2020/5/15

防災や感染症の備えにも!いつもの食事に「ローリングストック」を取り入れよう

備蓄食材を普段から使い回しながら災害に備える「ローリングストック」。上手に取り入れれば、日々の調理の時間短縮につながるとともに、災害時だけでなく、感染症流行時の備えにもなります。そこで今回は、防災食アドバイザーで管理栄養士の今泉マユ子先生に、ローリングストックの考え方や常備食材を使ったおすすめのアレンジレシピを伺いました。

普段の食材を非常食にする、ローリングストックとは?

ローリングストックは、備蓄できる食材をいつもの食事に取り入れながら、食べた分だけ買い足すことで、いざというときに備えようという発想です。近年では防災に対する意識も高まり、内閣府のWebサイトをはじめ各メディアでも紹介されているので、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

食材の備蓄については、政府が推奨しているように「自然災害に備える場合は1週間分以上、感染症の流行に備える場合は2週間分以上必要」といわれています。日常の中で消費する備蓄食材を用意しておけば、自然災害はもちろん、感染症で長期間外出できないときも安心なうえ、非常時に慌てて買いだめをすることもなくなります。また、普段の食事の準備も、備蓄食材を上手に使って手早く準備ができます。

“備蓄食材”と聞くと、どうしても「特別に用意しなくては」とか「なんだか大変そう」と誤解されやすいのですが、そんなことはありません。普段食べているものの中で、常温保存できる食材はたくさんありますよね。すでに冷蔵庫や備蓄している食材の中にあるものだけで、かなりの日数をまかなえる人も多いと思います。

「いつもの食事」=「もしもの食事」のメリット

普段の食事に取り入れながら非常時にも備えるローリングストックには、さまざまなメリットがあります。

●日常の習慣として、非常時の準備ができる
普段の買い物で、使ったものを買い足すだけで防災・感染症対策を習慣化できる点がローリングストックの大きな特徴。また、家族と一緒に調理や食事をしながらもしものときの話をするなど、非常時の行動を考える機会にもつながります。

●「備蓄食品」のフードロスを防ぐ
非常食=特別なものとして準備しておくと、備蓄したまま賞味・消費期限が切れてしまい、廃棄せざるを得なくなる場合もあります。ローリングストックであれば、食材を無駄にしないで普段の食卓に並べることができます。

●非常時にも食べ慣れた食事を摂れるとうれしい
非常時にいつも食べ慣れたお味噌汁が一杯があるだけでも、安心できるものです。食べ慣れたおいしい味付けは、大変なときにがんばる力を与えてくれるでしょう。

ローリングストックにおすすめの食材は?

「何を買っておけば良いの?」と思う方も多いかもしれませんが、その答えに正解はありません。どれだけ備蓄に適した食材であっても、好みの味でなかったり、上手に調理できなかったりすれば、そのご家庭におすすめの備蓄食材とはいえないからです。
「ローリングストック用に買ったものの、普段の食事で活用できず、賞味期限が切れてしまって買い直した」という話もよく聞きますが、もったいないですよね。ローリングストックでは、“備える”ことに目が行きがちですが、“上手に食べる”ことがとても大切です。

ぜひ、普段の食事を思い浮かべながら、下記のリストをヒントにそれぞれのご家庭で使いながら備えられる食材を考えてみましょう。

●主食になるもの(炭水化物)
米、餅、シリアル、レトルトおかゆ、フリーズドライ(パスタ、リゾット、おかゆなど)、アルファ化米、乾麺(パスタ、うどん、そば、ラーメン、ビーフンなど)、粉もの(小麦粉、米粉、ホットケーキミックス、お好み焼き粉など)

●おかずになるもの
・そのまま食べられるもの

瓶詰(ピクルス、鮭フレーク、佃煮など)、缶詰(ツナ缶、焼き鳥缶、サバ缶、コンビーフなど)、レトルト(カレー、スープ、パスタソース、牛丼の具など)、ドライパック(大豆、ミックスビーンズ、コーン、ひじき、ごぼうなど)

