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今月の「生きるヒント」
その人の価値観をはかるモノサシにされることも多い“お金”。人生に、深くかかわりがある割に、真正面から語られることが少ないのも“お金”です。
誰かのお金観の背景にある経験やエピソードは、いつか自分のそれと重なるかもしれないし、現在の向き合い方を考え直すきっかけになるかもしれません。専門家による経済の話でなく、人それぞれの、お金にまつわるストーリーをお届けします。
第
1
回
節約より投資。ただし、無形資産への投資節約より投資。ただし、
無形資産への投資
奥谷 孝司さん
おくたに・たかし
オイシックス株式会社
執行役員統合マーケティング部部長。Chief Omni-Channel Officer
1971年大阪府生まれ。米国の大学を卒業後、1997年に入社した(株)良品計画で3年間店舗を経験したのちにドイツに駐在。20代の半分は海外で過ごす。帰国後は海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛けるなどし、衣服雑貨部では大ヒット商品「足なり直角靴下」を開発。2010年にWEB事業部長に就任以降、外部の大きな賞を受けるなどして業界で知られる存在に。
2015年10月オイシックス(株)に入社。自社の職務と並行して、Webマーケターとして講演や寄稿も精力的に行っている。妻と娘二人+愛猫マコロンの五人家族。趣味は読書と週末の水泳。
若き日の無知を大反省
お金についての経験を問われて真っ先に思い当たるのが、アメリカ留学時代の反省です。そんなに余裕のあった家でもなかったのに、高校卒業後、両親は僕をアメリカの大学に進学させてくれました。勉学優先という大義の下、バイトもせずに、お金が足りなくなると親に渡されたカードでキャッシングを繰り返していました。利息がつくことすら知らなかったんですよ。さすがに「使いすぎだ」と電話で言われたこともありましたけど、あまり重く受け止めていませんでした。
そんな兄のおかげで、妹は教育にあまりお金を使ってもらえなかったのではないかと、あとから自責の念にかられました。親のカードを好きなように使うだなんて、いま自分が逆の立場になってみるとありえないことです。自分で稼ぎ出して初めて、お金は自らがマネージメントするものだとわかりました。本当に大反省です。
お金について学ぶ機会があるべき
無知だった自分を恥じる反面、「ちゃんと教えてくれよ…」と思う気持ちもありますね。大事なことですよね?十代のころから、社会教育として、お金について学ぶ機会があるべきです。
子どもたちがスマホの課金ゲームで大金を使ってしまう問題に見られるように、昔に比べて「お金の重み」を感じにくい時代だと思います。お金を握りしめて買いに行くことのリアリティというのでしょうか、お金を物理的に見たり触ったりは、金銭感覚を磨くためにも、やはり大事なことだという気がしています。僕はたまたま前職で小売業にいたためそこが持ちやすい環境にありましたけど、ネット企業にいると大人だってリアリティが薄らぎます。現在は、電子決済を前提としたサービスの良き可能性を追求する立場ですが、便利さとのバランスを失わないような教育は、早いうちから必要ではないかと思います。
勉強という自己への投資はやめない
若き日の反省はあるものの、ありがたいことにお金に関しては、苦労らしい苦労を経験することなくこれまでやってくることができました。節約はあまりしないほうです。余裕ができようものなら、なにか生産的なことに投資するタイプ。前職でストックオプションによる臨時収入があったときも、ビジネススクールに通うことに決めて学費にしました。妻もそうしたお金の使い方に賛同してくれるので助かっています。節約はしませんが、年金保険も、子どものための学資保険も掛けてますし、備える意識はありますよ。年金もそうもらえないでしょうからね、危機感はあります。危機感があるからこそ、できるうちは投資を惜しみたくないとも言えます。
投資は投資でも、株などは向いてないですね。試したことはあるんです。結果、株を追いかける時間を良しとできないタイプだと気づいてやめました。その時間を、仕事や勉強や、人と会うことに費やしたいと思ってしまう。前述したように、僕が積極的におこなう投資は、無形資産に対するものです。今度は博士課程で学ぶことにして、「また大学に行く」と言ったら、「先生としてではなく?」と、不思議がる反応もありました。この年齢で、家庭もあるのにまだ勉強?と思う人もいますよね。でも僕は常に学び続けたいんです。学ぶということは、自分がいかに知らないかを知るということです。年功序列が根強い日本では特に、その逆の態度の人が多い気がしますが、本来、年が上になるほど「教えてください」なんじゃないですかね。僕は勢いのある若い人と仕事がしたいし、彼ら彼女らからも教わりたいですよ。
