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作文の部 課題 新しく見つけたこと・気づいたこと
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総評

1本の草と、草むら

作家・子どもの本の専門店クレヨンハウス主宰

落合 恵子

落合恵子さんのプロフィール写真
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 最初におことわりをしておきます。
小学生といっても、1年生と6年生では具体的な学校生活は大きく違いますし、重ねてきた体験も経験も違っているでしょう。もちろん、感じ方にも、考え方、行動にも違いがあきらかにあるはずです。それらは単に年齢による違いというよりも、それぞれ、ひとりひとりの「あなた」の、個性であるとわたしは考えています。
 個性を大事にと言いながら、一方でみんなとおなじを求める社会において、わたしたちは「違いから学ぶ」こともたくさんあると思います。それぞれのかたの作品が、ほんとうにひとりひとり違うように。だからこそ素晴らしいように、です。
 この「審査を終えて」も、年齢はもとよりそれぞれの違いをもった「あなた」がた、どの年代に合わせて書いたらいいのか、正直、迷います。それでお願いがあります。難しい言葉やわかりにくいところなどは、友だちと話し合ってください。ああだこうだと、わいわいがやがや話し合うことも学校という空間で学べるテーマだと思います。
 友だち同士で話し合ってもわからない場合は、先生や保護者のかたなど、あなたの近くにいる大人とも話し合ってください。


鶴岡千代子さんが書かれた詩、『雑草のうた』という作品があります。

せっかく 花を さかせても
せっかく 葉っぱを ひろげても
ふりむいていく 人はない
それでも 平気さ みんなして
むんむん草むら つくってく

 そんな言葉で始まる作品です。この詩の中の「草むら」を、教室や学校と言いかえることもできるかもしれません。

「それでも 平気さ みんなして
むんむん草むらつくってく」

 草むらは1本の草がたくさん集まってできるものです。同時に1本1本の草が根を張り、葉を広げてちゃんと立っていてこそ、草むらはできあがります。学校もまたそういう空間(場)であると、それぞれの作品を読みながら、考えました。ところで……。ウクライナの子どもたちは、どうしているでしょう。幼い草が踏まれない社会を作っていきたいと思います。同時に道端の草にも名前があることも学びたいですね。
 書き続けてください。書くことを通して、わたしたちは言葉と考えることを、実行することと結びつけるのですから。
 受賞をされた「あなた」、おめでとうございます。
 同時に、おしくも受賞されなかった「友だち」にも「むんむん草むら」を作っていこうよ、と声をかけてください。ひとりでしゃがみこむところが、みんなが集まったところが、そのまま、あなたの「学校」にもなるのですから。