・お水やお湯を使うもの
フリーズドライ(スープ、味噌汁など)、乾物(高野豆腐、麩、切り干し大根をはじめとした乾燥野菜、ドライトマト、乾燥ひじき、乾燥わかめ、乾燥きのこ、乾燥しじみなど)

●おやつになるもの
ドライフルーツ、ナッツ類、チョコレート、飴、羊羹、ゆであずき缶、フルーツ缶など

●水分になるもの
水、野菜ジュース、スポーツ飲料、経口補水液、お茶などお好みの飲料、ゼリー飲料 など
※水は、1人1日あたり3リットルを備蓄しておくようにしましょう。

特に非常時には、野菜や果物の摂取が不足しがちです。普段の食事にも、非常時にも、野菜や果物を上手に取り入れられるよう、工夫してみてください。

普段の食事を時短でおいしく! 備蓄食材アレンジレシピと備えを紹介

今泉マユ子先生の提唱する、少ないお水で湯煎調理ができる「お湯ポチャ」料理法をはじめ、備蓄食材を使って簡単に作れるレシピを紹介します。普段の食事に取り入れておけば、もしものときにも手早く作れるので、ぜひ試してみてください。

●お湯ポチャ料理法とは?

鍋に1/3程度のお水を入れて、ポリ袋(高密度ポリエチレン製)に食材を入れて湯煎調理する方法です。災害時に水や電気、ガスが止まってしまった場合にも、カセットコンロがあれば1つの鍋で同時に数袋を作ることができ、限られた水を有効活用しながら温かい食事をつくれます。また、鍋を洗う水も手間も不要で、家事の手間を省きたいときにもおすすめです。鍋底に耐熱性のお皿を敷いて、ポリ袋が鍋底に直接触れないようにしましょう。

●麻婆高野豆腐丼(3人分)
~白米+レトルト食品を使ったレシピ~

【ごはん】
・米(無洗米)1合(150g)、水1カップ(200ml)を高密度ポリエチレン製のポリ袋に入れ、空気を抜きながらポリ袋をねじり上げ、上の方で結びます。
・お湯ポチャの鍋に入れて蓋をして火にかけ、沸騰したら中火にして20分。火を止めて10分蒸らせば完成です。

【麻婆高野豆腐】
・一口高野豆腐の小18個(53g)程度、水1カップ(200ml)、レトルトの麻婆豆腐のもと(3人分用)を高密度ポリエチレン製のポリ袋に入れ、空気を抜きながらポリ袋をねじり上げ、上の方で結びます。
・お湯ポチャの鍋に入れて蓋をして火にかけて、沸騰したら中火にして15分加熱したら完成です。

<こんな食材でも作れる!>
*おかゆをつくる場合は、米(無洗米)1/4カップ(40g)に水1カップ(200ml)を入れて同じ時間火にかけましょう。2膳分の全粥ができあがります。
*レトルトカレーなどのお好みのレトルト食材とあたたかいごはんを組み合わせれば、非常時の食事のバリエーションが広がります。

※たくさん作りたいときは1袋の中に大量に入れず、袋の数を増やしてください。

●スープパスタ(1人分)
~パスタ+フリーズドライを使ったレシピ~

・ショートパスタ(50g)、水1カップ(200㎖)を高密度ポリエチレン製のポリ袋に入れ、空気を抜きながらポリ袋をねじり上げ、上の方で結びます。
・お湯ポチャの鍋に入れて蓋をして火にかけ、沸騰したら中火にして表示通りの時間ゆでます。
・最後にポリ袋の結び目をキッチンばさみで切って、フリーズドライのスープ1袋を加えて混ぜれば完成です。

<こんな食材もおすすめ!>
*コーンスープ、卵スープ、わかめスープなど、お好みのフリーズドライスープを使えば、バリエーションが広がります。
*スープの味に合わせて、ツナや粉チーズ、パセリなどを加えてアレンジするのもおすすめです。

