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版画の部 課題 自由課題
最優秀賞
優秀賞
総評

色鮮やかな版画たち

特定非営利活動法人 市民の芸術活動推進委員会 理事長

鈴石 弘之

鈴石弘之さんのプロフィール写真

 第50回という記念すべきコンクールでしたね。半世紀にもわたって版画のコンクールを実施しているのはこくみん共済 coop のみです。まったくもって希有のことで敬服いたします。こんなコンクールの審査にたずさわらせていただき光栄です。前任の太田昭雄先生から引きついでおよそ10年になります。
 50年を経てきたコンクールですが、50年前とは大分様変わりなのではと思います。当初の頃は私も図工の教師として版画の実践をしておりましたが、題材は生活画や物語の絵などが主流であったと思います。コンクールもテーマが決まっており、それに従っての応募だったと思います。
 時を経て、現在では、一版多色の版画や彫り進めの版画、コラージュを取り入れた作品など様々な技法が加わり、色彩も豊かになりました。そして、大変に残念なことですが、濃密な白黒の木版画の実践がすくなくなってきました。学校現場では高学年の図工の年間授業時数が50時間に削減され、少なくとも10時間は要する版画は取り組みにくくなったと思われます。まことに残念なことです。
 さて、今回最優秀、優秀に選んだ作品をみてみましょう。
 ねこやさかななどの生きものを題材にした低学年の作品が全体の半数を超えています。きっと身近にかかわることのできる、敢えて言えば共に生きる動物たちへの愛着が創作の動機のように思えます。
 そして中・高学年では人物を題材にした作品が3点ありました。学校での生活(音楽や理科の時間)がとりあげられていました。これはいわば生活画のジャンルに入るものです。しかし、農業などの労作を主題にした作品が一つもないのが寂しい気がしました。
 今回、特色ある哲学的な主題の作品が2点ありました。こんな作品がでてくるのだと嬉しい気分です。その主題は「この世の真理」「欲と自然」というのです。文学的でもありますね。
 本コンクールでは一般の公立学校からの作品と画塾からの作品が並列していましたが、指導に差がみられました。画塾の先生の方法論的な指導性が表現に反映して、よい結果を生んだ作品がありました。また、各地区から既に優秀として認められた作品群でしたが、各地区の差があり、選出に苦労をしました。