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義務化される相続登記(約6分で読めます)
2023/4/28配信
相続によって不動産の所有権を取得した場合に、その取得に伴う相続登記(所有権移転登記による名義の変更)をするかどうかは今のところ任意です。ただし、登記記録に正しい所有者の情報が反映されないことが、いわゆる「所有者不明土地」が増えている原因のひとつになっており、2024年4月1日からは相続登記が義務化されることになりました。相続登記の手続きが済んでいない場合、不動産の売却ができないことや、他の相続人の中に借金があるためにその不動産を差し押さえられるリスクがあります。また、相続登記をせずにそのままにしている間に権利関係が複雑になってしまうこともあるため、早めに相続登記を済ませておくことが重要です。新しいルールを確認しておきましょう。
■相続登記の新ルール
新しいルールでは、相続により不動産の権利を取得した(所有者となった)場合には、原則として「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続登記をしなければならないとされています。遺産分割協議によって不動産の権利を取得したときは、遺産分割が成立した日から3年以内とされています。
「3年以内」と聞くと十分な時間があるようにも思えますが、相続登記の申請では、戸籍関係書類(戸籍の記録事項証明書(戸籍謄抄本、除籍謄抄本))によって相続が開始したこと(土地や建物の所有者が死亡した事実)を証明するとともに、法定相続人を特定する(他に相続人がいないことを証明する)必要があります。申請手続きは、遺言書による相続の場合や遺産分割協議による相続の場合、民法で定められた相続割合で相続する場合など、ケースによって必要な書類等が異なります。不動産の所在地を管轄する法務局に申請を行わなければならないため、それなりに時間がかかるということも少なくありません。
なお、申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある場合などの正当な理由がないにもかかわらず相続登記を行わなかったときは、10万円以下の過料が科されることがあります。
■以前の相続にも適用されることに注意!
新ルールがスタートするのは2024年4月1日ですが、それより前に相続が発生した場合にもこのルールが適用される点に注意が必要です。具体的には、「2024年4月1日」と「相続の開始および所有権を取得したと知った日」のいずれか遅い方から3年以内に相続登記を行う必要があります。そのため、以前の相続によって不動産を取得したが何もしていなかった場合には2027年3月31日までに相続登記を行わなければなりません。今回の改正において特に影響が大きいのはこの点だと言えるかもしれません。
■すぐに動けないときなどは相続人申告登記制度の利用を検討
2024年4月1日以後は3年以内の相続登記が必要になりますが、何らかの理由によってその期間内に相続登記ができない場合に、相続の開始および自らが相続人である旨を3年以内に法務局に申請することによって申請義務を履行したこととみなす制度(相続人申告登記)があります。
この制度の利用は、相続人自身が不動産の所有権の登記名義人である被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本を申請時に提出することで足り、相続人が複数存在する場合に法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定がしていなくても、各相続人がそれぞれ単独で制度を利用することができます。
相続人が複数いる場合、3年以内に遺産分割が成立し、その内容を踏まえた申請ができれば問題はありませんが、それができなければいったん相続人申告登記を行い、遺産分割協議が成立したらその内容を踏まえた相続登記を申請するなど、ケースや状況に応じて相続人が行うべきことも変わってきます。相続登記の義務化により、相続が発生したときには、遺産分割を含めてさまざまな手続きを早めに進めることが必要になりそうです。
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