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⼦乗せ⾃転⾞は怖い?安全な乗り方や、対策などをプロの専⾨家に聞きました。

公開日:2020年11月30日 / 更新日:2021年4月20日

自転車の安全な乗り方の普及にご尽力されている自転車の安全利用促進委員会の遠藤まさ子さんにお話を伺いました。

子乗せ自転車の総重量は最高で100キロ越えの場合も。

自転車の安全な乗り方について、普段は年齢層別でお話しするようにしています。
今回は、30-40代の子育て世代に対しての乗り方・交通ルールについてお話しいたします。コロナ以前から、都心部では自動車を持たない方が増えたり、子どもの送り迎えに自動車の使用を禁止している園があったり、離れた保育園を掛け持ちするご家庭があったりと、機動性の高い自転車に、子どもを乗せて利用する方が増えています。ベビーカーの次に買うものとして認識されるほど子乗せ自転車への需要が高まっていると思います。

その中でも電動アシスト付きの自転車(以下、電動自転車)を選ばれる方が多いのですが、バッテリーやチャイルドシートに加えて、お子さんの体重が増えるので自転車全体の重量がとても重たくなります。スポーツバイクなどは自身の体重に加えて車体分の10~13kg程度で済むのですが、お子さんを乗せた電動自転車は、自身の体重を含めた総重量が100kgを超える場合もあります。同じ速度で走っていたとしても、ぶつかったときの衝撃度は子乗せ電動自転車のときの方が何倍も大きくなります。お子さんを乗せているときのスピードの出し過ぎには、特に注意して安全運転を心がけていただきたいです。

また、お子さんを乗せた大人が運転する自転車は、原則歩道の走行は禁止なのですが、どうしても歩道を走らねばならない状況があると思います。そのときには、徐行運転が必須となります。徐行とは、おおむね時速8km前後なのですが、電動自転車に子どもを乗せた状態でその速さを保ってバランス良く走るのはとても難しいです。理想は、ルールどおり車道を走るか、少し時間に余裕を持ってルートを変更するなどして対応いただくのが良いと思います。

雨の日は乗らないという選択肢も考えてみる。

その他注意してほしいことは、危ないとわかっていてもやってしまいがちな行動で、子どもを乗せたまま自転車を離れることがありますね。子どもがバランスを崩して自転車が倒れる事故が後を絶ちません。子どもを乗せるとき、降ろすときの順番も気をつけていただきたいです。乗せるときは後ろの子から、降ろすときは前の子からです。常に自転車の後ろ側に重心がくるように心がけましょう。あとは、子乗せ電動自転車は押して歩くのも一苦労で大変なのですが、押し方のコツがあります。自分の方に少しだけ傾けてサドルを腰で支えながら3点で支えるようにして歩くと安定します。

あと、雨の日は乗らなくて済むのであればそれが1番なのですが、乗らざるを得ない方もたくさんいらっしゃると思います。まず最低限守って欲しいことは、傘をさして走らない。地域によって傘さし運転の条例範囲が少し違うのですが、基本的には取りつけのものでも危険です。傘をさした状態では、道路交通法のサイズ定義である「普通自転車」の横幅の範囲を超える場合がほとんどです。風の抵抗が増し、視界も狭まりますから、傘ではなく雨具を着て乗るようにしていただきたいです。今は安全で脱ぎ着しやすくて視界も守れた雨具もたくさん出ているので皆さんも調べてみてください。

増えている、「知らない間にひき逃げ事件」。

急いでいるときに起こりがちなのですが、住宅地の信号のない十字路を徐行や一時停止をしないで走行する方が、歩行者に気がつかずぶつかってしまうケースがあります。電動自転車の場合は、アシスト機能がある為、人や物にぶつかったときに衝撃に気づきにくく、知らないうちに他人を傷つけてしまうということがあります。そのように、乗っている本人が気づかず走り去ってしまうことから、ネットなどで、「子乗せ自転車はマナーが悪い」と騒がれる原因にもなっています。

