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2010年6月号 これからの子育てを考える 第4回 パパの子育てのコツは「笑われてもいい」と自然体にかまえること 「パパの悩み相談横丁」管理人 おおたとしまささん

子どもたちの幸せな明日を作り出すことをめざす「これからの子育てを考える」シリーズ。その第4回として、パパのためのオンラインカウンセリングサイト「パパの悩み相談横丁」管理人、おおたとしまささんのインタビューをお届けします。おおたさんは「今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」とリクルートを脱サラし、「笑われてもいい!」と自然体にかまえ、決して無理したり、かっこうをつけたりしない育児スタンス「笑われ育児」を信条にしています。

「子どもと宝物のような時間を過ごしたい」と脱サラ

リクルートにいた時代はどんな働き方をしていたのでしょうか。

おおた 『エイビーロード』という雑誌の編集者だったのですが、家で夕食を食べるのは月に1回あるかないかという状態でした。ある年の1月の勤務時間を見たら、お正月で18日ぐらいしか出勤日がないのに、360時間もあって、平均で1日20時間は会社にいたことになります。そんな状態ですから、土曜日もずっと寝ていて、夕方に起きて、やっと子どもと遊ぶような状態でした。子育てについても、子どもは勝手に育つだろう位に思っていて、悪いことをしたら、叱ればよいと単純に考えていました。

「今、子どもと一緒にいられなかったら、一生後悔する」とリクルートを辞めたとのことですが、何が転機だったのでしょうか。

おおた 長男が1歳の頃、週末に100円ショップで象のじょうろを買ってきて、一緒にお風呂に入ったことがありました。その時、長男はじょうろを見せただけで、「オッオッ」と喜びました。そして、お湯が鼻から出るのを見て、「キャッキャッ」とまるで宝物のように、目を輝かせて、最高に幸せそうにしたのです。それを見て、世界一幸せだと考えている自分がいることに気が付いたのです。

  バブルの頃、「幸せは自分でつかみとるものだ」という言葉が流行ったことがあります。しかし、その経験を通して、一生の間に、自分が努力して手に入れることができる幸せは1%にも満たず、99%以上はすでに与えられているもので、問題はそれに気づくかどうかだと考えるようになったのです。

  それで一挙に、考え方が変わりました。会社で働いていて、給料は保障されているのですが、家族との時間が全くありません。会社に1時間長くいたら、妻と過ごす時間、子どもと過ごす時間が1時間ずつ減っているわけです。これでは優先順位が逆だという思いがとても強くなり、長男がもう少し大きくなったら、こんな幸せな経験をすることは絶対にできない、一度しかない貴重な宝物のような時間を逃してしまうのは惜しいと考えて、会社を辞めたのです。

自分のダメな部分をそのまま出して、子育てする「笑われ育児」

子育てにはどのようなスタンスで臨んだのですか。

おおた 対人関係で、「笑い」は必要ですが、相手を「笑わせよう」と思ってやってみても、うまくいくことはまず、ありません。しかし、ダメなところや恥ずかしいところも含めて、勇気を持って自分をさらけ出せば、いくらでも相手に笑ってもらえるし、お互いの理解が深まるのです。これを私は「笑われ力」と名付けて、本も出版しましたが、それを応用したのが私の子育てのスタンス「笑われ育児」です。

  最近では「男性も育児をすべきだ」といわれるようになる中で、「理想の育児」や「理想のパパ像」が語られています。しかし、実際にそれに近づこうとしても、たどり着くのは容易なことではなく、たどり着けないつらさが子育てのつらさになっているのではないかと思うのです。仕事もそうですが、子育てもそんなにうまくいくわけはありません。例えば、金曜日の夜、遅くまで飲んで、土曜日、子どもが「遊ぼう」といって来た時、二日酔いで頭が痛くて、遊べない場合があります。その時に、「パパは忙しいし、お酒を飲むのも仕事なのだ」とわけの分からない理屈を並べ立てて、「だから、寝かせてくれ」と大上段からいうことがあります。そうではなくて、「ごめん。きのう飲み過ぎて、遊べないんだ。元気になったら、ママに内緒でお菓子を買って、遊んであげる。だから、もう少し待っていて」と自分のダメな部分をそのまま認めて、子どもにいうのです。そうすることによって、自分はとても楽になりますし、子どもも納得します。これが笑われ育児です。

他にも具体的な例がありましたら、お聞かせください。

おおた たとえば、料理をするパパって絵になってかっこいいですよね。「理想のパパ像」の象徴みたいな感じがします。でも、料理が苦手なパパはいっぱいいます。料理が下手なら、たとえばトイレ掃除に精を出すというのはどうでしょう?それなら遅く帰ってきたときにもできますしね。ときどき気合いを入れて料理を作り、キッチンをめちゃめちゃにするよりも、トイレをいつもピカピカにしておいてくれるパパの方が、実はママにとってもうれしいのではないでしょうか。きっと、「うちのパパは料理なんて全然できないのよ」なんてご近所で笑われることでしょう。それでいいのです。「理想のパパ」を目指して「かっこつける」よりも「ありのままの自分で勝負する」ことを目指すのが笑われ育児のスタンスです。

