2020年2月1日〜2月14日。JR渋谷駅のハチ公改札を出ると、「ENJOY たすけあい」の大きな文字が目に入ります。(※写真は新宿駅。2月2日迄掲載。)

相手がたすかる。自分がうれしい。 そんな「たすけあいを楽しむ文化」を。

こくみん共済 coop は、たすけあいを多くの人に気軽に楽しんで欲しい。という思いから、ENJOY たすけあいのプロジェクトを始めました。

今、たすけあいの文字が掲げられている渋谷を行き交う人々は、普段どんなたすけあいをしているのでしょうか?

ライターの森 真梨乃さんに「最近、"たすけあい"しましたか?」と、皆さんのたすけあいエピソードを聞いてきてもらいました。

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こんにちは。森 真梨乃です。

「最近、"たすけあい"しましたか?」

まずはわたしも考えてみました。
周りの方々にたすけられながら生きている自覚は十二分にあるのですが、「誰かをたすけた」と胸を張って言えるできごとはあったかというと、一抹の不安があるところです。

街の皆さんはどうなんだろう? わたしのように答えに詰まってしまう人、積極的に行動していてすぐに答えられる人、様々な人がいるんだろうな……。

是非、皆さんのたすけあいエピソードを聞いてみたい!

そんなワクワクした気持ちで、渋谷の皆さんにお話を聞いてきました!

リアル「お医者さまはいらっしゃいますか!?」体験

まず1人目は、駅前で出会ったこちらの男性。

「道案内くらいなら毎日のようにしますね。外国人の方でも頑張って案内します!」
と話してくださいました。

しかしそれよりも驚いたのは……、

「僕は現役の医師なのですが、先日飛行機に乗っていたら、体調を崩された方がいたんです。CAさんが"お客さまの中にお医者さまはいらっしゃいますか?"と医師を探す事態が発生したので、名乗り出て対応しました……!」

えーっ!そのセリフ、ドラマでしか聞いたことがないです。本当にあるんですね……。大変だったかと思いますが、お医者さんが乗り合わせていて不幸中の幸いでしたね……。

「はい。そのときは急病人の方だけではなく、航空会社の方たちもたすけることができたかな、と思います。

日常的には、たすける側だけでなく僕も周りの方にたすけられてばかりです。先日も電車とホームの隙間に落ちて、近くにいた方が引っ張りあげてくださいました(笑)」

序盤から見事な"たすけあい"エピソードが飛び出しましたね……!
なかなかないシチュエーションとは言え、不測の事態にもしっかり対応できる心構えには、尊敬の念しかありません。

3回乗り継ぎ、最寄り駅まで

続いてこちらの女性からお話を伺いました!

「わたしはこの間、駅で松葉杖を使っている方が倒れたところに出くわして……」

なるほど、手を貸して差し上げたとか??

「はい。それだけではなく、その日は不運にも電車が止まってしまっていたので、その方の目的地はわたしの行き先と別の方向でしたが、付き添って3回ほど電車を乗り継ぎ、最寄駅までお送りしました」

さ、3回も!? わたしだったら途中でくじけてしまうかもしれません……。
乗りかかった船と言いますか、中途半端では終わらせない優しいお話ですね。きっとその杖をついていた方も本当にたすかったと思います。

松葉杖だけでなく、街で車いすや白杖を使っている方を見かけることは決して珍しくありません。そんなときに一言「お手伝いできることはありますか?」とスムーズに発せられる人になりたい、そんな気持ちを後押ししてくださる素敵なエピソードでした。

ちいさな気遣い、おおきな感謝

明治神宮の鳥居の前で出会ったこちらの女性は、

「電車でベビーカーを使っている方がいたので、車両からホームへ下ろすときにお手伝いしました」
とお話してくださいました!

