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2009年7月号 絵本をめぐる世界第6回 キャラクターが生まれる時 絵本作家 なかやみわさん

そらまめくん、くれよんのくろくん、こぐまのくうぴい、おばけのぽぽ、ばすくん──。なかやみわさんが生み出すキャラクターは、数多くの子どもたちの心をとらえ続けています。魅力的なキャラクターはどのようにして生まれるのでしょうか? また、物語の世界観を紡ぎ出す方法とはどのようなものなのでしょうか? デザイナーを経て絵本作家になられたなかやさんの歩みをうかがいながら、絵本創作の秘密に迫ります。

ひとつのキャラクターをじっくりと育てたい

絵本作家になる前は、どのような仕事をしていたのですか?

なかや  サンリオでデザイナーとして働いていました。子どもの頃からキャラクターグッズが好きで、キャラクター商品をつくる会社に就職したいとずっと考えていたんです。

 しかし、いざキャラクター制作の現場に身を置いてみると、実はひとつひとつのキャラクターはとても短命だということを知りました。ビジネスなので当然なのですが、利益を生み出さないキャラクターはすぐに淘汰されてしまうわけです。先輩のデザイナーは、みなさんプロとしてそういうビジネスのあり方に対応していました。でも、どうしても私には違和感がありました。ひとつのキャラクターに愛着をもって、長い期間をかけてじっくりと育てていきたい──。いつもそう感じていました。

絵本を描き始めたきっかけは何でしたか?

なかや  もともと、社内コンペに提出するキャラクターを考案する際に、海外の絵本を参考にしていたんです。『ぞうのババール』(評論社)や『おさるのジョージ』(岩波書店)といった海外絵本のロングセラーは、キャラクターがしっかりつくられていて、独自の世界観をもっています。時代が経っても古くならないクオリティの高さがあるんです。そういう絵本からヒントを得るために、洋書の絵本コーナーに頻繁に足を運んでいました。

  一方、日本の絵本には昔話が多いというイメージがありました。キャラクターがあまりつくりこまれていなくて、少しかしこまっていて、教育的な見地で描かれている。そんな印象があったので、日本の絵本にはあまり接していなかったんです。でも、ある日たまたま日本の絵本のコーナーに立ち寄ってみたところ、私が小さい頃に読んでいた絵本が新刊のごとく平積みされているのを知って、たいへん驚きました。ずっと昔に出版された本が今でも売れ続けていて、現代の子どもたちの心をとらえているわけです。「日本の絵本もすごい」と思うと同時に、「仕事としてこの世界に関わりたい」と考えるようになりました。

  でも、どうやって絵本の仕事に関わればいいのかわかりませんでした。そこで、絵本の情報誌に載っていた高田馬場の絵本教室に通うことにしたんです。会社勤めをしながら、2週間に1度、1年間通ったのですが、とても面白く、ためになる体験でした。絵本作家の川端誠先生が講師をされていて、絵本のラフデザインや手づくり絵本の制作法などを教えていただきました。その過程で、絵本作家としてデビューするには、漫画家のように自作を出版社に持ち込むのが近道ということも知りました。それで、思い切って会社を辞めて、絵本づくりに専念することにしたわけです。

最初の持ち込み作品が採用される

最初に手がけた作品は何でしたか?

なかや  『そらまめくん』です。もともとは社内コンペの時に考えたキャラクターで、コンペでは採用されなかったのですが、ずっと心の中で温めていました。それを具体的なストーリーにして、福音館書店に持ち込みました。なぜ福音館だったかというと、そのくらいしか絵本の出版社を知らなかったからです(笑)。幸い、お話が面白いと言われて、「こどものとも」という雑誌に採用してもらえることになりました。でもはじめは、絵も相当変でしたし、文章もこなれていませんでした。掲載されるまで何度も描き直したことを覚えています。

『そらまめくん』は結果として大ヒットしましたね。

なかや  おかげさまで、現在ではミリオンセラーになっています。最初に持ち込んだ作品が採用されたのも、それが読者に評価されたのもたいへん幸運なことでした。会社を辞めてからデビューするまでにそれほど時間がかからなかったのも、とてもありがたいことだと思っています。

これまで様々なキャラクターを生み出されていますが、魅力的なキャラクターや世界観をつくり出す方法についてお聞かせください。

なかや  自分の身の回りのことや、子どもの頃の経験をもとにしてつくることが多いですね。『そらまめくん』の場合、両親が家庭菜園をやっていて、豆の栽培などをしていたことがアイデアの原点になっています。絵本を仕事にしていこうと思い始めた頃、たまたま空豆のサヤ剥きを手伝ったのですが、中がすごくふわふわしていることにびっくりしました。これをベッドにするという発想と、以前から温めていた空豆のキャラクターのイメージを合わせて『そらまめくん』が生まれたわけです。

 その次の『くれよんのくろくん』は、『そらまめくん』で使った画材とは別のものを使いたいと考えている過程で生まれました。たまたま机の引き出しから、しばらく使っていなかったクレヨンのセットを見つけたのですが、クレヨンの減り具合が色によってかなり違うわけです。よく使う色は短くなっているのに、使わない色はほとんど新品同様で、「使われないクレヨンってかわいそう」と思いました。じゃあ、使われないクレヨンが使われるようにするにはどうすればいいだろう。そう考えて、いろいろなクレヨンで描いた絵を最後に黒のクレヨンで塗りつぶして、スクラッチで花火を再現するという方法を思いつきました。これなら、黒のクレヨンをたくさん使うことになります。実は、小学生の頃に、そういう作品をつくって表彰されたことがあるんです。そんな幼少時の経験とも結びついて、使われずに寂しい思いをしているクレヨンが、最後にパッと花を咲かせるというイメージが生まれました。

創作に当たって、最も大切にしていることは何ですか?

