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義務化された相続登記(約5分で読めます)
2024/5/31配信
2024年4月1日、相続登記の義務化がいよいよスタートしました。権利関係が複雑になってしまうリスクなどを考えると、不動産を相続したときは早めに登記をしておいた方が良いとわかっていても、「費用がかかることや面倒な手続きはやりたくない」「他の相続人と会うのが面倒」「かえって要らぬ争いが起きてしまいそう」といった理由から先延ばしになっているケースは少なくないでしょう。ただ、正当な理由がないのに相続登記の申請義務を怠ったときには、10万円以下の過料の適用対象にもなります。
■2024年4月1日よりも前の相続は待ったなし!
相続登記の義務化がスタートしたことによる影響が大きいのは、2024年4月1日より前に発生した相続で被相続人が遺した不動産の相続登記がされていないケースでしょう。
今後の相続では、「不動産の取得を知った日から3年以内」が相続登記の期限になるのに対して、2024年4月1日より前に相続が発生したケースについては2027年3月31日が期限として確定しているため、原則として、そのときまでに相続登記を行わなければならず、2024年4月1日からカウントダウンが始まったことになります。
■ケースによって異なる対応方法
相続が発生したとき、相続人の間ですぐに遺産分割がまとまれば良いのですが、相続人が特定しきれなかったり、相続分などを巡って相続人の間で揉めてしまったりして遺産分割がまとまらないことも考えられます。相続登記の義務化に伴い、どのように対処していけば良いか、典型的なケースについて簡単に確認しておきましょう。
(1)遺言により不動産を取得したことを知っているとき
2024年4月1日以降に相続が発生した場合には遺言により相続人が不動産を取得したことを知った日から3年以内に、2024年4月1日より前に相続が発生した場合には2027年3月31日までに、遺言の内容に基づく所有権移転登記を行います。 相続登記により権利移転を公示する効果が生じます。
(2)不動産を相続したことを知っているとき(遺言はないとき)
相続人の間で遺産分割がまとまっているかどうかで、対応が分かれます。
A.相続人の間で遺産分割がまとまっているとき
2024年4月1日以降に相続が発生した場合には相続人が不動産を取得したことを知った日から3年以内に、2024年4月1日より前に相続が発生した場合には2027年3月31日までに、遺産分割の結果に基づく相続登記を行います。相続登記により権利移転を公示する効果が生じます。
B.当分の間、遺産分割を行う予定がないとき、または遺産分割がまとまりそうにないとき
2024年4月1日以降に相続が発生した場合には相続人が不動産を取得したことを知った日から3年以内に、2024年4月1日より前に相続が発生した場合には2027年3月31日までに、相続人申告登記(必要書類を添付して自らが相続人であることを登記官に申し出る制度)を行います。3年以内に相続登記ができないことが想定されるような場合でも、相続人申告登記を行うことで、いったんは相続登記の申請義務を履行することができます。
■相続人申告登記をすればとりあえず義務は履行されるが…
相続登記の申請にあたっては、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本などの書類を収集して法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定しなければならないことなどもあり、3年の期限内にすべてを完了するのが難しいことも考えられます。
そのため、各相続人が単独でかつ簡易的に相続登記の申請義務を果たすことができる相続人申告登記制度は便利な制度と言うことができますが、相続人申告登記は、不動産の権利移転を公示するものではなく、これだけでは相続した不動産を売却することなどはできないという点には注意が必要です。なお、相続人申告登記後に遺産分割がまとまった場合には、遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果に基づく相続登記を行わなければなりません。
相続登記の義務化は、さまざまな手続き負担や時間的な制約からマイナスのイメージもありますが、相続財産のうち不動産が占める割合が多い日本では、早期の遺産分割を促し、その後の権利関係が複雑になるのを防ぐために必要な制度かもしれません。後ろ向きに捉えるのではなく、まずは制度を知り、事前にしっかりと心構えをしておくことが重要です。
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