赤ちゃんと荷物を積んだベビーカーを持ち上げて乗降するのは骨が折れるもの。周りの方がさっと手伝ってくれたらとっても嬉しいですよね。

電車でのたすけあいといえば、わたしは泣いている赤ちゃんがいたら、鞄に入れているキーホルダーをちら見せしたり変な顔をしたりしてあやしています。効果の程は不明ですが、「全然気にしてないよ~」という気持ちが伝わればいいな、と思って積極的にやっていることのひとつです! 繰り返しますが、赤ちゃんへの効果の程は不明です。

飛行機と電車を乗り継いで草刈りへ

続いて、初詣に来たというこちらの男性。

「叔父さんのみかん畑の草むしりをしました」

とのこと!詳しくお話を伺うと、

「去年、長崎に住む叔父さんが亡くなって、叔父さんのみかん畑に草が生えてしまったんです。それを知って先月、2週連続で週末に飛行機と電車を乗り継いで草刈りをしに行きました。いざみかん畑に行ってみるとセイタカアワダチソウがボーボーに生えていて大変でした」
と、写真を見せながらお話してくださいました。2週連続で東京から長崎、すごいフットワークです!

「畑をきれいにして、叔母さんがとても喜んでくれました。来月は肥料を撒きにまた長崎に行ってきます!」

こちらが草刈り前の写真。確かに、みかんの姿がよく見えない……。

こちらが草刈り後!
先ほどの写真と見比べると、すっごく綺麗になっているのが分かります。

鮮やかな色のみかんがとっても美味しそう~!

畑は人の手が入らないとすぐに荒れてしまうと聞いたことがあります。
「叔父さんが大切にしていたみかん畑、これからもきれいな姿を保てるよう頑張ります!」
と笑って話してくださいました。

きっとみかんも喜んでいることでしょう。

ファン同士でたすけあって、推しを推す

渋谷の街中で出会った彼は、地下アイドルのオタクだそう……!この日も応援しているアイドルのイベントに行く途中とのことでした。

オタクならではの“たすけあい"はありますか? と伺ったところ、

「推しの生誕祭のとき、オタ同士で整番の譲り合いなんかはよくします!」
と教えてくださいました!ちょっと専門用語が多いので解説してもらったところ、

「地下アイドルには“推しの生誕祭”という定期イベントがあります。“推し”は特に好きなメンバー、“生誕祭”は誕生日のメンバーをお祝いするイベントのことです。自分の推しの生誕祭となるとオタクの気合いの入り方はもうすごくて。

特別な日なので、整理番号が1つでも早いチケットで入場して最前列で祝いたい気持ちはみんな同じです。でも自分が特に好きなメンバーの生誕祭の整理番号が良くないと、心優しいオタク友達が早い整理番号のチケットを譲ってくれることがあるんですよ……!
持ちつ持たれつで、自分が他のメンバーの生誕祭で早い整理番号のチケットをとれた日は、そのメンバーを推しているオタク友達に譲ります。チケット交換をしてはだめな場合もあるんですけど、譲り合って推しを応援できるのは素敵ですよね!」

す、すごい……! 地下アイドルオタクの世界は恥ずかしながら知識に乏しく、勝手に殺伐とした雰囲気を想像していましたが、こんな素敵な"たすけあい"もあるんですね。アイドルの方も、そんなたすけあいの光景をステージから見れたら嬉しくなりそう。美しいたすけあいのお話を聞かせていただきました。

彼は「アイドルに払うお金は税金だと思っています」という名言を残し、渋谷の雑踏へ消えて行きました!

年始に働く両親をサポート

続いて、明治神宮に初詣に来たという女性から伺った素敵なお話です!