※早ゆでのタイプのパスタより、長時間加熱するタイプの方がおいしく仕上がります。早ゆでタイプの場合は調理後すぐに食べるようにしましょう。

●餅カルボナーラ(1人分)
~餅をフライパンで焼くレシピ~

・ボウルに卵1個を割りほぐし、粉チーズ大さじ2杯を加えておく。
・フライパンにオリーブ油小さじ1、切り餅2個、ベーコン(短冊切り)30g程度を入れて、中火〜弱火で餅がやわらかくなるまで焼きます(3分程度)。
・餅が熱いうちに、卵をほぐしたボウルに入れてからめて完成です。お好みで黒こしょうを振りましょう。

<こんな食材もおすすめ!>
*フライパンで簡単に調理できる餅は、頼もしい備蓄食材です。レトルトカレーとからめればカレー餅に。電気が使える場合は、レトルトのミートソースとチーズをのせてオーブンやトースターで焼いて、ミートグラタン風にもアレンジできます。

※冷蔵保存の食材が含まれるので、電気や水道が使える場合に取り入れてください。

●ツナマヨ切り干し大根/イタリアン切り干し大根(缶詰1缶分)
~乾物+缶詰を使ったレシピ~

【ツナマヨ切り干し大根(写真左)】
・ポリ袋に切り干し大根30g、ツナ缶1缶、マヨネーズ大さじ1〜2、おろししょうがとすりごまをお好みで入れて、もんで混ぜれば完成です。

【イタリアン切り干し大根(写真右)】
・ポリ袋に切り干し大根30g、鶏ささみ缶1缶、トマトジュース1/2カップ、おろしにんにく少々、オリーブ油少々を入れて、もんで混ぜれば完成です。
※どちらも切干大根は水で戻さずそのまま使ってください。

<こんな食材もおすすめ!>
*切り干し大根に、お茶と塩昆布、お茶とゆかりなどを加えれば和風のアレンジに。お茶の代わりにウーロン茶を使えば、また違ったおいしさになります。簡単にできるので、お子さんにお手伝いしてもらうのもおすすめです。

●非常時に役立つ調理アイテムも準備しておこう

左上から時計回りに、①カセットコンロ、②カセットガス、③クッキングシート、④アルミホイル、⑤ラップ、⑥ポリ袋(高密度ポリエチレン製)、⑦キッチンばさみ

災害時にガスや電気が止まった場合を想定して、カセットコンロはぜひ準備しておきましょう。カセットガスは1ヵ月間ガスや電気が使えない場合、4人家族であれば15〜18本備蓄することが推奨されています。
高密度ポリエチレン製のポリ袋は、スーパーやドラッグストアなど、比較的安価で手に入ります。表示をしっかりと確認しておきましょう。
カセットガスやポリ袋、ラップにも消費期限があります。食材だけでなく、調理アイテムも普段から使って、ローリングストックをしておくことがポイントです。

食べたら買い足す習慣で、どんなときにも安心を

「1週間分の非常食を備えておく」と聞くと大変そうに思えますが、食べた分だけ買い足すことなら、簡単にできそうですね。災害時や感染症の流行時にも食べ慣れたおいしい食事ができるなど、メリットもたくさんあります。まずは、いつもの食卓に、備蓄食材を使ったレシピを取り入れることから始めてみてはいかがでしょうか。

<教えてくれた先生>
防災食アドバイザー/管理栄養士 今泉 マユ子(いまいずみ まゆこ)先生

徳島市生まれ、横浜市在住。1男1女の母。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食に力を注ぎ、2014年に管理栄養士の会社を起業。レシピ開発、商品開発に携わるほか、防災食アドバイザーとして全国で講演、講座を行う。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで活躍中。『親子で学ぶ防災教室 災害食がわかる本』(理論社)、『災害時でもおいしく食べたい! 簡単「みそ汁」&「スープ」レシピ もしもごはん2 』(清流出版)など著書多数。

株式会社オフィスRM
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