知って得するライフプランニュース
火災保険(共済)の質権設定って何?(約5分で読めます)
2022/11/30配信
マイホームの購入にあたり住宅ローンを利用する場合は、担保としてマイホームに抵当権を設定しますが、金融機関によっては火災保険(共済)に質権設定を求める場合があります。この質権設定とはどのようなものなのでしょうか。
■火災保険の質権設定とは?
まず、質権とは何のことでしょうか。質権とは、債権者(お金を貸す側)が債務者(お金を借りる側)から受け取った担保をローンがすべて返済されるまで保管・占有し、債務者がローンを返済できないときは担保を処分して優先的に債務の弁済を受ける権利のことです。
火災保険で質権を設定するということは、本来、保険契約者が保有している火災保険の保険金請求権や返還保険料請求権などを質権者(質権を有する者、このケースでは金融機関など)が保有するということです。通常、火災保険を契約すれば保険証券が保険契約者の元に届きますが、質権設定されている火災保険では保険証券は質権者である金融機関などの元に届き、金融機関等が保険証券を保管することになります(保険契約者には保険証券の写しが発行されます)。
そのため、質権設定されている火災保険で火災などの保険事故が発生した場合、原則として保険金は保険契約者には支払われず、金融機関などに支払われます。
■なぜ質権を設定するのか?
住宅ローンを貸し出す金融機関の最大の心配ごとは、貸したお金が返ってこないことです。債務者に何かあっても、マイホームには抵当権が設定されているので、貸したお金は回収できるのではないかと思えますが、マイホームが火災によって焼失してしまったらどうでしょうか。貸したお金の全額を回収できない恐れがでてきます。このようなときに火災保険に質権が設定されていれば、金融機関は火災保険から保険金を受け取ることができます。そこで、金融機関によっては、住宅ローンの利用時に「火災保険に質権を設定してください」と依頼することになるのです。
■質権設定のデメリット
住宅ローンの利用者からみたときのデメリットは、前述のとおり保険金などを受け取ることができないことです。また、保険契約を解約・変更(保険金額の減額など)したいときに、質権者である金融機関などの同意が必要となる場合があります。
■質権設定は減少している
かつては、質権設定されている火災保険は珍しくありませんでしたが、最近はあまり見かけなくなってきました。
理由として考えられることは、下記のとおりです。
(1)火災保険の保険期間が短縮されていること。
(2)近年は、自然災害が頻繁に発生するようになり、火災保険から支払われる保険金の額が増大していること。
(3)長期的な自然災害のリスクを予測することが困難になってきたことで、火災保険の保険期間は次第に短くなっていること。
(4)昔は35年の住宅ローンにあわせて35年の火災保険に加入することができましたが、いまでは火災保険の保険期間は最長5年となっていること。
(5)保険期間が短くなるほど、更新の手続に手間とコストがかかり、また、保険金などが住宅ローンの返済に充てられるということは、金融機関は住宅ローンから受け取るはずだった将来の利息分を受け取る機会を失ってしまう。
これらの理由から、質権設定を求められるケースは減少していると考えられます。
なお、火災保険(共済)を2つ契約しても、支払われる保険金は実際の損害額までですので、保険金(共済金)を2倍受け取れるわけではありません。無駄に保険料(掛金)を支払うことになるだけです。火災保険に限りませんが、契約の締結にあたっては、わからないことはそのままにせず、正しい理解のうえで実行に移すとよいでしょう。
- メルマガのご感想をお寄せください。
( アンケート)
※ なお、いただいたご意見・ご感想に対する回答は行っておりませんのでご了承ください。