2020/2/17

医師に教わる わたしたちの花粉症対策

春の花粉が飛ぶ季節がやってきました。日本では約3割の人が花粉症を発症している※といわれています。花粉症のレベルは軽度から最重症までと症状はさまざまです。今回は、花粉症の治療に詳しい北里大学北里研究所病院の若林健一郎先生に治療法や家庭でできるセルフケアについて伺いました。また、みんなの花粉症にまつわるエピソードもご紹介しています。花粉症の季節を乗り切る知恵を学んで、今のうちから対策をはじめましょう。
※全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした2008年(1月〜4月)の鼻アレルギーの全国疫学調査より

花粉症はアレルギー性鼻炎の1つ
睡眠に悪影響をおよぼす夜の鼻づまりにも注意

アレルギー性鼻炎とは、なにかの物質に対して抗体ができ、アレルギー反応を起こす疾患です。原因となる物質のことをアレルゲンと呼びますが、それが花粉である場合を花粉症と呼びます。日本で患者数が多いのはスギ。ヒノキやブタクサ、イネなども有名です。

くしゃみ、鼻水、鼻づまりがアレルギー性鼻炎の三大症状ですが、目や皮膚のかゆみが出たり、喘息を引き起こしたりすることもあります。二次的な症状として頭痛やだるさを訴える場合もあります。

最近、耳鼻科の世界では、“鼻の症状の中でも、鼻づまりが一番睡眠に悪影響をおよぼす”といわれており、花粉症で眠りに影響が出る患者さんが多いという特徴があります。花粉を浴びていないはずの夜に鼻づまりが起きるのは、「遅延相反応」によるものです。花粉症では、花粉を浴びてすぐにくしゃみ・鼻水・鼻づまりの症状が出る「即時相反応」と、6〜8時間後に鼻づまりが症状として出る「遅延相反応」の2種類があります。日中に花粉を浴びると、「遅延相反応」として夜に鼻づまりが起き、結果、鼻呼吸ができずに眠れないということになるわけです。

鼻づまりによって口呼吸になると、喉や気管支が乾燥することにより、風邪などの感染症にかかりやすくなります。体調を崩しやすくなるので注意をしましょう。

まずは花粉をブロックすることが大事

花粉症の予防や対策として、まずはアレルゲンである花粉を回避することが大切です。外出時にはマスクをつけ、よく晴れて乾燥している日、雨が降った翌日で晴れた日、風が強いときなど、大量に花粉が飛散する日の外出時には、できるだけ花粉を体内に取り入れないように意識しておきましょう。マスクは不織布の使い捨てのものがおすすめです。

また、部屋の換気や洗濯物の屋外干しも控えることをおすすめします。衣服は、可能な限り、ナイロンやポリエステルなど花粉が付着しにくい素材のものを選び、家に入る前に花粉を払いましょう。症状の軽い人はこういった花粉の回避を意識することで、花粉症の症状が軽減することもあります。

<わたしの花粉ブロック対策>

花粉を家のなかに持ち込みたくないので、表面がツルッとした素材のアウターや静電気の発生しにくい素材の服を選ぶようにしています。
(30代女性)

帰宅するときは、外で衣類を1度はたいてから家に入り、そのままバスルームに直行して衣類を脱ぎます。時間があればシャワーを浴びて顔と髪を洗い、できないときは髪にはタオルで巻いて過ごします。
(40代女性)

子どもの花粉症も増えている今、家庭でのセルフケアも大切

東京都の「花粉症患者実態調査」で平成28年発表のデータによると、15歳以下のスギ花粉症患者が急増しているとされています。花粉症の季節に鼻や目を手でかいているような場合は注意が必要です。まずは前述のように、花粉が体内に入ってくるのを回避する対策をしましょう。

アレルギーが発症するかどうかは、遺伝と環境によるとされていますが、特に環境の側面では「衛生仮説」が提唱され注目されています。衛生的な環境を整えすぎていることで、アレルギーが増えているという仮説です。子どもが小さいうちから自然の中で過ごすことで、微生物や菌などに慣れておくことも大切だといわれています。

また、生活習慣が乱れると、免疫のバランスが崩れて花粉症の症状が出やすくなるとされています。生活のリズムを整え、バランスのよい食事を心がけるなど、ご家庭で意識することも大切です。大人は、花粉症の症状がある場合は飲酒を控えたほうが良いでしょう。飲酒をすると血管が拡張して鼻の粘膜がはれ、鼻がつまりやすくなります。

