わたしのふるさと What is FURUSATO for you? わたしのふるさと What is FURUSATO for you?

誰しも生まれた地、育った地があります。ずっとその地で過ごす人、進学や就職を機に離れる人、転々とする人。
縁ある土地とのつき合い方は人それぞれです。「第二のふるさと」「心のふるさと」という言葉があるように、「ふるさと」は、生まれ育った地とも限らず、もしかすると、物理的な土地とすら結びつかない、その人にとって大切ななにかがある場所とも定義できるかもしれません。
あなたにとって「ふるさと」は、どんなものでしょう。

7綾部みよさん

東京都生まれ→千葉県市川市・茨城県牛久市育ち→
東京都→牛久市在住

東京都生まれ→千葉県市川市・茨城県牛久市育ち→東京都→牛久市在住

綾部みよ(あやべ・みよ)

NPO法人ちゃんみよTV理事長・ご当地キャスター

1986年東京都生まれ。3歳まで千葉県市川市で育ち、その後茨城牛久市に。進学で上京したが卒業前に実家に戻り、就職は東京の企業に。東日本大震災をきっかけに地元に目が向き、都内に暮らし働きながら、牛久での活動に取り組むようになる。頑張りすぎて体調を崩したのを機にUターン。巡り巡ってインターネットテレビ局『ちゃんみよTV』を始めるに至る。ラジオ出演、イベント企画や、ミニコミ誌の発行、物販と、精力的に活動中。趣味は加圧トレーニング。

ちゃんみよTV公式サイト

ダサいと思っていた牛久から、憧れの都心でOLに

3歳までいた千葉の記憶はほとんどなくて、根っからの牛久っ子です!いまは大好きな牛久ですが、学生のころは嫌でした。ダサいと思ってました。都心まで電車で1時間余りの通える近さだし、テレビも東京と同じく全部入るし、だから余計に比べてしまっていたのでしょうね。劣等感でした。東京の大学に進学後しばらくは自宅から通いましたが、私の使う常磐線は、都会の電車とは雰囲気も違っていて、それすらも嫌でした。だから、初めての東京ひとり暮らしはテンションが上がったんです!通学が楽になり、バイトの時給も牛久よりちょっと高くなり、生活レベルが上がった気がしてました(笑)。

就職前にいったん牛久に戻って、新卒で入社した大手通信会社には実家から通ってました。仕事は営業アシスタント。憧れの都心、汐留のピカピカのビルで、「汐留OL」だとその気になってました(笑)。牛久を5時50分に出る始発の次の常磐線に乗って会社に7時半に着き、みんなが出社する前にデスクを拭いて回ったりして、「新入社員らしく頑張る」自分に浸ってました。あと、出社して来るたくさんの社員の人たちに挨拶することに喜びを感じてました。飲み会や会社のイベントも燃えていましたが、肝心の仕事はそれほど楽しくないというか、ペーペーの私にできることは知れていて、それほどやりがいを感じることはなかったです。

震災を機に地元を見直すも、張り切りすぎて不調に・・・

実物は想像以上に巨大!牛久名物の大仏と共に。この日綾部さんが着ていたパーカーはご当地ブランドのもので、胸にある“GOJAPPE”(ごじゃっぺ)は、茨城弁で「いい加減」「おバカ」という意味だそう。

地元を見直す転機になったのは東日本大震災でした。帰宅難民になり、やっと帰った牛久の実家には、水も電気もきてませんでした。それでもあたたかく迎えてくれる家族に、「ただいま」と言えることを、なんてありがたいんだろうと思ったんです。不便な中、近所の人も、「うちのお風呂使って」などとやさしく声をかけてくれました。考えてみたら地域の人に支えてもらったのは初めてじゃなかったのに、きちんと顧みたことがなかったんです。会社の人に対するようには、丁寧に接していなかった。そんな自分はなんだったんだと反省して、目が覚めた気持ちになりました。

震災以来、地元に意識が向くようになった一方で、勤務先での仕事への使命感も高まりました。インフラの一角を担う事業を行っている会社だったからです。再び東京でひとり暮らしを始め、会社員としても腰を据えて頑張ろうとしました。東京では、バリバリ働くかっこいいワーキングウーマンでいたかったんですよね。けれど私は、元来みんなでワイワイやるのが好きな、イベント好きでもありました。東京でも牛久でもイベントに参加したり、企画したりしながら続けるOL生活は、なにより時間的に無理があったんです。じきに、張り切りすぎてパンクして、不調をきたしてしまいました。OL時代の終盤、お昼休みにはよく、ひとりでテレビ局のあるところまで遠征してました。一番気に入っていたのはフジテレビのあるお台場。会社を飛び出してどこかに行きたかっただけなんですけど、なんかいっぱいいっぱいだったんですかね。会社の上司に退職の意思を告げると、「いまの気持ちだけで決めてしまわないほうがいい」と言ってくれて、いったん休職させてもらいました。

