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第11回 伊達東仮設住宅飯舘自治会 避難生活の先を照らす、あかりが欲しい

地図
PROFILE
福島市から車で約1時間。阿武隈山地北部にある飯舘村は、なだらかな山々に囲まれている。「までいライフ」(までい:手間を惜しまず、丁寧に、心をこめての意)という暮らし方を提唱し、自給自足の村づくりを進めてきた。この美しい村が、東日本大震災で起こった福島第一原子力発電所の事故によって、放射能被害に遭った。地震自体や津波による被害はほとんどなかったにもかかわらず、避難生活を余儀なくされた村民たち。その複雑な心中を、伊達東仮設住宅飯舘自治会会長の佐藤さん、副会長の上田さん、管理人の長谷川さん、飯舘村生活支援対策課主任技師兼係長の高橋さんにうかがった。

畜産農家は、家族同様の動物を置いて逃げられなかった

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放射能についての壁新聞。自ら学び判断するしかない

震災当日は、津波の被害に遭った地域の方々を受け入れていました。そのうちに、どうやらここが放射線の高濃度区域に入ると言われ始めたんです。でも、どの程度危険なのか、今すぐ避難すべきなのか、私たちには何もわからなかった。多少知識のある人や、幼児のいる家庭では早めに避難していたようですが、本格的に村民の避難が始まったのは震災から2ヵ月近くたってからでした。体の不自由なお年寄りのいる家では、そんなにすぐには動けなかったこともあります。また、飯舘村は畜産農家が多かったので、家族同様の動物たちを置いては行けないという思いもありました。この仮設住宅は2011年8月1日と、だいぶ遅くから入居が始まったのです。

避難しても地域の絆はそのまま残したい

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無傷の家から避難しなければならなくなった

なるべく地域のお年寄りがまとまって避難できるように対応したので、この仮設住宅にはかつて近所に住んでいた方々がたくさん集まっています。孤独になって、精神的にまいってしまうのが一番良くありません。自治会ではみんなで話したり、お茶を飲んだりできる場をつくろうと心がけています。また、班長は週に3回、一人暮らしの方や体の不自由な方に声かけをします。この仮設住宅は60歳以上の方が大半。若い世代はもう、別のところに移り住んでいます。私たちは、できれば故郷に帰りたいという願いを捨て切れず、ここにとどまっています。

日々の幸せや未来への希望を取り戻したい

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3世帯で暮らしていた家族も今はばらばらに

自然災害による被害だけだったなら、もう少し楽だったろうに。そう考える日々です。壊れたものは、努力して直していけばいい。でも放射能被害は、自分ではどうしようもないのです。家の周りの田畑の除染にも5?6年、山全体を除染するには100年かかるといわれています。いつ家に戻れるのかもわからず、先が見えません。これまで村では、春は山菜、秋はきのこと山の恵みとともに暮らしてきました。そういった暮らしの楽しみをすべて奪われました。でも現実を受け入れて、お互い助け合いながら前を向いていくしかないと思っています。

Q 仮設住宅での生活を始めて、必要だと感じたものはありますか。
A 全国からボランティアでタレントや著名人の方々が来てくださるのですが、高齢で耳の遠い住民も多いため声がなかなか届かなかったのです。そこで、マイクとスピーカーを買うことにしました。緊急時に住民全員に呼びかけるためにも使えて便利です。
Q 震災後、一番大変だったことはなんですか。
A 正確な情報を得られないのが一番困りました。被曝量の数値も各報道によって違うし、何ミリシーベルト以下なら安全なのかという基準もばらばら。想定外の事態に、政府も対策を一から模索している状態なのでしょう。最後は自分で判断するしかありません。

取材を終えて

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先の見えない原発被害の苦しみに、胸が痛みました

発災直後、国や県からの情報もなく各自の判断で避難した方もいましたが、畜産農家が多く牛を置いて避難できなかったという話を聞き、当時の不安な思いが伝わってきて心が痛みました。「避難するならまとまって同じ仮設住宅へ行こう」という判断で動かれたことに、皆さまの強い結束力を感じました。

こくみん共済 coop  総務部 副主幹
永吉裕子

取材協力:伊達東仮設住宅飯舘自治会 会長 佐藤忠義さん 副会長 上田哲夫さん 管理人 長谷川花子さん 飯舘村 生活支援対策課 生活支援係 主任技師兼係長 高橋祐一さん

取材日:2012年10月31日

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