今月の「生きるヒント」

シリーズ 人生のチャレンジ 移住を選んだ人たち 第23回《後編》川村圭子さん

ユルくない田舎暮らし。そこにあるリアルと、そこで感じるリアルを大切に、やさしい波を送り続けたい

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プロフィール
かわむら・けいこ/大阪府出身。おとなしく空想好きな「自分の世界」の子どもだった。同級生とつかず離れずの少女時代を経て、芸術系の大学に進む。大学在学中に出会った夫と共に、京都の田舎で自給的な暮らしに挑戦。23歳で結婚。出産を機に、夫の出身地である高知県土佐町に移住して、手づくり焼菓子などの通販を始める。通販に続き自宅はなれの古民家で始めたカフェは、遠方からもお客さんの絶えない人気店に。同じ頃イラストの執筆も始めて大忙しの日々を送る。2014年に評判のカフェを閉め、作家ヒビノケイコとして次のステージに。初の著書「山カフェ日記」(Live design研究所)を出版。現在はブロガーとしても人気を博している。ヒビノケイコ公式ブログ

人気店に育てたカフェを閉めたのは

― 川村さんとお話ししていると、暮らしを通して考えたこと、感じたことがいっぱいあって、伝えたいこともいっぱい持っている方なんだとわかります。

川村さん:それはいつも中心にありました。ここで最初にやったのはお菓子をつくって販売することでしたけど、そのときも結局、同じことをめざしていました。

― 通販でお届けするのはお菓子なんだけど、それも発信の手段だったわけですね。

川村さん:そうなんです。昔からものをつくるのが好きで、おいしいものも好き。地元の素材を使ってなにかしたいなぁと考えたとき、学生時代に習ったこともある、お菓子づくりにたどり着きました。そのうち、大好きなこの場所もシェアしたいからと、自宅はなれにカフェもつくって。

― お菓子の通販の「ぽっちり堂」と、「ぽっちり堂」山カフェと、どちらも人気になりましたよね。

川村さん:嬉しいことに。嬉しいのですが、大変でした。夫はこの地域への移住を支援するNPOの仕事が忙しくなってきて、ぽっちり堂の運営は、私が中心になる必要がありました。やるからには、いいものをつくって、いいものを提供したい。ある程度あうんの呼吸でやれちゃう夫とではなく、スタッフの方々と価値観を共有しながらやろうと思うと、さらにエネルギーが要ります。伝えたい思いを伝える手段の延長線上にあったはずのカフェは、実際やってみたら、“労働”であり、“経営”でした。

ぽっちり堂のお菓子のパッケージもご自身で。店頭および通信販売は、カフェを閉めた現在も継続。

― それで、のちに、うまくいっていたカフェを閉じる決断をするのですね。

川村さん:はい。カフェもいい仕事だと思うのです。ただ、一生懸命にやるほどに、もともとの目的からはちょっとずつズレてきてしまっていました。私はやるべきことにすごく一生懸命になってしまうタイプで、一番大事なことを置いておいてでも、必死になってしまうんです。ずっと、執筆に時間を割きたくて、そっちの創作への思いが募るばかりだったのに、一方で、カフェでの“労働”と“経営”に心血注いでいました。

とことんやり切るタイプ。だから次に進みやすい

2011年頃。週末のカフェは遠方からのお客さんもあって忙しかった。

― そうだったんですか。一見ふんわりしていて、あまり必死でやる姿が浮かばないのですが(笑)、そんなに。でも、そんな川村さんだから、水道なしでもやれたのかもしれませんね。

川村さん:あはは。そうだと思います。いつしか優先順位がおかしなことになったり、自分が望んでもないことをしているとしても、気づかないほど集中してしまうんですよ。でもそれだけに、常にやり切った感はあるんです。やりたいと思ったら置いておかずにやってみるし、やり始めたら逃げたくなくてとことんやる。そんなふうなので、やめたあとも次に進みやすくはあります。納得してやめますからね。

― そうか、そこは大きいですよね。きっとカフェをやめるときも、周囲には「もったいない」と言われましたよね?でも、ご本人としてはやり切ったから、決めたらすぐに切り替えて前を向けた。

川村さん:その通りですね。誰かに任せるという選択肢もあって、そのほうが経済的には得策だったはずですが、自分が離れるなら閉めようと思いました。ビジネスだと割り切れなかったんです。だからきっぱりやめて、後悔もしませんでした。カフェからこの身が自由になったら、執筆活動にどんどんドライブがかかって、実際に今は、すごく充実しています。

作家として、社会にやさしいエネルギーの波を

― ヒビノケイコとしてのご活動は順調なんですね。ブログも、ほぼ毎日更新されています。だいたいが、四コマ漫画だったり、イラストと文章を組み合わせたブログですね。内容が深いですし、この頻度はすごいなと思います。

川村さん:ありがとうございます。自分の実感を元にしたことだけを綴るようにしています。情報を元に情報をつくることはしません。ですから、ふつうに感じたことばかりです。

― はい。その、ご自分が“ふつうに感じたこと”が、言葉として実によく整理されていて、分析も冷静ですよね。芯の強い人にしか書けないようなものだと思うのですが、読み手からすると、深いのに、どこか和まされもする。

初の著書「山カフェ日記」(Live design研究所)も、ブログが評判になった影響で好評だそう。

カフェにしていたはなれの二階を、現在は仕事場にしている。

川村さん:そうですか。触れたときに、その人の中にいいものが増えたらいいなぁと思っているので嬉しいです。センセーショナルなものは注目されやすいけれど、もっとやさしいエネルギーの波が感じられるような社会であればいいと私は思うので、少しでもそこに与する作品を送り出したいです。

― ヒビノケイコのブログでは、田舎暮らしのほか、生き方にまつわるさまざまなことを題材に発信されています。川村さんがめざす作品の創作の上でも、ここにいるのは大事なことでしょうか。

川村さん:若くして田舎暮らしを始めて、やりたいことを選んでやってきました。今も、この地域が好きだからここにいます。当然、ここでだから生み出せるものもあると思います。ベースを変えるつもりはありませんが、もう少しいろんな場所に行って、いろんな人と会える仕事をしてゆきたい希望は持っています。さまざまな文化や、自分と違う世界を持っている人たちからの刺激を受けながら、より充実した作家活動をめざしたいです。そのためにも、もうちょっと世に出る必要がありますね。

― 自然とそうなってゆきそうな予感がします。

川村圭子さんの「生きるヒント」『やってみる。それしかない!』やることでしかなにも見えてこない。考えてるだけじゃダメなんです。私にももちろん、つらくて、苦しくて、ぐちゃぐちゃと考えては泣くことがあります。でも最後には、やることしか残ってないんですよね。それしかないから、やるしかない。恐れていることがあって、できない理由になっているなら、それを分解してみます。分解してみると大抵、そこまで怖いことなんてないのがわかります。「死ぬわけじゃないんだし」と。さんざん泣いたら、明日は笑うしかない。そう思えるスパンも短くなってきました。つらいことがあった日も、味噌汁飲んだらおいしい。そのリアルを、私は信じています。だから、次もまた、やってみるんです。


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