「毎年年末に実家に帰ったら、大掃除をしています!」
と話してくださいました。

「実家が自営業で小売店をしているので、年末年始は福袋の準備で忙しいんです。なので毎年妹と2人で家中をピカピカにしていますね。自分の家も大掃除してから実家に帰るので少し大変ですが、お掃除って、スッキリするので大好きなんです! スッキリした気分で新年あけおめ!って言いたくて」

偉すぎてもはや偉人です。自分の部屋ですらまともに大掃除しないわたしには、眩しすぎて彼女の笑顔を直視することができませんでした……。
彼女が小さい頃からご両親は年始は初売りのため忙しくされていたそう。家族でゆっくり過ごせないお正月を悲しむのではなく、働いている両親を少しでもたすけよう! と思って始めた大掃除。家族の中での素敵な"たすけあい"エピソードですね。

いとこの味方に

「実家は長野の田舎なんですが、女子高生のいとこが親族からのプレッシャーを強く感じているな、と察する場面があって。自分のやりたいことを強く主張できない子なので、さりげなく話を聞いてあげたり、親戚からの「進路はどうするんだ」「女の子なんだから東京なんか行かなくても」といった口撃から、かばったりしていました。じつはわたしも同じくらいの年齢のとき、似たような経験をしていたんです。まだ子どもだから大人に口では勝てないし、わたしが味方しなくちゃ! と思って行動しました」

そう語る彼女が描いてくださったのは、いとこの女の子の似顔絵でした!

満面の笑み&「好きに生きやー!!」というメッセージ、いとこの女の子はきっとずっと忘れられないと思います。子どものときに味方してくれる大人の存在って本当に希少なんですよね。どうかそのいとこの女の子は、やりたいことを我慢せず、自分の夢にひたむきになってほしいと部外者ながら祈ってしまいました。好きに生きやーー!

"たすけあい"のない日はない

最後は、遠くからでも制服姿が目立っていたこちらの男性2人です!

19歳と20歳という彼らは、海上自衛隊の養成学校の生徒さんだそう!入寮し生徒全員で共同生活を送っている彼らならではのたすけあいエピソードを聞かせていただきました!

「家事を協力するのが教育の一環なのですが、生徒数に対してアイロンの数が少ないので、自然にみんなの分もやってあげたりと、協力しています。」
「うん、ベッドメイクとかも。2週間に1回のシーツ、枕カバーなどのリネンの交換の日に用事があってできない人の分は代わりにやってあげます。もちろん、僕がしてもらうこともありますよ。寮生活では周りをたすけない日はないし、たすけられない日はないですね。たすけあって生活していることが本当に自然です。人をたすけないと自分もたすけてもらえない」

“たすけない日はないし、たすけられない日はない”という言葉の重み、彼らが発すると何倍にもなるような心持ちがします!
寮での共同生活は、「気を遣って疲れそう」とか「辛いんだろうな」というネガティブなイメージを持っていましたが、持ちつ持たれつの精神が自然と身に着く素敵なお話を伺い、漠然と後ろ向きな印象を持っていた自分が恥ずかしくなりました。立派な自衛官を目指してこれからもがんばってくださいね!

「最近、"たすけあい"しましたか?」と質問すると、最初は皆さん「大したことはなにもしてませんが……」と謙遜されたり「ないと思います」という答えが返ってきたりしました。けれどお話を伺ってみると「電車で席を譲った」、「車いすの方にドアを開けました」など、たすけあいエピソードが出てきました。たすけたという意識がないだけで、思っていた以上に日常で小さなたすけあいがたくさん行われているんだ、という発見がありました!
むしろ、意識しなくても自然に持ち寄れる優しさって、すごく素敵ですよね。
皆さま、心温まるたすけあいエピソードを本当にありがとうございました!

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冒頭でご紹介したJR渋谷駅前に掲げられている「ENJOY たすけあい」の大きな文字。
遠くから見るだけでなく、近寄ってみてください。
昨年開催した“note投稿コンテスト「#たすけてくれてありがとう」”の優秀作品を集めた冊子をプレゼントしています。
ぜひお手にとって、待ち合わせの間、帰りの電車で読んでくださいね。

(写真:5歳 編集:はつこ)