東京はアウェーだった。牛久は自分らしくなれるホーム

スタッフが充実したいま、放送はスタッフに任せ、綾部さんは企画やディレクションに回ることが多くなったという。

参っていたとき、父が一緒に筑波山に登ろうと誘ってくれたんです。初めての父との登山では、父の背中が大きく見えました。そして、そのときの時間が、私に前を向かせてくれました。父との会話を手がかかりに、地域でいくつかの活動を経験したことが、いまにつながっています。

東京というアウェーの地では他人によく見られたかった私ですが、地元に帰ってきたら、弱いところを見せたり、人に頼ったりが、かっこつけずに自然とできるようになりました。弱い自分を認めてさらけ出すほうが、お互いのためだとわかりました。素直じゃないといいことないなと。“ふるさと”って、安心して自分らしくなれる場所なんじゃないかと思うんです。ここがホームだと思える安心感があるからやれることも、たくさんあるんじゃないかなって。

自分の地元は当たり前にここにあると思ってたけど、当たり前なんかじゃないんですよね。いまでは、この地域がこうしてあってくれることのすべてをありがたいと感じるようになりました。地域のことは、知れば知るほど好きになって、好きになればなるほどなにかしたいと思うようになります。もちろん、知るほどに、悪いところだってたくさんあるとわかりますよ。だからといって嫌いになることはないんです。そう気づけた自分がうれしい。だから、私よりも若い、特に以前の私のように地元に劣等感を抱いている人たちにも気づいてほしい。そうすれば、牛久の魅力はさらにさらに増してゆくはずです。

“生きてる感”は何倍にも。次は自分が若い子の後押しをしたい

前を向くきっかけをつくってくれたというお父様との登山。お父様に誘われて、筑波山に伝わるガマ口上(「さぁさぁお立ち会い!」で始まるガマの油売りの売り文句で、伝統を継承するための活動もある)を始めてみようと決め、これが本来の自分を取り戻す第一歩になった。

インターネットテレビ局の『ちゃんみよTV』を立ち上げたのは、地元を好きだと思えない地元の若い子たちに、「牛久も悪くないよ」と伝えたかったから。たまたま出会った人が千葉でコミュニティFMをやっていたことに刺激を受けて始めました。やってみたら楽しかった。最初のころの放送はいま見ると恥ずかしいけど、続けていけそうには思ったんです。休職中だった東京の会社を辞めて、牛久でやってゆくとはっきり決めることができました。結局、私の居場所は東京のビルの中ではなかったんです。収入だけを考えると絶対選ばないいまの仕事ですが(笑)、“生きてる感”は何倍にもなりましたね。

2018年に、地元・牛久の人と結婚しました。若者だった私も33歳になり、そろそろ地域の中堅どころになります。ひとりで始めたちゃんみよTVも、15歳から72歳まで、30人のスタッフで運営するようになりました。放送のほか、イベントを運営したり、かわら版をつくったり、いろいろしています。機会さえあれば地域の活動に関わりたいと思っている人は、実はいっぱいいたんだなぁって感じています。これからは、私なりの経験を活かして、若い子の後押しをしてゆきたいと思っています。私が先輩方にしてもらったように、自分もできたらうれしいなぁって。地元での活動では、地域のみんなと一緒に過ごす時間の長さが圧倒的。どこそこに行けば誰それにいつでも会えるという環境で、顔を合わせて共に地域のことを考えながら、人と人との思い出が増えてくって、代えがたいです。

ふるさとのお気に入り

牛久

by綾部みよさん

  • 牛久駅の空気感

    常磐線を降りたときの駅の空気感。ふだんはあんまり気づかないけど、電車で移動して帰って来るとほっとするんです。車だと、利根川を越えて茨城に入ったときでしょうか。「ただいまーーー!」って安堵感、たまりません!

  • 私の家族

    家族仲良しで、実家が好きです。家族は偉大です。思い返せば私のすべてを受け入れてくれていた母、すごく大事に育ててもらいました。愛にあふれた人だと思います。

編集後記

伺った『ちゃんみよTV』のスタジオ兼オフィスは、そこで働く人たちの楽しさが伝わってくるような場所でした。OLだった20代の綾部さんがひとりで始めた活動。その『ちゃんみよTV』が、いまでは30人になったというスタッフの方々の、自ら地元を発見し、思いを深めるきっかけをつくったのだと思うと、本当に素敵です。個性的な印象の綾部さんからは、端々にやさしさと気遣いが感じられます。子どもからお年寄りまでみんなに好かれる方だろうと、そしてきっと、「素直じゃないといいことない」の言葉通りに生きている方だと思いました。

(取材・文:小林奈穂子)


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