#今できるたすけあい
コラム
私は今起きている変化を楽しむ人になりたい
※この記事は2020年6月13日に執筆したものです。
私はホテルが好きだ。
私の趣味は「ホテルに泊まる」ことである。観光旅行も好きだが、最近は泊まりたいホテルのために、わざわざ旅行することの方が多い。
私にとってホテルは建築、インテリア、食、文化、歴史、サービスを複合的に体験できるところであり、その体験は私の価値観を度々アップデートしてくれる。
日常の延長で、非日常を味わえる。そんなホテルが私は好きだ。ここ数年で“私のため”と思える体験のある「目的地となるホテル」が本当に増えたと思う。
日本には過去3回、ホテルブームがあった。第1次ホテルブームは、1964年の東京オリンピックがきっかけだった。戦後焼け野原だった日本が、外国からのお客さまを受け入れるためには、客室数が必要だった。
第2次ホテルブームは1970年の大阪万博以降、さらに大型のホテルが必要になったから。
第3次ホテルブームは1980年代。高度経済成長で、企業の福利厚生の社員旅行やレジャーブームの追い風によって起きた。クリスマスの宿泊予約は1年以上前からしないと部屋が取れなかったのもこの頃である。
その後、日本は長い不況のトンネルに突入した。1990年から2020年は大量生産大量消費の時代が終わりを告げ、経済は縮小した。その中で1991年生まれの私を含む、今までにない価値観の世代がうまれた。
私たちは競争を好まない。モノが溢れた社会を生き、トレンドに執着しない。不景気しか知らないから、ラグジュアリーは特段好まない。一人一人のニーズに合わせたソーシャルグッドなサービスを好み、つくる世代だ。
そして現在。
この30年を経て、ホテル業界は「十分なサービスを受けて泊まる部屋」から「特別な体験のできる施設」へと移り変わり、新世代の私たちが“私のため”を感じる多様な空間とサービスを提供するようになってきた。
友人と時間を共有するロビーは充実し、寝るだけの部屋はミニマムなつくりのホテルが増えた。それに加え、泊まる以上の体験が得られる場所となった。
例えば、レコードという古くて新しい価値観に出会うことができ、若者に選ばれるホテル。グランピング体験ができて優雅な朝ごはんを食べられるホテル。ラグジュアリーさではなく、理想の住まいのようなインテリア空間を体感するホテル。商店街の中で、まるでお店かのように地域に溶け込んでいるホテル。
令和は、今までになかった世界観を持つホテルが咲き乱れている。2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博の特需もあり、平成の終わりから令和にかけてホテルの開業ラッシュが続いていた。
第4次ホテルブームを迎えたと言ってよかったはずだ。新型コロナウイルスの感染拡大さえなければ。
緊急事態宣言を受けて、多くの人が家にいた。ホテルや旅館は自粛を強いられた。緊急事態宣言が解除されたといえど、まだ客足はほとんど回復していない。多くのホテルや旅館が苦しんでいる現状だ。
「応援したい。けどできない。」
ホテル好きとして、少しでも応援したい。今こそ遊びに行きたい。けれど、自身の感染と感染拡大のリスクを鑑みると、遠くに出かけることは憚られるし、不特定多数の人が集まる場所に行くこともできない。
私は自粛期間中、好きなホテルの話ができずに、悶々としながら過ごしていた。そんなある日、ふとTwitterを見ると「今ではなく、未来の『宿泊券』を買える予約サービスが立ち上がった」という情報がタイムラインを流れてきた。
それは、私でもホテルの未来を応援できるサービスだった。時代に合わせたサービスを瞬く間に作り上げた躍動的なリリースに感動した。しかもそれを大手IT企業ではなく、ホテルを経営している会社がつくったそうだ。なによりも、私が心から応援できることがとても嬉しかった。
5月中旬には「ホテル業における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」も敷かれた。
ZOOMを駆使してお客さんを新たに開拓しようと工夫する宿を「オンライン宿泊が人気」と謳うニュースも読んだ。
アメニティやグッズが買えるオンラインショップを始めたホテルもある。
日本で有数のホテル会社の社長がメディアに出て、ホテル業界が舵を取るべき方向性を示していた。
ホテル業界もこのコロナ禍の社会情勢とともに変化し、進化し続けてきた。
そうだ。いつの時代も、ホテルは社会と生活者のニーズを敏感に感じ取って、変わっていた。
私はなぜ変わらないと思っていたのだろう。人と会えない時代のニーズを汲みながら第4次ホテルブームを迎えている。
だとしたら、私だって「何もできない」から変わることができる。
小さなことでいえば、感染拡大を防ぐために手洗いうがいマスクを毎日きちんとして、収束するための行動をしっかり取り続けること。
ホテルのことでいえば、今はまだ行けなくても、未来に使える宿泊券を買ったり、オンラインショップでグッズを買ったりして応援できる。
私が勝手に立ち止まっていただけだった。
今わたしにできること。
例えば、友人たちにSNSを通じてオススメのホテルを教えることや、これから行きたいホテルをレコメンドしていくことだろう。
友人にホテルをおすすめする、いわゆるクチコミとは、一つ一つはちいさなちいさなことだ。でも積み重ねていったら、紹介された友人が、そのホテルの未来の宿泊客になってくれるかもしれない。
ホテルの信用と未来の宿泊客の架け橋となる役割を担う。
私はコロナの影響で、今起きている変化を楽しむ人になりたい。
今まで泊ったホテルの紹介を、noteに書いたり、SNSで発信したりすること。ホテルをホテルとしてではなく、併設のカフェを中心に紹介すること。近郊の三密を回避して遊びに行けるホテルの応援をすること。
私ができることは、寄付金を集めることではない。不急だけれども、私にとっては必要な「旅の目的地となるホテル」の魅力を伝えることなのだろう。
コロナ禍で私たちの生活様式が変わっていく。きっとホテル業界だけではない。どの業界も時代に合わせて変化している。彼らが提供してくれる変化を最大限楽しもうと享受することが、私にできることなのではないだろうか。
それこそが、私たちに今できるたすけあいなのだと思う。
(写真:さかかな 編集:はつこ)
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