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今月の「生きるヒント」

今も大事、将来も大事。“お金”を語ろう 今も大事、将来も大事。“お金”を語ろう

その人の価値観をはかるモノサシにされることも多い“お金”。人生に、深くかかわりがある割に、真正面から語られることが少ないのも“お金”です。
誰かのお金観の背景にある経験やエピソードは、いつか自分のそれと重なるかもしれないし、現在の向き合い方を考え直すきっかけになるかもしれません。専門家による経済の話でなく、人それぞれの、お金にまつわるストーリーをお届けします。

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お金の使い方が、世界を変える お金の使い方が、
世界を変える

白木 朋子さん

しろき・ともこ

特定非営利活動法人ACE 事務局長/共同創業者

1974年宮城県生まれ。国内外の大学で学び、英国サセックス大学・文化環境開発研究所(CDE) 開発人類学修士課程修了。1997年、大学在籍中に児童労働の撤廃と予防を目的に活動するACEを岩附由香氏と共に創業し、開発援助コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。主にガーナ・カカオ生産地での事業立案、企業との連携、研修コンサルティングなどを担当する。
2015年に女の子を出産。農業を営む夫と3人で埼玉県に暮らす。趣味は旅行。著書に、『子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート』、共著『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて』(いずれも合同出版)。

※義務教育を妨げる労働や、法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のこと。

ACE 公式サイト

公私で異なるお金の重み

お金について問われると、プライベートに関してはどんぶり勘定気味で楽観的なほうだと思います。夫はイチゴを栽培する農家です。夫婦共に高収入とはいえませんが、あちらは天候に左右され、私は天候とは関係のない仕事なので、一応のリスク分散ができているということになります(笑)。結婚した当初、ファイナンシャルプランナーの方にアドバイスをもらいながら、人生に必要なお金について、ふたりで一通り考えました。「どちらかが死んでしまったとき、子どもはどうする?」と、保険についても話しましたよ。でも本来、計画性があるとはいえず、行き当たりばったりに近いタイプです。

プライベートではそんなふうですが、ACEの活動資金についてはもっと切実です。20周年を迎えたACEは、総勢15名になりました。日本で創業した国際協力NGOとしてはそれなりの規模といえますが、資金繰りが楽だったことはありません。寄付をどう集めるかは依然として大きな課題です。そしてその寄付は、応援してくれる人たちあってのお金ですから、私たちには、見合うだけの社会的インパクトを出す責任があります。お金に色はついていないけれど、このお金には気持ちがこもっているのだと、常に意識しています。

一つひとつの小さな変化が、世界を変えると信じている

ガーナにて。2009年に活動を始めたころには小学生だった子どもたちと2016年に村で再会。高校を卒業し、立派な青年に成長していた。

世界では、1億5,200万人もの子どもたちが児童労働を強いられています。未だもって途方もない数ですから、私たちの力で一気に解決できるような問題ではとてもありません。そんな中でACE がフィールドにしている、ガーナのカカオ生産地、インドのコットン生産地だけを見ても、できることがまだまだ、目に見えてあります。活動資金次第でできることの範囲が決まるので、お金はとても重要なリソースです。

世界中にあふれる深刻な問題に相対して、無力感に陥らないかとときどき尋ねられます。もちろん、悲観することもあります。権力を持つ人たちが、私たちが描くのとは反対の方向に向かおうとしている不安もあります。だけど私たちは一方で、危険な労働をさせられていた子どもが学校に通えるようになったり、その家族の(児童労働や教育の重要性への)意識に変化がもたらされたりという現実とも接しているんです。そうした一つひとつ、全体から見れば小さなことかもしれないひとつの変化が、世界を変えてゆくのだと信じています。やり切ったと満足することがない以上、モチベーションを失うことはありません。

世界のための仕事も子育ても、自分を愛し、ケアすることから

続けるうえでいつも心に置くようにしているのは、自分は世界を良くするために仕事をするけど、その世界には自分も含まれるということです。献身に頼り自己犠牲を重ねることでは、ミッションに対し長く粘り強く取り組むことはできません。母親になってみて、これは子育てにおいても同じかなと感じています。私も、ワーキングマザーとしての自分にやっと慣れて力が抜けるようになってきました。親のハッピーは子どものハッピーに直結しますよね。だから、自分自身を愛し、満足させられるようケアできているかが本当に大事。心身ともにいかにベストコンディションでいられるかに尽きると思います。

