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第9回 南三陸町消防団 自分の身を守るのは、何よりも大事なこと

地図
PROFILE
南三陸町は地形的な特性から津波の影響を受けやすく、1896年の明治三陸大津波、1933年の昭和三陸大津波、1960年のチリ地震津波によって、大きな被害を受けている。住民はみんな「地震の後には津波が来る」という意識を持ち、避難訓練も定期的に行っていた。沿岸には防波堤や防潮堤、水門などが設置され、津波対策は万全かと思われた。しかし、東日本大震災で発生した津波は、これまでの前提をすべて覆すほど巨大なものだった。3階建ての防災庁舎を軽々と飲み込む規模の津波を前に、消防団はどう動いたのか。団長の菅原さん、副団長の山内さん、南三陸町危機管理課係長の佐藤さんにうかがった。

津波が来ないはずの高さ・地域にまで水が押し寄せて来た

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防災センターですら津波に飲み込まれてしまった

津波の避難訓練は、毎年行っていました。しかし、それは10mの津波を想定したものでした。今回も、最初の警報では6.9mの津波と想定されていたんです。しかし、実際それをはるかに上回る、20~30mの津波が押し寄せました。そうなると、避難場所に設定していた施設すら飲み込まれてしまった。建物の3階程度じゃダメなんです。通常は津波が来ないような内陸部にまで、山を回り込んで水が来ました。防災センターのアンテナにつかまって、なんとか助かった者もいました。何十年も訓練はしてきましたが、この巨大津波の前では、正直、おろおろするばかりでした。3?4人の救助はしましたが、それが精一杯だったのです。

自分が助かってこそ、人の命も救えることを学んだ

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水門の開閉は、遠隔および自動化をお願いしたい

揺れが収まり、消防団員にも救助の要請がありましたが、団員の安全を考えて当日の夜は派遣しないことを決めました。この寒さ、そして電気がつかない暗闇の中に団員を送り出すわけにはいかないと判断したのです。この震災までは、消防団員というのは最後まで役目を全うする使命があると考えていました。そこに疑いはなかったんです。水門も責任を持って団員が手動で締めるものだと。しかし、警察官や消防署員の仕事に対する考えを聞いて、まず守るべきは自分の身なんだと痛感しました。自分の命が危うい状態では、人の救助もできないのです。

避難している団員も集まった。消防団の団結力は揺るがない

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500名以上を抱える南三陸町消防団の結束は強い

震災から数日後は、他県から来ている消防署員や自衛隊の道先案内や、ガソリンスタンドから燃料が盗まれるのを防ぐための見張りなどをしていました。建物が流され、道もなくなっている中での活動は大変でした。5月には電気が戻り、少しずつライフラインも整ってきました。避難生活を送っている団員もいるのですが、団員に招集をかけたら、80%以上が集まったんです。消防団の団結力が衰えていないことを実感し、心強く思いました。今後は自分の身を守ることを第一とし、この消防団をずっと存続させていきたいです。

Q 震災当日の消防団活動で、気になったことはありますか。
A 消防団の避難誘導に従わず、津波の犠牲になった方がたくさんいました。道を封鎖しないと、危険な区域に戻ってしまう人もいました。地震と津波の間には時間がありますが、揺れが収まっても油断せず、消防団員らの指示に従ってください。
Q 消防団として、今後はどんな活動をしていきますか。
A 避難生活中の隊員もいますし、以前訓練に使っていた校庭などには仮設住宅が建っているため、大がかりな放水訓練などはできないのが現状です。しかし、2013年の5月には訓練を開始する予定です。やはり日頃の訓練の積み重ねが自分を守ってくれるからです。

取材を終えて

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課題克服への意識の強さを感じました

“日頃から消防訓練等を実施してきたが、今回発生した津波は「想定外」のものだったので、対応することができなかった”という、大変貴重なお話をうかがうことができました。また、今後は避難誘導をもっと強化しなければならないとの、団長の課題克服への意識の強さを感じました。

こくみん共済 coop  総務部 社会貢献推進課 主任
長倉博志

取材協力:南三陸町消防団 団長 菅原一朗さん 副団長 山内敏裕さん 南三陸町 危機管理課 危機管理係兼住民安全課 上席主幹兼係長 佐藤智さん

取材日:2012年10月26日

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