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第3回 地ノ森住宅自治会 自主防災組織 チリ地震津波の経験を、今に活かす

地図
PROFILE
岩手県南部の太平洋沿岸地域にある大船渡市は、岩手県内最大級の大船渡港を持つ、三陸海岸南部の代表的な都市だ。市の一帯はリアス式海岸となっており、湾に面していない地域まで津波が押し寄せ、建物が全壊する被害を被った。この大船渡市で一番先にできた仮設住宅が、地ノ森仮設住宅だ。高齢者世帯、障がい者、要介護者、乳幼児のいる世帯などが優先して集められたため、大船渡のほかにも、赤崎地区、盛地区、末崎地区などいくつかの地域の住民が集まっている。ここでは、自治会長の三浦さん、副会長の西山さん、総務部長の金さんに、仮設住宅での防災活動についてうかがった。

住民みんなが津波の経験者。防災訓練も自分ごととして取り組む

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2階建ての建物を飲み込むほど高い津波が押し寄せた

この仮設住宅の住民は、全員が津波の体験者です。だからこそ、自主防災組織をつくって、年に1回は防災訓練をしましょうと提案したときも、みんな賛同してくれました。これまで2回の防災訓練を実施しています。障がい者の方を担架で運ぼうとしたら、通路が狭くて転倒してしまうなど、実際に避難してみることでわかることはたくさんあります。訓練は、規模よりも継続が大事です。今回の震災も、それまでに一度でも避難訓練に参加した経験のある人は、生き延びた確率が高いといわれています。とっさのときに、ちゃんと靴を履いて、指定された避難場所に逃げる。これは簡単なように見えて、意外と経験がなければできないことなのです。

チリ地震の経験から、防災ザックの重要性を実感

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ヘルメットも収納できる防災ザックを住民に配布

赤崎地区は、1960年のチリ地震による大津波を経験しています。その経験から、赤崎地区の住民が常備していて、今回の震災時に大活躍した防災グッズがあります。それは「防災ザック」です。リュックサックに、食料品や着替え、女性であれば下着や生理用ナプキン、赤ちゃんのいる家庭はオムツなど、それぞれ必要な物を入れ、避難時にさっと持ち出すのです。真っ暗な避難所で、ザックに入っていた飴やチョコレートが、どんなに気を紛らわせてくれたか。今回、こくみん共済 coop さんに助成金をいただいて、この仮設住宅では、全世帯にザックを配布しました。

住民の情報を共有し、助け合うコミュニティをつくる

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住民を孤立させないしくみを自治会で考えている

地ノ森仮設住宅は、ほかの仮設住宅に比べて仲がいいといわれているようです。窃盗などの問題もほとんど起きません。住民の名前を公開し、自力で動けない人は「おんぶマーク」をつけるなど、どこに、どんな助けが必要な人が住んでいるか、皆で把握しています。これは、当たり前のようで、実施できていないところも多いようです。これからは、地域の皆さまともこの情報を共有し、防災活動を進めていきたいと考えています。いざというときに、仮設住宅が避難所になるかもしれません。また、震災時の情報伝達についての訓練もしていきたいです。

Q 震災時、仮設住宅近くの大船渡病院はどんな状況でしたか。
A 野戦病院のようでした。外まで人がずらっと並んでいて、やっと入れても1日分の薬しかもらえない。持病をお持ちの方は、1週間分の薬を防災ザックに入れておくといいと思います。また、薬の名前を確認できる、お薬手帳などを持っておくといいでしょう。
Q なぜ地ノ森仮設住宅は、住民の仲がいいのでしょうか。
A 外にベンチが置いてあり、座っていると自然にコミュニケーションが生まれるんです。また、集会所で手芸のふくろうをつくるなど、集まるきっかけをつくっています。閉じこもっていると、よくないですからね。おかげで、地ノ森は入居希望の方も多いそうです。

取材を終えて

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皆さまから元気をいただくことができました

仮設住宅で自主防災組織を設立し、活動している状況ですが、お話をうかがった方々は非常に元気で、私自身も元気をいただくことができました。また、昭和35年に発生した津波の経験を活かし、今回の助成金を利用し、防災ザックを購入する等、過去の経験を活かしながら活動していらっしゃるのが印象的でした。

こくみん共済 coop  岩手県本部 事業推進部 部長
佐藤雅喜

取材協力:地ノ森住宅自治会 自治会長 三浦正明さん 副会長 西山謙一さん 総務部長 金誠基さん

取材日:2012年10月10日

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