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総評

作品を愛でる

特定非営利活動法人 市民の芸術活動推進委員会 理事長

鈴石 弘之

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 関東の各地で既に優秀だと認められ、金賞を受賞した作品が、新宿四谷CCAAアートプラザの図工室に集まりました。昨年は、コロナ禍のためコンピュータ上のデータ画面での審査でしたが、今回は、直接作品と出会い、じっくりと作品と対面することができました。本物の作品の肌理(きめ)や色合いがビンビンと響き合って、図工室の机はにぎやかな作品の声が聞こえてくるようで、楽しく審査をすることができました。
 今回も残念ながら、中央表彰式が開催できず、表現してくれたみんなの顔を見られないのがとても残念です。
 今回の作品を概観した印象では、一版多色や彫り進み、手彩色などの色彩豊かな作品と、従来型の木版画や紙凹版、そして紙凸版がおよそ半々でした。モノクロの作品が復活したのかなとも思いますが、次年度以降の傾向を見極めることが必要だと思います。

 次に作品群をつまみ出してみましょう。今回の特色は生きものが多数を占めていたことです。中央コンクール入賞作品の中では、馬を主人公にした作品が2点ありました。いずれも東京からの出品ですから、夏休みなどでの経験をもとにしたのだと推測します。ハシビロコウも動物園での観察によるものですね。それから男子の大好きな恐竜や昆虫、女子の好きな小鳥やクラゲがありました。また植物は同じく女子が描いたバラやヒガンバナ、そしてアヤメ。
 これらを比較検討すると、男女の特色や好みの差があるように思えます。

 人物ではいずれも動きのある表現が紙凹版や木版で表現されていました。動きなどはモノクロでの表現がふさわしいとも言えます。

 最後になりますが、版画の表現の特色はなんといっても彫ったり切ったりする道具が重要な役割を担っています。そして摺りとるバレンやプレス機も道具です。これらの道具を駆使する技がさらに重要な役割を担っています。そのために費やすたっぷりとした時間も必要です。
そしてそれを支える教師の指導力もまた問われることになるでしょう。