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- おおしま・まさゆき/栃木県出身。 木工房ようび 代表兼職人。建築学部を卒業するも、平面図から立体空間が感じられないことに問題意識をおぼえ、木工を学ぶ塾に入塾。2年の無給修業時代を経て、飛騨高山の家具メーカーに就職し、家具の製作・設計など幅広く携わる。ひょんなことから出向いた、岡山県にある人口1600人の山あいの村、西粟倉との運命の出会いによって同地に移住。地元の木材を使ったオーダーメイドの家具づくりに心血を注いでいる。福武文化奨励賞など受賞歴多数。
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― しばらく遠距離恋愛だった彼女、今の奥様はどのタイミングで西粟倉にいらしたのですか。
大島さん :最初に移ってくるときに、一緒に来てほしくて結婚を申し込んだんですよ。でも、彼女は彼女でやりたいことがあったんですよね。ちょっと待ってくれと言われました。だから僕は、いろんな意味で崖っぷちだったんです(笑)。幸い2年後に来てくれて、どれだけ救われたかわかりません!
― そこまで思い入れて移り住んだ西粟倉村はいかがですか。
大島さん :会社に所属して家具をつくっていた頃の3倍大変ですが、4倍笑っています。自分も社員も本当によく働いて、そして、よく食べています!この村は95%が森林。だからなんといっても水がおいしい。水がおいしいと、おいしいお米が育つでしょ。うちの会社にとって食事はものすごく重要なんです。毎日朝晩、持ち回りでつくってみんなで食べるのですが、お米は年間で400kg消費しています!
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― そうですか!皆さんで召し上がるごはん、よほどおいしいのでしょうね。
大島さん :はい。「ようびめし」って言ってるんです。旨くて有名なんですよ。持ち回りでつくるから、料理が上手になります。最年少の社員は、最近まで女子高生だったのですが、「料理が上手くなると家具づくりも上手くなる」と教えています(笑)。全国から集まってきているので、社員がひとり増えるごとに、出てくる郷土料理が増えていく楽しみもあります。人と食べるのって、こんなに楽しいんだと知ったのも、ここに来てからですね。
― うんとご苦労されたけれど、ここでお子さんが生まれて、いい仲間もできて、今は充実しているのですね。
大島さん :充実してますよ。お陰さまで、僕らの家具を買ってくれるお客さまも、注目される機会も増えました。だけど満足しているわけではありません。まだまだやりたいことがいっぱいあります。第一僕は、スローライフを楽しむために田舎に来たのではありません。ここで挑戦するために来たんですもん。
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― 大島さんの、次なる挑戦はなんでしょう。
大島さん :どうやったら、世界に挑戦できるか考えてます。ひのきは日本らしい素材だから、これで打って出たいんです。面白いじゃないですか、この、ど田舎から世界の最先端のものづくりを発信できたら。田舎=資源のおひざ元にいるわけなので、有利なんじゃないかと思うわけです。
― 確かにそうですね。
大島さん :社員みんなで、家具の本場デンマークに、研修旅行にも行ったんですよ。テキスタイルの視察でフィンランドにも寄りました。その経験をもとに、オリジナルのテキスタイルの開発にも挑戦しています。
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― それは夢が広がりますね。
大島さん :でも、足元でやらなくてはいけないこともたくさんある。だからすごく忙しい。「明るい引きこもり」で、始終工房にいます。うちの家具はすべてオーダーメイド。一人ひとりの一生ものをつくるため、絶対に妥協はしません。社員には、僕らは家具をつくる仕事をしているのではなく、対価をもらう仕事をしているんだと言っています。総合的にです。だから、ホスピタリティのある技術者にならなくてはいけない。この両方が揃うって、実はあんまりないんです。
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― そこまでできる熱意の原動力はなんなのでしょう。
大島さん :ここに来てやっていることの原点はやはり、あのおじいちゃんの植えたひのきの森ですね。それを大切に受け継いできた人に会って感動した。「この人を笑顔にしたい、家具を手にしたお客さんも笑顔にしたい」その一念です。
― 林業が衰退し、かつて植林された木の利用がなくなったことで、荒廃した人工林が日本中にありますよね。里山が失われ、人と森との距離も遠くなりました。
大島さん :この辺の、すこやかな森では、ヒメボタルを見ることができます。初夏に舞うのですが、すごく幻想的な風景です。僕らがここの木を使ったことで、そんな森が増えていったら嬉しいです。それから、うちの家具を注文くださる人たちの多くが、都会から工房に足を運んでくれるので、「家具を買ったら田舎がついてきた」なんて言って、この山あいの村に愛着を持ってくれたら最高ですね。
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