ファンを拡大する。2児の母。

田舎だって都会だっていいじゃない

― 田舎の良さってなんでしょう。

井口さん :人との距離が近いところでしょうか。田舎って、人との、物理的な距離は都会よりあるじゃないですか。その点都会は、人が密集しているのに、遠いですよね。ご近所に誰が住んでいるか知らなかったり、毎朝電車で顔は見るけど知らない人ばかりだし。あと、都会は選択肢がありすぎて大変だと思うこともあります。人生に迷いやすそう(笑)。でも逆にうらやましいところもありますよ。都会は歩いて行けるところに何でもあるのがいいなぁって。こっちは車社会ですから。

― 田舎暮らしに憧れている都会の人も多いです。

井口さん :Iターンにしても、Uターンにしても、したいならしちゃえばいいのに、って思います(笑)。私は、そこまで身構えなくていいんじゃないかと考えるほうですね。私自身は、十勝に来て、のびのびと自分らしく生きている自分を発見しました。そういう人はほかにもいると思います。ただ同時に、「みんなで田舎暮らししようよ!」と、ことさら言うつもりはなくて、都会の暮らしを楽しみながら、ときどきリフレッシュしに田舎に行くというあり方もまた、いいと思っています。

玄関に、鹿肉がどーんと

畑の恵みをいただきます!今日のおやつは、長イモ団子のぜんざい風。子どもたちも大好き。

― 寒さは厳しいけれど雪は少ない。ほかに十勝の特徴を挙げるとすると?

井口さん :やっぱり、食が豊かだということだと思います。みんな、おいしいもの食べてますもん(笑)。収入面では、都会の方がずっと上なはずだけど、こっちの人のほうが、おしなべていいもの食べていると思います。幸せなことに、まず、いただきものが多い。ちょっと歩くと、ジャガイモとかカボチャとか、どっさりと。

― ジャガイモにカボチャ!さすが北海道!

井口さん :ですよね。そして、これも北海道らしいところなのですが、本当にどっさりです(笑)。畑直送で、これ以上の贅沢はありませんよね。玄関に鹿のもも肉がどーんと置いてあったこともありますよ。こちらは山直送ですね。びっくりしましたけど、おいしくいただきました!

子どもたちの30年後を、良くする思いが原動力

このスタイルは、井口さんの経営する「いただきますカンパニー」のユニフォーム

― これからの目標はなんでしょう。

井口さん :「畑ガイド」という職業を、きちんと確立させたいです。私は試行錯誤の末に、今の仕事にたどり着きました。最初から観光用に畑や牧場を所有するのではなくて、実際の農家さんのところに案内して、体験してもらう。私もかつて少しかじりましたが、自然ガイドという仕事が、現在は一般的になってきています。畑ガイドもそのように育てたいんです。

― なるほど。新しい職業として定着させたいのですね。

井口さん :そうなんです。この仕事を通して、農や食の大切さ、ありがたさを伝えていきたいからです。少しでも伝わったと実感できると、ものすごく嬉しい。だからこの仕事が大好きです。「田舎はいいけど仕事がない」という声に、少しでも応えていくためにも、畑ガイドを増やして、農業の6次産業の一角を担いたいです。外から来たからこそ、見えることもありますからね。

季節に応じて開催するイベント。これは菜の花カフェ。

― 本当にやりたいことを見つけて、まい進する。素敵ですね。

井口さん :いえいえ、まだまだこれからですよ。不安がないわけではありません。でも、未来に良い形で貢献できていると実感できるのは、本当に幸せなことだと思うんです。私にも子どもがいますが、この子たちの30年後を少しでも良くするために働いているのだと信じられることが、何よりの力になっています。

井口芙美子さんの生きるヒント『「いい塩梅」をみつける』私はかつて、子どものアトピーをきっかけに、無農薬や手づくりにとことんこだわる生活をしていました。そのとき、子どもが食べたがらないと怒っていたんですね。「なんで食べないの!」って。でも気づいたんです。どんなにいいものも、お母さんが目を三角にして無理に食べさせていたら、子どもはハッピーになれない。身体のためにもならないんじゃないかって。ちょっとくらいいい加減でも、今はこれでいいと納得できることの大切さを学びました。何ごとも、人それぞれ、そのときどきの、いい塩梅を見つけることが、大事なのではないでしょうか。