あたり前と考えている価値観を疑うきっかけになった子育て

一方で、誰しも自分の子どもをこんな風に育てたいという目標を持つのでは
ないでしょうか。それと笑われ育児とは矛盾しませんか。

おおた それは親の願望だということに気づくことが必要だと思います。例えば、ご飯は30分以内で食べる子どもに育てたいという場合、それは親の価値観を押しつけることになります。けれども、ほとんどの親はそれが価値観を押しつけているのではなく、あたり前のことだと考えています。そうした考え方から抜け出て、目標はあくまで自分の願望であり、子どもがそれに応えてくれるかどうかは別問題だという「自他の区別」をしっかり持つことが大切です。

  子どもと電車に乗っている時に、子どもが騒ぎ出すことがあります。そうすると、「静かにしなさいといっているのに」と子ども以上に大声を出して、怒る親がいます。その時の親の気持ちというのは、静かにしないと、自分がダメな親だと見られるというところにあると思うのです。人に迷惑をかけないという場合に、社会人としての責任と子どもに対するしつけの責任の両方がありますが、できていないしつけが電車に乗っている間にできるはずがありません。だとすれば、あめ玉をあげるとか、電車を降りるなどして、社会人としての責任を優先すべきだと思うのです。

  子どもが自分の思った通りには育ってくれないことも、笑われ育児にとってはネタになります(笑)。

おおたさんにとって、子育てはどんな意味を持っていますか。

おおた 自分自身があたり前のこととして考えている価値観を疑うきっかけになっています。例えば、公園に「ボール遊び禁止」と看板が出ていたり、近くの川に「生き物をとらないでください」という立て札が立っていることがあります。地元の人が自然を守ろうと川の手入れをして、自然が戻ってきているのであれば、その川で子どもがザリガニを捕りたいと思うのはあたり前です。それがどうして、捕ってはいけないのでしょうか。それをほとんどの大人は疑いません。大人の価値観というか、社会で便宜的に決めていることがあたり前のように染みついているのです。子どもはそんな価値観を持っていませんから、「どうしていけないのか」と疑問の声を上げます。私自身にも染みついてしまった様々な常識を子どもがいたことで、問い直すことが可能になり、シンプルな自分に戻ることができたと考えています。

ママと子どもとの三角関係の中でやるパパの子育て

男性が子育てをする時のコツのようなものがあれば、教えてください。

おおた ママがふたりいても仕方がないので、パパにしかできないことをするべきだと思います。ママが料理しているのであれば、一緒にザリガニ釣りに行こうとか、母親以外の役割を果たすことです。昔はどこの家も大家族で、おじいちゃん、おばあちゃん、叔父さん、叔母さんがいて、場合によっては居候もいました。また近所で仲良くしている、おじちゃんやおばちゃんなど、色々な登場人物がいました。そして、「お父さんはダメだといったけれど、叔父さんはいいと思うよ」などとそれぞれの人が勝手なことをいっていて、子どもはそういう矛盾の中で葛藤を繰り返して、成長していったわけです。ところが、今はママと子どもというふたりだけの「カプセル育児」です。四六時中、密室の中にふたりでいるので、ママの価値観が子どもの世界全てを覆い尽くして、とても不自然な環境になっています。そこで、大家族は無理にしても、せめて父親が母親ではない役割を発揮することが大切です。例えば、近所のやんちゃ坊主の役割をパパが担って、一緒に落書きをしたりするわけです。

  それは本来的な父親の役割ではないかもしれませんが、今のカプセル育児状況の中では必要な役割です。母親がピッチャーだとすれば、父親はキャッチャーから内野手、外野手まで色々な登場人物に七変化するべきだし、それはできないことではありません。そして、様々なタイプの人がいて、色々な状況で変化するのだということを子どもに見せていくことが重要です。

最後に、子育て中のパパに対するメッセージをお聞かせください。

おおた 父親の子育てが難しいのは、対子どもだけでなく、対妻という三角関係の中で、やらなくてはいけないということです。子どもに対してだけではなく、妻に対してもバランスをとる必要があるわけです。そこで、まずママに対しては家事を手伝うのもよいのですが、女性としていつも愛しているという愛情表現が大切です。それが子育てを上手にやっていく上での近道になると思います。一方、子どもに対しては自分の得意分野を生かすことです。例えば、生き物に詳しければ、亀を飼ってみたり、ザリガニを飼ってみたりするのです。そうした形で、何か一本軸があれば、困った時でも手作りで遊ぶことができるだけでなく、遊びも長続きしますし、自分もその時間を楽しく過ごすことができます。そういう形で、得意分野に子どもを巻き込む方が子どもに対する影響も大きいですし、子どもも喜ぶだろうと思います。

おおた としまさ


 

「今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」とリクルートを脱サラ。「笑われてもいい!」と自然体にかまえ、決して無理したり、かっこつけたりしない育児スタンス「笑われ育児」を提唱。それをもとに、育児系雑誌やWebなどに執筆すると共に、パパのためのオンラインカウンセリングサイト「パパの悩み相談横丁」を運営している。著書に『笑われ力』(ポプラ社)、『パパのネタ帖』(赤ちゃんとママ社)などがある。

「パパの悩み相談横丁」