なかや  わかりやすさですね。「こう表現したい」という思いよりも、「こうしたら読者に喜んでもらえるかな」と想像することのほうが大切だと考えています。私の作品の読者はやはり小さなお子さんで、子どもに喜んでもらうためには、世界観がわかりやすくなければなりません。会社員時代は、グッズを買った人に喜んでもらえるキャラクターづくりを毎日のようにしていたわけですが、その頃の経験が現在に生きているように思います。

子どもと接して自分の幼少時代を思い出す

なかやさんは、6歳のお子さんのお母さんでもあるわけですが、子育ては創作にどのような影響を与えていますか?

なかや  子どもが産まれる前は、「母親になると、画風や物語の世界観が変わるよ」といろいろな人から言われました。内心期待もしていたのですが、実際に母親になってみると、何も変わりませんでしたね(笑)。ただ、子どもと接することで、自分の幼少時代を思い出して、それが創作に反映されるということはあるように思います。

  それから、絵本の趣味が少し変わりました。昔は、しつけのための絵本は好きではなかったのですが、母親の目で見てみると、そういう絵本はとても助かるんです。歯磨きの絵本を読んで子どもが歯磨きをするようになってくれたら、お母さんとしてはとても嬉しいですよね。子どもを産んでから、しつけの絵本を自分でも描いてみようという気持ちになりました。

お子さんは、ご自身の作品の読者対象でもあるわけですよね。お子さんのために作品を描くようなことはありますか?

なかや  うちの子は、私の作品を読まないんですよ。絵本を描くことが母親の仕事だということを知っていますから、「お母さんの絵本のせいで寂しい思いをしている」という感覚があるのだと思います。私が仕事をしている間は、遊んでもらえないわけですからね。はじめのうちは出来上がった作品を息子に見せたりもしていたのですが、あまり興味を示してくれないので、見せなくなってしまいました。もちろんほかの本は好きで、電車の本とか、長新太さんの作品などを愛読しています。

読者として愛読してきた絵本は何ですか?

なかや  子どもの頃好きだったのは、加古里子さんの『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)でした。これはうちの子も大好きですね。大人になってから影響を受けたのは、『かえるくんとがまくん』(文化出版局)シリーズを描いているアーノルド・ローベルの作品です。キャラクターの描き方がとても自然で、それほど凝ったお話ではないのに心に残るという、たいへん上手な描き手だと思います。三木卓さんの翻訳も素晴らしくて、とても参考にさせてもらっています。

絵本の最大の魅力は、めくって楽しめること

絵本を描いてきて最もたいへんだったことと、最も楽しかったことをお聞かせください。

なかや  一番たいへんだったのは、とにかく続けなければならないということでした。今は作品数も増え、代表作もできたので、ようやく「作家」と呼ばれても恥ずかしくなくなりましたが、ここに来るまでは、次々に新しいアイデアを出して新しい作品を描き続けなければなりませんでした。毎回、「もうこれでアイデアが尽きるかもしれない」と怯えながらやってきました。

 楽しいのは、何といっても、サイン会などで読者の皆さんと会えることです。小さなお子さんが私の作品を大好きと言ってくれたり、自分で描いたそらまめくんの絵をもってきてくれたりすると、「絵本を描いていてよかったなあ」と本当に思います。

なかやさんにとって、絵本の魅力とは何ですか?

なかや  「めくって楽しむ」ことができる点ですね。自分のペースでページをめくっていくこともできるし、立ち止まることもできるし、後戻りすることもできる。テレビのように受け身で見るのではなく、自分の感覚に合わせて、好きなように楽しめる。それが絵本の一番の魅力だと思います。

最後に、これからの夢や目標をお聞かせください。

なかや  これまではシリーズものが多かったのですが、今後は少し違ったテイストの作品もつくっていきたいと思っています。この5、6年は子育てと仕事を両立させることで精一杯だったので、デビュー作を描いた頃のように、ひとつの作品にじっくり時間をかけて、作風的にも、技術的にも新しいものを生み出していきたいですね。

なかやみわ


1971年埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒業。サンリオのデザイナーを経て、『そらまめくんのベッド』で絵本作家としてデビューする。以後、『くれよんのくろくん』シリーズ、『こぐまのくうぴい』シリーズ、『おばけのぽぽ』シリーズなど、人気作品を次々に発表している。2010年度から女子美術大学で講師を務める。6歳の男児の母。

なかやみわ公式サイト

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1)『そらまめくんとながいながいまめ』

2)『くれよんのくろくん』

3)『こぐまのくうぴい すきすきはみがき』

1)『そらまめくんと
ながいながいまめ』

2)『くれよんのくろくん』

3)『こぐまのくうぴい
すきすきはみがき』

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