身の丈をわきまえていたい
自分の成長を超えてお金の成長を求めることには違和感があります。収入が上がると、もちろんうれしい。でも、急に2倍、3倍にしたい願望はありません。求めだしたら無限な感じもして、「これだけ働いてるのに、これだけしかもらえない」くらいが健全なんじゃないかという感覚があります。身の丈って大事ですよ。プロ野球選手のように、活躍しているときに一番稼いで、そうでないときは少ないのが当たり前というのがしっくりきます。組織の中でえらい人になって、そこにい続けるだけでもらえるみたいなのが嫌だと思うのも、身の丈をわきまえていない感じがするからですかね。
お金にうんと余裕ができたらですか?今なら若い人に投資して、挑戦を後押ししてあげたいかな。不安が多い世の中だから、もしものために一定の備えは必要だと思います。だけど、守るばかりじゃ人生豊かにならないですよね。挑戦の可能性を広げたり、知識を増やしたりするために、「前のめりに」使うお金の使い方があっていい。僕自身、ひとつの会社に18年いたことで、サラリーマンとしてどう評価されるかのマインドがどこか抜けず、フリーランス的に、どうやって稼ぐかを創造的に考える習慣が不足していると自覚しています。だからなおさら、貯め込むよりも、生産的なことに投資して、それによってお金を生み出したい思いが強いのです。
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- Q1.
- お金のことには詳しいほうだ。
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- Q2.
- 「趣味は貯金」に共感する。
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- Q3.
- 「趣味は投資」に共感する。
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- Q4.
- 先のことはわからないからこそ「使う」。
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- Q5.
- どんぶり勘定の人よりお金に細かい人のほうが信用できる。
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- Q6.
- 100万円と10億円、もらえるなら10億円。
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- Q7.
- お金の稼ぎ方と使い方、こだわるなら稼ぎ方。
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- Q8.
- 「金は天下の回りもの」に賛同する。
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- Q9.
- アリとキリギリスならアリタイプ。
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- Q10.
- お金にまつわる経験から得た教訓や信条をお聞かせください。
若い時分からお金に対するリテラシーを育てたほうがいい。でもそこで重要なのは、人生におけるお金のことを先に考えるのではなく、まずは生き方を考えるということ。順番として、どうなりたいかを考えてから。僕は、お金のことだけを深く考えるのはやめることにしています。だって、あれも必要だ、これもあったほうがいい…と際限がなくなり、「足りない」としか思えなくなってしまいますから。お金は生き方とリンクさせて、生き方ありきで考えるべきものだと思います。それから、お金の話をタブーとするような風潮は良くない。特に資産のことなどは、家族の中で腫れ物にしすぎだと思います。親子間、パートナー間でちゃんと話しましょう。今日、僕もそうしなきゃと思いました!
編集後記
非常に前向きな、「お金の話」だと思いました。稼ぐことと使うことの両方に対する価値観をきちんとお持ちで、それらが非常にいい相関関係にあるイメージ。お話の端々に、お金への品の良さのようなものが表れています。こうゆう方が一番人生に失敗しづらいのではないかと思えてきました。若気の至りもあったとのことでしたが、ご両親もきっと、「投資」のしがいがあったと満足されているのではないでしょうか。
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