真夜中に、息子が夜泣きで2時間泣き続けたあの日。
その間ずっと息子を抱き、真っ暗な部屋の中を子守唄を歌いながら歩き回っていた当時の僕。

もしも、あの夜の僕にタイムマシーンに乗って会いに行けるのなら、大きく成長した息子の写真を見せて「大丈夫。夜泣きもあと少しで終わるから、頑張ろうね。」と声をかけてあげるだろう。

真夜中の夜泣きやイヤイヤ期など、子育てで直面する“大変”の数々。この“大変”には、一歩間違えれば子どもに手をあげてしまいかねないほどのストレスやプレッシャーがかかるものも多くあります。

シングルファーザーだった頃の僕にとって、この長くゴールの見えない子育てはまるで、明かりのないトンネルの中を無我夢中で走り続けているような感覚でした。真っ暗なトンネルの中では、自分がどこにいるのか、どこに向かっているのか、向かう先に明るい世界は待っているのか……なんの確証もないまま手探りで道を探し、何度も何度も転びながら走り続けていました。

当時の僕は、シングルファーザーになってしまったという自責の念から、周りに迷惑をかけないよう、家事や育児のすべてを自分ひとりでこなさなければならないと、自分で自分を追い込んでいました。自分ひとりですべてをこなそうと無理をし続けた結果、頭の中はパンク状態になり、そのしわ寄せは息子にいきました。仕事が長引き保育園のお迎えが遅れて寂しい思いをさせてしまったり、保育園のスケジュール確認が疎かになってしまい体操服で登園すべき日に制服を着せて登園させてしまったり……。

「息子に辛い思いをさせてしまっている……このままではいけない……」と毎晩のように息子の寝顔を眺めながら自分を責め、そして「もっと頑張らなきゃ……」とさらに自分を追い込んでしまっていました。こうして自分を追い込めば追い込むほど、子育てというトンネルはより暗く、より長いものになっていきました。

ある日、自分の未熟さや不甲斐なさに嫌気がさし「親として失格だ……」とこれまで溜め込んできた思いを口にしたことがありました。そんな僕をたすけてくれたのは、家族や近所のママ友たちでした。

「完璧じゃなくていいんだよ」
「いつでもたすけるからね」
「困ったことがあったらすぐ言ってね」

周りの方々がかけてくれたたくさんの優しさが、ひとりで走り続けていた真っ暗なトンネルに、そっと明かりを灯してくれました。たすけを求めることの重要性、そしてたすけてもらうことの大切さを学んだ瞬間でした。
たすけてくれる人がいる、たすけを求められる場所がある、そう思えるだけで心はスーッと軽くなっていきました。

シングルファーザーを約3年経験し、大きく成長した息子のおかげでほんの少しだけ成長できた僕は、今の妻と再婚しました。子育てという長いトンネルを走り続けることに変わりはないけれど、明かりの灯ったトンネルの中を共に手を取り合い進んでいけるパートナーができたことはとても心強く、ここでもまた“たすけあい”の大切さを学びました。

妻のおかげで少しだけ子育てに余裕ができた頃、テレビの報道番組である虐待のニュースを目にしました。夜泣きをした当時11か月の子どもを母親が床にたたきつけ、その後子どもは死亡したというものでした。このニュースで僕が強いショックを受けたのは、その子どもが三つ子だったということでした。子どもが1人でさえ大変なのに、三つ子を育てることがどれだけ大変かは想像に難くありません。

報道によると、ミルクの回数は1日に24回以上で、1日1時間の睡眠さえとれない日が続いていたといいます。当時うつ状態だったという母親は行政などにアラートをあげていたものの、身近にサポートしてくれる人がおらず孤立状態だったと聞いて、胸が締め付けられ涙が溢れてきました。

「小さな命を、そして苦しんでいるパパやママを救える方法はないだろうか……」
「周りにたすけられてきた僕は、誰かをたすけられているのだろうか……」

この思いがきっかけとなり、SNSを通じて笑いを交えた子育て情報の発信を始めました。
ワンオペ育児の方やひとり親の方、産後うつや育児ノイローゼで苦しんでいる方など、シングルファーザー時代の僕のように真っ暗なトンネルの中を泣きながらさまよっている方は大勢いると思います。

核家族化が進む現代社会において、近くに頼れる相手がいない方や、周りに気軽に相談できる相手がいない方もたくさんいることでしょう。そんな方々に「ふふっ」と笑ってまた一歩前に進んでもらいたいという願いを込めて発信しています。離れていてもひとりじゃない、みんなでたすけあいたいと心から思っています。

なぜ僕が、子育て情報の発信を続けられているか。それは、僕もかつて真っ暗なトンネルの中をひとりさまよっていたからです。そして、そんなときに灯された明かりに心救われた経験があるからです。たすけられた過去があるから、たすけたい今があるのです。

当時の僕のように真っ暗なトンネルの中でがむしゃらに頑張っているパパやママに、ちっぽけではあるけれど“笑い”という明かりを灯せられたらいいなと思っています。

もしかしたら、このコラムを子どもの夜泣きの対応中に読んでいるパパやママもいるかもしれないね。そんな方に最後に一言伝えたい。

「大丈夫。夜泣きもあと少しで終わるから、頑張ろうね。」