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今月の「生きるヒント」
一生のうち、住まう家は限られています。長く過ごすところだから、できるだけ居心地よく、自分らしく保ちたい。常に最高のモノに囲まれて生活したり、時間をかけてお手入れしたりは無理でも、それぞれのペースで、日々の豊かさを感じられる暮らしがしたい。こころも充実、エコで豊かな「生きるヒント」をお届けします。
改めて意識することはありませんが、私たちは布を多用しながら生活しています。実用的でありながら、好みを大きく表現できる布。衣服だけではなくお部屋の中の布にも、季節や気分による変化を取り入れることで、暮らしはぐっと生き生きしてきます。また布には、家具や調度品を買い替えなくても、お部屋の雰囲気をがらりと変える力があります。今回は、インテリアの主役にもなるファブリックと、最も取り入れやすい手ぬぐいのある暮らしのご提案です。
cocca
齋藤周子さん
東京代官山のファブリックブランドcoccaのスタッフの齋藤さん。美大でテキスタイルを学び、捺染(なっせん:布生地にプリントを施すこと)工場で染料を調色する仕事を経て、オリジナル製品を企画・販売する現在の会社に。布という素材に飽きることはなく、つくり手の職人さんとのかかわりも楽しいそうです。
cocca公式サイトこの日身につけていらした個性的な柄のワンピースも、自社のオリジナル。齋藤さんは布の魅力についてこう語ります。「衣食住のすべてにかかわっていて、もともと平らで真っ直ぐなのに、なににするかによって、違う機能、印象を持つ面白さがあります」。おっしゃるように、衣食住のすべてに欠かせない素材である布。季節ごとにカーテンを替えたり、クッションカバーのような小物に遊びのある柄を取り入れて、お部屋に華やかさをプラスしてみたり、料理に応じて異なるテーブルクロスやランチョンマットを見つくろうだけでも、暮らしがレベルアップしそうです。それだけでなく、椅子やソファを張り替えながら長く大事に使うヨーロッパの習慣を見習うのも素敵ですね。
写真:同じくスタッフで、縫製も担当している羽鳥さんと。オリジナルの柄のワンピースがお似合いです。
coccaには、画家さんとコラボしてつくられた布も。齋藤さんが「壁紙を取り替えたり、絵を飾る感覚で」とおっしゃるように、まさに大きなアート。「シンプルが一番」という考え方ももちろんありますが、思い切ったインパクトを与える柄を選ぶのも、気分転換にいいかも!と思わされます。ちなみに、こちらで扱われる布はだいたい1mあたり3,000~6,000円。窓の数や大きさなどによりますけれど、カーテン用には多くの人が2mか4mで購入されるそうです。追加でお支払いすれば、はじを処理してカーテンクリップをつけられるようにしてくれるほか、クッションカバーに仕立てるサービスもあり、オーダーのハードルは思ったほどには高くなさそうです。
写真:左手前のものは画家さんとのコラボ。カーテンにすると個性的なお部屋になりそう。
昭和の復刻柄シリーズというのも見せてもらいました。なつかしい匂いのする柄がある一方、言われないと昔のものとはわからない、かえって新鮮に見える柄、両方ありました。人によってはどちらもなつかしいのでしょうし、どちらも新しく感じられるのかもしれません。好まれる素材やデザインは人によって違いますが、時代時代でも変わるので、そのときの流行を映していて面白いですね。子どものころの記憶に残る柄といっしょに暮らすもの、ちょっと素敵かもしれません。
写真:昭和の時代の復刻柄。カラフルで胸が躍ります。
インテリアに用いる布のトラブルで比較的多いのは、洗濯時の縮みだそうです。繊維にはいろいろなものがあるので一概には言えませんが、多くの場合、乾燥機の使用は避けたほうが無難のようです。
かまわぬ
秋葉美保さん
店名に「特別に何のお構いもできませんが、気軽にお立ち寄りください」の意味を込めた「かまわぬ」は、250種類もの柄をそろえる手ぬぐい専門店です。入社約20年、企画担当の秋葉さんは、手ぬぐいのことなら「ほぼなんでも」。最近は、若い女性を中心に、自分用に買い求める方がうんと増えたそうです。