また、子育て世代は「早く移動できる育児用品」とベビーカーと同じ感覚で使われている方が多いのですが、自転車は生活用品ではなく車の一種です。車に乗っている意識を持って交通標識やルールを守り、人を轢いてしまうこともあると意識することが大事だと思います。すぐできる対策として、普段よく自転車を乗るルートの危険箇所を、実際にチェックしていただきたいです。自分だけのハザードマップを作るイメージです。警察署が交通事故マップなどを公開していたりもするので参考にしてみてください。

自転車ではなく、車の一種を運転しているという自覚が大事。

電動自転車に限らず、車道を右側通行している、いわゆる「逆走自転車」もとても危険ですね。通常、赤色灯が後ろについているので、左側通行であれば距離感をしっかり確認しながら走行ができるのですが、逆走していると昼間でも距離感を取るのが難しく、予想以上に早く近づいてくるので判断が遅れる可能性が高いです。これも交通ルールを理解していないのが理由なのと、自分が車の一種を運転している自覚が足りないから起きていると考えています。やはり、免許の有無も大きな原因かもしれないですね。

それから、自転車全般にいえるのがメンテナンス不足の車体が散見されること。自転車には法定点検の仕組みがないため、買ったら乗りっぱなしが後を絶ちません。タイヤの空気圧が低いとブレーキをかけたときの制動距離が延びますし、ブレーキシューやワイヤーは消耗品のひとつ。ほんのちょっとの不具合で命に関わる事故を起こしかねません。最低でも年に1度は定期点検を受け、また購入時にはBAAという安全マークを参考にするなどして、修理できるクオリティの自転車を選ぶことが大切です。

自転車の乗り方が下手になる子どもたち。

日本では、自転車のマナーや危険性について親もあまり教育しないですし、学校でも年に1回やるかやらない程度で、年齢にあった乗り方や交通ルールを理解する機会が少ないです。私は全国の中学高校で講演する機会が多く、先生方にもお話を聞くのですが、年々子どもたちの自転車の乗り方が下手になっているという声をよく聞きます。様々な危険から身を守るために保護者が送迎をし、そもそも自転車に乗る機会が少なくなっている子が増えているようです。マナーや危険性について理解が乏しいまま育った人たちが親になり、子どもに不充分な指導しかできなかったり、急に子どもを乗せて電動自転車に乗ったり、自動車の所持率も減ってドライバー視点が不足していることなど、危険性が高まる負のスパイラルが起きていると思われます。

自転車保険、まずは知ること、調べることから始めよう。

加入義務化が進む自転車保険についてですが、何よりも自転車保険加入していないことに対する罰則がないことが、加入の進まない一因ではないかと考えています。また、保険に入るのが手間だと考えている人が多いのも事実です。ただ、高額賠償の事例も増えていますし、交通事故全体の件数が減っている中で自転車事故の比率は少しずつ上がっています。そんな中で、自動車と自転車の事故でも自転車の方が過失割合が高いという判例も出てきています。自動車の修理代を自転車側の方が払い、自分のけがの治療費も自分で払うなんてこともあって、高額請求賠償ではなくても100万円単位のお金がかかる事故の可能性があり得るのです。こういうことも、知っていれば皆さんの意識も変わると思うのでとにかくメディアや自治体、関連団体からの情報発信が大事だと考えています。

全く新しい保険商品に加入せずとも、今加入している保険に特約をつければ解決することも多いです。そのため、少し興味を持って調べていただき、面倒がらずに必ず入って欲しいです。まず自分の入っている保険を見直してみてください。自転車屋さんでも保険商品を販売していたり、おすすめの自転車保険を教えてくれる所もあるので点検の際にでも聞いてみるのはいかがでしょうか。

PROFILE

遠藤 まさ子 
自転車の安全利用促進委員会 メンバー / 自転車ジャーナリスト
自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などの経歴を持ち、自身も子育て中に子乗せ電動自転車を使用するなど専門的視点と生活者視点のどちらも兼ね備える。

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