アレルギーは腸内細菌と関係があるとされているので、善玉菌を増やす食物繊維などを補い、腸内環境を整えておくのも良いでしょう。患者さんからは、ヨーグルトや乳酸菌を継続して摂ることで症状が改善したという話も聞きます。医学的に十分に立証されているわけではないですが、それで症状が軽くなっているなら続けると良いですね。

<わたしの体内セルフケア>

花粉の時期は、早寝早起きで生活のリズムを整えるように心がけています。また、お酒を飲むとかゆみが増すと気づいたので、この時期の飲酒は控えるようになりました。
(30代女性)

乳酸菌の入った飲料を飲むのが毎日の習慣です。夫は花粉症の時期になるとヨーグルトを毎日食べ、効果があるかは分かりませんが、「症状が少し軽減される」と言っています。
(40代女性)

症状がつらい場合は、医療機関の受診を

症状がつらくて、日常生活や仕事・学業に影響が出そうな場合は、早めの受診をおすすめします。

よく「風邪と花粉症の見分けがつきにくい」という声を聞きますが、花粉症の場合、基本的に鼻水は水のようにサラサラしていて、発熱などはありません。一方、風邪の場合は、ひきはじめは水のような鼻水が出ますが、その後ネバネバしたり黄色くなったりと変化していきます。

近年、花粉症に対しては、主に以下のような治療法があり、すべて健康保険の対象です。いくつかを組み合わせて治療することも可能です。

<対症療法:症状を緩和する治療法>
●薬物療法

飲み薬や点鼻薬でアレルギー作用を抑える一般的な治療法です。花粉が飛ぶ少し前や症状が出た瞬間から投薬したほうが、症状を抑えやすいとされているので、早めの受診が効果的です。
飲み薬では、第二世代抗ヒスタミン薬といわれるものが主流で、第一世代の薬と比べて眠くならないものが増えています。アレグラ、ビラノア、クラリチン、デザレックスという4剤は、車の運転も許可されている飲み薬です。また、最近は貼り薬もあり、血中の濃度が安定しやすく眠気を抑えやすいとされています。

●手術的な治療
レーザーで鼻の中の粘膜を焼いて鼻づまりや鼻水を緩和したり、手術によって鼻の中の腫れている粘膜を切除・吸引して鼻づまりを緩和したりします。レーザー治療は10〜15分程度で行え、簡便ですが効果は1年程度といわれています。スギの花粉症の場合は11月〜遅くとも1月上旬くらいまでに受ける必要があります。次のシーズンに向けて、早めに受診して計画的にスケジュールを立てておきましょう。

<根治(こんち)をめざす治療法>
●免疫療法

唯一、根治(症状を完全に治すこと)が可能と言われている治療法で、現在、花粉症ではスギ花粉のみが対象です。スギの花粉エキスを体内に大量に注入し続けることで、体を慣らしていくのですが、3〜5年間の継続的な治療で5〜10年程度の効果が維持されるとされています。
月に1回、注射を継続して打つ「皮下免疫療法」は昔からありましたが、数年前から毎日錠剤を舌の下に置いて吸収させる「舌下免疫療法」がはじまり、現在は主流になっています。5歳以上のお子さんも受けられるので、受験や就職活動などを将来に控えた患者さんや、投薬ができない妊娠中の期間を見すえた患者さんには、特にメリットが大きい治療法です。治療は花粉が飛散している時期を避けてスタートします。

花粉症は治療をすることで症状が抑えられる疾患です。つらいときは我慢しないで、早めに医療機関を受診しましょう。

セルフケアと治療を上手に取り入れて、花粉の季節を健やかに乗り切ろう

花粉の季節が過ぎれば症状が軽くなるので、やり過ごしている方も多いかもしれませんね。最近は、子どもの花粉症も増えています。アレルゲンが特定できれば、対処法や治療法も見えてきます。健やかな毎日を送るためにも、ぜひ、自分自身やご家族の花粉症と向き合ってみてはいかがでしょうか。

<教えてくれた先生>
北里大学北里研究所病院 耳鼻咽喉科(花粉症・アレルギー性鼻炎外来)部長
若林 健一郎(わかばやし けんいちろう)先生

2000年慶應義塾大学医学部卒業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本睡眠学会睡眠医療認定医、日本アレルギー学会専門医、医学博士。北里大学北里研究所病院では、総合病院としての特性を生かし、花粉症・アレルギー性鼻炎の治療として薬物療法、免疫療法、手術療法を適切に組み合わせて総合的な治療を提供している。

北里大学北里研究所病院 花粉症・アレルギー性鼻炎外来


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