そんな考えから、公私ともに、女だから、母親だからと、不必要に縛られないよう心がけています。情熱を傾けられる仕事ができている自分も、私のアイデンティティの重要な一部だからです。娘が1歳半のとき、10日間のガーナ出張に出かけました。特にそんなときは、夫や、近くに暮らす義理の両親のサポートに対する安心感が、とても大きく感じられます。農家に休みはないけれど、一般的な働き盛りのサラリーマンと比べると、子どもの近くにいてもらえる時間が長いですしね。子育てを含め、生きてゆくには先々までお金が必要で、それに対する不安がまったくないわけではありません。でも、誰かと助け合うことでやりたいことを可能にし、「ひとりじゃない」と思える安心感は、私にとってお金以上に心強いものです。

人と人、現在と未来をつなぐ、バトンとしてのお金

ACEには若い女性のスタッフが多い。チョコレートとその原料となるカカオ、コットンのモチーフなどを手に(カカオやコットンは、生産農場で児童労働が多く報告されている産業)。

生きるうえで必要なモノはごくごく限られていると、ガーナに行くようになり実感しました。ガーナは、日本人の目には貧しい国に映るかもしれませんが、みんなたくましいし、彼らの豊かさと日本のそれは、同じ尺度で比べられません。熟れた採れたてマンゴーのおいしさ、生きた鶏をプレゼントしてくれる(笑)人の気持ち、そんな感動を味わううち、「シンプルでいいんだ」との思いが増しました。豊かさは、お金とイコールではないですよね。日本に戻り自分の部屋を見渡すと、要らないモノがたくさんあるように見えました。本当は、多くを所有する必要はないのだろうと思います。

親に与えてもらった中で一番感謝しているのも、モノではなく教育です。そこにお金をかけてくれた両親にとても感謝しています。通う学校を選べたり、留学させてもらったり、だからこそ身についたものがあり、なによりいまにつながる道が見つかりました。親となったいま、自分の娘にも、したいことが見えてきたときの後押しができるようになりたいです。お金さえかければ良い教育が与えられるとは決して思いませんが、お金をかける対象として、教育は、そこに注ぐ価値のあるものだと思っています。

意志さえあれば、誰しもいまよりもっと良い方向にお金を動かすことができるのではないでしょうか。お金を増やすことが目的化してしまうと、悪い方向に行きやすいですよね。反面、教育もそうですし、寄付やクラウドファンディング※1、エシカルな消費※2のように、共感で人と人をつないだり、現在とより良い未来をつないだり、社会を良くするためのバトンのような役割を担ってくれるお金の使い道もあります。お金の使い方が、世界を変えると思います。

※1 通常は専用サイトを介し、社会課題の解決や、特定の事業、音楽やアートなどへの出資を呼びかけ、共感した人たちから広く資金を募る方法。

※2 児童労働や労働搾取のほか、自然環境や地域経済の破壊を助長することのない、倫理・道徳(エシカル=ETHICAL)に適った商品を購入すること。

お金にまつわる10のQ&A お金にまつわる10のQ&A

白木朋子さん
  1. Q1.
    お金のことには詳しいほうだ。
  2. Q2.
    「趣味は貯金」に共感する。
  3. Q3.
    「趣味は投資」に共感する。
  4. Q4.
    先のことはわからないからこそ「使う」。
  5. Q5.
    どんぶり勘定の人よりお金に細かい人のほうが信用できる。
  6. Q6.
    100万円と10億円、もらえるなら10億円。
  7. Q7.
    お金の稼ぎ方と使い方、こだわるなら稼ぎ方。
  8. Q8.
    「金は天下の回りもの」に賛同する。
  9. Q9.
    アリとキリギリスならアリタイプ。
  10. Q10.
    お金にまつわる経験から得た教訓や信条をお聞かせください。

    使い方によって良くも悪くもなるのがお金というものだと思います。世の中を良くしたくて、苦労しながら寄付という名のお金を集めていると、悪い人たちがあっという間に何倍も集めてしまえるのはなぜなのかと、やるせなくなることがあります。振り込め詐欺やうその投資話で、何億、何十億と集め、良いところには流れてこないお金に変えてしまいますから。
    いまが困難な状況にある人のあたらしい可能性を切り開き、志のある人や、一歩踏み出したい人のモチベーションにドライブをかける役割も果たせるお金だから、できるだけ良い活かし方をしてゆきたいですね。

編集後記

編集後記

学生時代に出会った児童労働問題にショックを受け、ずっと関わってきたという白木さん。ガーナやインドでのプロジェクトはもとより、日本での周知に取り組み、組織を運営し、大手企業とも連携するようになるまでの20年間、想像を超える情熱と行動力が必要だったに違いありません。それでも白木さんからは、気負いというものが感じられませんでした。「良くしたい“世界”には自分も含まれることを忘れないようにしている」という印象的なお話に、平常心の理由をみつけた気がします。彼女のようなワーキングマザーが、やりたいこと、やるべきと信じることを、できる世の中がいいなと思いました。