• ご加入の皆さま
  • マイページ
  • 共済金のご請求

今月の「生きるヒント」

シリーズ 人生のチャレンジ 移住を選んだ人たち 第11回《前編》林業会社社員 大塚潤子さん

憧れ続けた就職先は林業ベンチャー。東大卒の彼女が選んだ、しあわせな職業。

後編はこちら

プロフィール
おおつか・じゅんこ/茨城県出身。東京大学農学部(森林環境科学専修)卒業。外資系イベント会社、林野庁外郭団体の勤務を経て、東京都檜原村の林業ベンチャー、東京チェンソーズ入社。自らも都心から拠点を移す。十代の頃より関心が高かった環境問題に、国内の林業を通してアプローチし、この分野でのビジネスを成り立たせることで貢献したいと奮闘中。東大卒の“林業女子”として注目されている。東京チェンソーズ公式サイト http://www.tokyo-chainsaws.jp/
大塚潤子さんのじぶん年表

東京チェンソーズを、一途に思い続ける日々

― 東京チェンソーズには、入社が叶うまで2、3年もアタックし続けたのですね。

大塚さん :そうなんです。環境問題に関心があって、砂漠化をはじめとした森林に関わることを学んでいた学生時代、仕事としてなにを選べば、やりがいと経済を両立できるか見えなくて迷っていました。環境省を志望しようかとも考えたのですが、結局、3年間はふつうのサラリーマンの肌感覚を学ぼうと、修行のつもりで外資系のイベント会社に就職しました。3年経って転職を考え始めた頃、東京チェンソーズの著作を読んで、ものすごい感銘を受けたんです。もう、仲間になりたくてなりたくて。だけど、その頃は採用もしていなかったですし、私自身に、それでも突破できるようなアピールポイントなんかなくて。

大学の卒業旅行で。大さん曰く「若い・・・」。

― だけど、あきらめはしなかったんですね。

大塚さん :あきらめませんでした!それくらい、この会社に入りたかったんです。だから、東京チェンソーズや代表の青木がらみのイベントとか、参加できる現場作業とか、いつもチェックして顔を出していました。年賀状も暑中お見舞いも出しました。追っかけというか、ストーカーのごとく…(笑)。

― そこまで思い入れた理由はなんだったのでしょう。

大塚さん :環境問題には十代の頃から興味があって、それに関わる学部を選んで学びもしたのですが、地球環境問題って途方もないじゃないですか。問題が大きすぎて、そこに個人として有効に関与できる解決策を見いだすのが難しいし、周囲と共有しようとするほどに、意識のギャップを埋めることのたいへんさを思い知らされます。第一自分も、ずっとそんな話ばかりしていると疲れてしまう。長く悶々とした気持ちを抱えたままでした。そんなとき、東京チェンソーズの、世界の森を、日本の森を、とは言わずに、「東京の森を、自分の地域を良くしようという」考えに基づき、実効性のあるビジネスを展開しようとする姿に触れ、ひとつの答えを得たように思ったんです。

東大卒の肩書きが活かせなくても、惜しくなかった

― なるほど。それで一途に(笑)。でも大塚さんは東大卒ですよね。周囲に、「なんでまた?」と言われることはありませんでしたか?

大塚さん :もったいない、っていうことですよね?幸いにして両親は、「好きなことをしなさい」と応援してくれました。これは大きいですよね。私には、東京チェンソーズが第一志望で、どんな会社より一番の会社でした。それに共感してくれる人もいれば、理解ができない、という人も、もちろんいます。だけどとにかく、自分にとっては超一流企業だったんです。

― とても素敵だと思います。だけど、どうしてもそこにつっこみたくなってすみません。日本の最高学府といわれる大学を出て、その学歴がものをいう世界を捨てて、山の仕事を一からおぼえるのには、勇気がいりませんでしたか。

大塚さん :滑り込みで合格したからでしょうか、在学中から、「東大生っぽくない」と言われることが多くて、自分でも、どこか似合っていないような気がしていました。それに、学生時代、研究室で現場が大事だということを繰り返し言われていましたし、社会に出てからは、前職で身を持って、それを実感しもしました。特段アウトドア派でもない私が、山で体力勝負の仕事についてゆけるかの不安はありましたけれど、現場を知りたい、山の仕事を身につけたい、という気持ちの方がずっと勝りました。

山の仕事はかっこいい!一人前になる日を夢見て奮闘中

仕事の現場は山。仲間とともに汗を流す。

― 念願叶って現場の仕事をしてみるようになって、実際にはいかがでしたか。

大塚さん :重い道具を持って山に入るのですが、先輩に、歩くスピードは速いと言われたんです。最初はそれだけでも認められたみたいで嬉しかったです。私は「褒められると伸びる子」ですね(笑)。あと、根性はあるほうだと思います。大学時代はボクシング部でしたし。

― ボクシング部!では、腕力にも自信が?

大塚さん :それがへなちょこ部員でしたから…。この会社に入って、一番成長したのは二の腕です。とはいえ、腕力も体力も男性には到底かなわないので、いつかそこを技術と丁寧さで補えるような仕事ができるようになりたいです。10年はかかると思いますけれど。

檜原村の森をバックに、現在の同僚のおふたりと。

― 10年間頑張る覚悟なんですね。

大塚さん :はい!山の仕事は本当にかっこいいと思っていますから、先輩の仕事にはいつもほれぼれします。会社にとって、経験のない女性の私を採用するのは賭けだったはず。
報いるためにも、いつか私がいて良かったと思ってもらえるように頑張りたいです。まだまだ失敗ばかりですけれど、嬉しいこともいっぱいあります。

― 最近嬉しかったことは?

大塚さん :いつも仕事を教えてくれる師匠に、山の下草を刈る刈払(かりはらい)機の使い方がうまくなったと褒められたことです。

― 褒められると伸びる子、でしたもんね(笑)

大塚さん :そうです(笑)!ですが振り返ると、もし私が新卒でここに飛び込んでいたら、未熟すぎてやっていけなかったと思います。一般企業での修行も、やはり必要だったんですね。