こくみん共済 coop の公式ホームページお問い合わせ全国の窓口関東統括本部 公式ストーリー仕事に介護に、趣味の旅行……。「今」が一番人生を楽しんでいる

仕事に介護に、趣味の旅行……。
「今」が一番人生を楽しんでいる

野村 美子さん

神奈川県在住
野村 美子
さん [57歳]

PROFILE
建築関係の事務職で生計を立てて暮らす。母の介護と仕事を両立させながら、趣味のフラメンコや旅行も欠かさず、忙しくも充実した毎日を送っている。

ある日突然、家から出火。我が家を出ることに……

 「2階から煙が出ていますよ!」
 そう言って通りがかりの見知らぬ人が、私の家の裏口のほうから叫んで教えてくれました。2010年12月の、朝9時ちょっと前。私は急いで2階に上がり、火の出所となっている母の部屋のドアを開けました。しかしすでに煙が部屋一杯に充満していたので、すぐにドアを閉めて1階に戻り、消防車を呼びました……。
 母が朝起きる際に電気スタンドを倒したようで、運悪くむき出しになった電球がじゅうたんに接触したことが、出火の原因でした。このような状態になると約30分で出火することもあるそうなんです。どの家庭にも起こり得ることだと、驚きました。
 うちは母と私の二人暮らし。出火したときは1階で一緒に朝ご飯を食べていたので、幸いけがなどはなかったのですが、2階の母の部屋は完全に焼けてしまいました。まずつらかったのは、「天井が落ちるかもしれないから」と、火事が起きたその日から突然、我が家に住めなくなったこと。くすぶっていた火が再燃することもあるそうで、火事の際はすぐに出て行かないといけないと知りました。
 実は母は「要介護5」の状態にある認知症の患者で、週5日は、9時にお迎えが来て、デイサービスで施設のお世話になっていました。火事のとき、母はその施設に1ヵ月間預かってもらえることになり、私はまず一週間、妹の家に泊めてもらいました。
 近隣の家の方々に非常に迷惑をかけてしまったので、「この家をどうしよう。更地にして土地を売ってしまおうか」とも考えましたが、結局リフォームすることにしました。実際、リフォームにかかった約1ヵ月半ほど、仮の暮らしを余儀なくされました。家は横浜市内なのですが、妹の家を出てからは、マンスリーマンションを借りて暮らし、残りの10日くらいは関内のビジネスホテルで過ごしたんです。関内はおいしい飲食店がいっぱいありましたし、ビジネスホテルには露天風呂もあって、気に入っていました。気持ちを切り替えて、そこそこ満喫していたんです。得な性格ですよね(笑)。
 仕事は15年ほど前から、父の建築関係の仕事を引き継いで、事務をしています。マンションやホテルでも、帳簿をつけるなどの仕事はしていました。
 全労済(火災共済)に入ったのは2000年頃。家が火事になって、備えの大切さが身に染みましたね。年間1万円ほどの掛金でしたので「保障がリフォーム代の足しくらいになれば…」と思っていたのですが、ほぼリフォーム代と同額の保障額がもらえて非常に助かりました。「なんとか頑張って気持ちも家も建て直そう」、そう思えたのは保障のおかげかもしれません。組合員の皆さんの掛金が病気や災害などで困った人への支えになるという“相互扶助の精神”のありがたさを、改めて感じました。組合員の皆さんに感謝したいですね。また、申請してから約1週間で保障がおりたこともありがたかったですし、全労済の担当の方も、税制面の質問などに丁寧に答えてくださって、本当にサポートが嬉しかったです。

性格が幸い?前向きに過ごすことができた

 仮の暮らしを行いながら、たまに焼けた家に帰り、共済金の請求を行うために「何が焼けてしまったのか」をチェックしているときは苦痛でした。母の部屋にあったミシン、パソコン、テレビ、衣類など、焼けてしまったものをすべてリストアップしていくのです。思い出そうとするたびに喪失感を感じてつらかった……。
 でも、近所の母と同い年くらいの方が、「何かできることがあったら言って」「寒いでしょ? 温まりにおいで」などと気遣ってくださって、うれしかったのを思い出します。食事を差し入れしてくれたりお茶をいれたりもしてくれました。今でも本当に感謝しています。
 また、ジムやフラメンコの存在も、私の支えになりました。ジムは、ダイエットや、認知症の母を介護するのに体力をつけなきゃ、という目的もあって2008年くらいから通っていました。ジムにはフラメンコの教室があり、もともと憧れていたのですぐに興味を持ち、週1回通うようになりました。

 フラメンコは、振り付けを覚えるのが大変そうと思われがちなのですが、実は難しいのは「ステップ」なんです。微妙な足の運びやリズムの違いがあって、踊りを観て覚えるというより、音を聴いてステップを覚える練習が多いです。奥が深くて、面白いですよ。2年に1回、発表会もあるので、それに向けて練習しています。教室では友達もできますし、踊っているときは夢中になれるし、趣味があったことで非常に前向きになれました。

趣味のおかげで人生をエンジョイできている。
そして周囲の支えのおかげで、元どおりの生活に!

 もうひとつの私の趣味は、旅行。先月はオランダとベルギーに行きましたし、ドバイへは昨年1月に行っています。スペインはもちろん、ロシアも好きです。1人で知らないところに行くのが大好き! 旅行に行くときは母を預かってもらっています。介護はもちろん母のためですから、つらいとは考えていません。むしろ、仕事や介護などで多少忙しくしていて、たまに旅行に行く、ジムに行く、という今の生活が私には合っていますね。もしずっと暇だったらホッとしすぎてしまい、自堕落な生活になってしまうかも(笑)。
 火事を乗り越えて、精神的に強くなれたというのもあるのでしょうかね。給料は少ないですがいただけていますし、習い事はできるし旅行にも行ける。本当に今の生活が楽しいんですよ。私は独身なのですが、その分、何でも自分で決められるから精神的にもラクですし、自由を謳歌しています。
 今では火事のことも前向きに捉えられているんです。近年「終活」なんて言葉もありますが、何十年も着ていないのに捨てられなかった服とかがそのときに整理できましたし、踏ん切りがつかなかった自宅のリフォームができたので。多分もともとポジティブなのでしょうけど、趣味や友達、そして近所の方の支えもあって、本当に強がりではなく「今がいちばん幸せ」と思えることが、なによりよかったなと思います。

編集後記

 今回、ジムのフラメンコ教室とは別に、月3回フラメンコの練習をしているという貸しスタジオにお邪魔しました。スタジオの写真は、フラメンコの先輩にレッスンをしてもらっているところ。「タン、タタン♪」とリズムをとりながら一生懸命練習する姿は、火事での喪失感を微塵も感じさせない、情熱とエネルギーに満ちていました。