あなたにとって、「たすけあい」とはなんですか?

自分が誰かをたすけた経験って、小さなことだと思ったり、少し照れくさかったりして、あまり自分から話さないかもしれない。

だとすると、言わないだけで日常にたすけあいがたくさん潜んでいる。
みんなはどんなたすけあいをしているのだろう。
誰かのたすけあいを知れば、私のたすけあいの世界もきっと広がるはず。

そこで今回は、渋谷の街を行く人に聞いてみました。

「最近、誰かをたすけたこと、親切にしたことはありますか?」

「こんな小さなことでもいいの?」

駅の改札前で出会ったのは、男女6人組の中学生グループ。
「これから校外学習なんです」とはにかみながら教えてくれた女の子へ、唐突かもしれないけれど、訊ねてみました。

「たすけあいについて訊いてまわっているのですが、最近、人に親切にしたエピソードはありますか?」
「友達に習字道具を貸してあげました。って、こんな小さなことでも大丈夫ですか……?」
「もちろん!」

質問を投げかけてみて気づいたこと。それは、「たすけあい」という言葉がもつ重みとイメージは、人によって違うということです。

「たすけあい」や「親切」って、どうしても大層なことをしなければならないと思ってしまいがちじゃないでしょうか?

たとえどんなに小さく思える親切だとしても、受け取った相手にとっては大きなたすけになるかもしれない。「習字道具を貸してあげた」そのたすけあいの心が、いつまでも忘れられないあたたかな思い出となることもあるでしょう。

続いて、女の子の隣にいた男の子が「僕も、電車でおばあさんに席を譲ってあげたくらいしか思いつかないです」と教えてくれました。

「席を譲るって、結構勇気がいるのにすごいね!」
「いや、たまたまです」

断られてもいいから、「どうぞ」と一言伝えてみる。年齢に関係なく、なかなかその一歩が踏み出せない人も多い中で、さらりとやってのけてしまう。彼のお話がひとえにその姿勢を学びたいと感じました。

たすけあいたい、親切にしたいその気持ちに、大小はない。

「これから湯島天神に行って、最後は浅草寺まで行きます」と出発していった中学生6人組の背中へ向けて、大切なことを教えてもらった感謝の念が絶えませんでした。

日本といえばたすけあい

次に私たちが出会ったのは、はるばるドイツからやってきたというテレビクルーの面々。

ひと撫でするとしっぽがうねうねと動く、毛並みの柔らかい不思議なロボットを手に、なんとインタビューを申し込まれました。

「実は、私たちもインタビューに応じてくれる方を探していて……」

人とロボットの関係性についてどう思うかを答える代わりに、私たちの質問にも答えてください! とお願いしました。

これぞ、まさにたすけあい。国境を越えたグローバルなたすけあいの実現です。

「日本に来て、どんな印象をもたれていますか?」
「日本人はみんな親切で、たすけられてばかりだよ。日本に到着して早々に財布を置き忘れてしまったんだけど、交番へ問い合わせたらすぐに見つかったんだ! 奇跡だね」

日本でインタビューを続けて、ちょうど最終日を迎えたというドイツの皆さん。日本や日本人に対するイメージはますます良くなったと、満面の笑みで語ってくれました。

実はこの日、朝から晩まで冷たい雨が降り続き、かじかむ手と白い息に阻まれてなかなかインタビューが捗らなかった背景があります。

そんな中で共に快くインタビューをしあえたこと。「たすけあい」のテーマに合わせてまさにたすけあうことができた奇跡を目の当たりにした心地がしました。

余裕がないのはお互い様だから

続いて、渋谷スクランブル交差点で待ち合わせ中の男性。

「たすけあいと聞いても、あんまり大げさなことはしてないんですが……」

と前置きした上で、「駅や街角、コンビニなど、募金箱を見つけたら少量でも募金するようにしています」と教えてくれました。

十分、「大げさなことだ」と思った私たち。
たとえ数円、数十円だとしても、日常的に見ず知らずの誰かを思う瞬間がたくさんあるって素晴らしい。

「すごいですね!自分に余裕がないと、なかなか募金ってできないものじゃないですか?」
「余裕がないのは、自分に限らず、お互い様ですからね」

お話を聞きながら思いました。
どんなに些細で小さな親切だと思えても、それを受け取った人にとってはかけがえのないものであるはず。

私たちは、たすけあいそのものを、少し大きく捉えすぎているのかもしれません。

「せめてものたすけになれば」お釣りをもらわずに購入したたこ焼き

駅の案内板前で、何やら場所をお探しのご夫婦にも会いました。
なんと、佐賀県から新婚旅行で東京に来たというお二人。

▲奥様は恥ずかしいとのことで、旦那様お一人でパチリ。

佐賀県は以前、豪雨で甚大な被害を受けた地域のひとつです。
現地のたこ焼き屋さんで買い物をした時に、「せめてものたすけになれば」との思いで、お釣りをもらわずにたこ焼きを購入されたとか。

「もう何年も前の話だし、ちょっとしたことなんですけどね」と奥様。

一人一人ができることは、限られているのかもしれません。
それでも、たこ焼き屋さんのオーナーにとっては、忘れられない出来事になったのではないでしょうか。

台風による被害、一人で不安な夜に

「この前の台風で、家が浸水してしまって……」と教えてくれたのは、一人の若い女性。

現在は親戚のお家で生活されているそうですが、元のお家はとても住める状態ではなくなってしまい、泣く泣く引き払ったそう。

浸水なんて経験は初めてで、不安な夜を過ごす中、アルバイト先の上司たち数人の仲間がたすけに来てくれて、心身ともにたすかった心地がしたのだとか。

「一人で不安な中、とても心強かったでしょうね」
「心底たすかりました! これ以上ありがたいことはなかったです」

当時の記憶がいまだ色濃く残っているのが伝わってきました。
台風の怖さ、馴染みのある家に住めなくなってしまう辛さ……一人では抱えきれないものでも、共有してくれる誰かがいてくれれば、その荷物は軽くなるかもしれません。

「みなさんも、寒い中大変ですね。頑張ってください!」

思わぬ熱いエールをいただき、心がじんわりあたたまるのを感じました。

*****

「たすけあい」と聞くと、ボランティアをしたり、多額の寄付をしたり、大それたことをしなければならないイメージはないでしょうか?

1円の募金でもいい。
席を譲ってあげるため「どうぞ」と一声かけるだけでもいい。
道案内に応えてあげるだけでもいい。

お話を伺った人が口々に言っていた「大したことではない」。その言葉を聞くたび、そんなことない。十分たすけられている人がいるはず。と強く思いました。

日常の中に溶け込んだたすけあい。
改めて、みなさんにお訊きします。

あなたにとっての「たすけあい」とは、なんですか?

(写真:くりたまき)