かまわぬ公式サイト手ぬぐいは、「注染(ちゅうせん)」という日本独自の技法で染められます。防染糊(ぼうせんのり)を施して、模様の部分だけが染まるように染料を注ぐもので、明治時代に確立された技法だそうです。使用する型紙は、柿渋を塗った和紙に模様が手彫りされます。日本各地で綿の栽培が盛んになった江戸時代、庶民の間でも普及した手ぬぐいですが、注染が染めの世界に革命を起こしてからは、さまざまな色柄が出回るようになりました。現在でも、伝統的な手ぬぐいや、「本染め」の浴衣では、この技法が守られています。「湿度などにも左右される微妙な色出しは、まさに職人の腕がものをいいます」と秋葉さん。
写真:夏に涼しげな「青紅葉(あおもみじ)」の柄。ぼかし染めで濃淡が表現されている。
手ぬぐいのおもしろさのひとつに、図柄の多様さがあります。多くがそれぞれに意味の由来を持つ古典柄は、「へぇー」が満載。季節の草花など自然物をモチーフにした、現代でいう「デザイン」のほか、縁起かつぎや、厄よけなど、願いを込めたものが非常に多いのが特徴です。茄子は「物事を成す(なす)」、ふぐは「ふく→福」、狸は「他抜(他を抜く)」など、昔の人の発想に感心します。店名となっている“かまわぬ”も、江戸時代の歌舞伎役者、七代目市川団十郎が好んで舞台衣装にしたことで流行した、鎌と輪の絵に平仮名の「ぬ」を合わせた「判じ絵」に由来しています。
写真:左から、①古典柄。江戸時代に男性用着物で流行した「弁慶縞」を縦横別の色で染め分けたもの(左)と、すくすく成長する麻にちなみ、赤ちゃんの産着に好まれた麻の葉のモチーフ(右)。②判じ絵を用いた「かまわぬ」。③現代柄のおいしそうな手ぬぐい。
そんな手ぬぐいは、なにより実際に使ってみるのが一番。1枚1,000円ほどから購入できて、キッチンを中心に幅広く活用できます。季節に応じて柄を選べば、それだけで豊かな気分。秋葉さんも「手ぬぐいは、愛用するほどに使い勝手の良さを実感できます。心おきなく使えるのがいいところなので、気安く使い倒してください。季節の柄をちょっとお部屋に掛けるだけで、暮らしのアクセントになるし、敷いて拭いて被せて飾って包んで、なんでも」とおっしゃいます。それから、ちょっとした贈物にも。「柄の種類が多いので、その方らしいものが、まず見つかりますよ」と秋葉さん。選ぶのも楽しいですね。
写真:お弁当箱、日本酒やワイン、小ぶりのペットボトルまで、手ぬぐい一枚でいろいろ包めます。お店で教わることもできるそうですよ。
最初は染料の色落ちがあるので、ほかのものとは分けて洗ってください。たっぷりのお水ですすぎながら手洗いするのが一番です。すぐに乾くのも、手ぬぐいの便利なところ!
タオルのない時代は、「拭く」目的にはすべて手ぬぐいが使われ、それだけでなく、下駄の鼻緒や赤ちゃんのおしめも手ぬぐい。汚れたり破れても、お掃除用のハタキになるまで使われました。そうやって活躍したのと変わらぬ製法の手ぬぐいが、現在も広く愛好されています。便利に使っていただくほか、額に入れるなどして、季節の柄を楽しむのもおすすめです。
暮らしは、気にかけるほどに充実しやすいのかもしれません。たくさん手をかけることができれば一番ですが、それで疲れてしまっても困ります。でも、例えばご紹介した手ぬぐい。一年を通して使いながら、盛夏には涼しげな色柄や花火の柄を、秋の足音が聞こえてきたら、お月見や秋の味覚の柄を、都度選んでみる。気にかけるだけでできることですが、キッチンに、リビングに、それだけで季節感が生まれて、日常のささやかな喜びになりそうです。
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布は、生活になじむ素材で、暮らしに彩りをもたらす存在です。同じ布でも、膨らみやドレーブを持たせると表情が変わるのも面白い。実用としてはもちろん、お花や絵を飾るような感覚で、もっと自由に楽しんでもらいたいです。使い込むうち新品のときとは違う風合いが生まれて、よりしっくりくるときもありますよ。そんなところもまた愛おしいです。