#今できるたすけあい
コラム
青山ブックセンターは、いつもたすけてもらってばかりです。
※この記事は2020年6月9日に執筆したものです。
青山ブックセンター本店、店長の山下です。
青山ブックセンターは、いつもたすけてもらってばかりです。
僕の入社前にも2度閉店し、その都度、手を差し伸べられる形で復活し、現在に至っています。
今回、新型コロナウイルスの影響が出だしたときも、たすけてもらいました。
当店のために、たくさんの著者が限定の購入特典やセット販売等で協力してくださり、出版社の方々が取引条件の相談やSNS等でオンラインストアの開始を周知してくださったのです。お客さんの来店者数は、もちろん激減したのですが、高い購入率とまとめ買いの多さに本当にたすけられました。感謝してもしきれません。
日々、どう営業していくか、売上のことを考えるので一杯一杯でした。自分たちのことしか考えられていないのではないか。お客さんや従業員のリスクを考えると、うしろめたい気持ちがずっとついてまわりました。
そんな中、店頭でのお客さんからのお声がけやオンラインストアでの購入時に寄せられたコメント、個人的に連絡をくれた友人たちのメッセージが、本当に心に沁みました。悩みながら、うしろめたさを抱えながら、進んでいくしかないと思えるようになりました。切実に本を求めている人、切実に本を届けたい人のために、応えていくしかない、と。
当店のような中規模の書店の経営は何かと厳しいです。そのため、来店動機のひとつの大きな柱として、多くのトークイベント開催に努めてきました。しかし現在はオンライン開催に切り替えています。オンラインならではの良い点もありますが、やはりお店に来てもらえないことによる影響は大きいです。
現在は新型コロナウイルスの影響を受けていますが、今後、別のウイルスなどの影響を受ける可能性もあります。これからどう柱を作っていくかは、大きな課題のままです。それでも変わらないのは、本を売ること、届けることをあきらめたくないという想いです。
緊急事態宣言が発令された頃、Amazonでは生活用品が優先され、書籍は品切れの状態が多くなっていました。それを見て、いち書店の立場ですが、本の流通、届け方をもっともっと考えていかないと、と改めて思いました。
日本の書籍の流通システムは、雑誌の配送に頼る形で編み出されたシステムです。良いところはありますが、雑誌の売上が落ち、休刊や廃刊が増え、書店の数が減っているにも関わらず、目立った変更点はありません。
今後、何かしらの影響で、出版社と書店をつなぐ取次会社の物流に滞りが起きる可能性もあります。事実、今回のコロナの影響は雑誌や書籍の作成自体にも及び、多くのタイトルの発売が延期されました。たくさんの新刊をとにかく早く回転させていくやり方はもう難しいです。
結局必要なことは、コロナ以前からインタビューで話してきたことや考えてきたことと大きく変わらないと、自分でも思います。それでも、コロナの影響を受け、悩みながら考え続ける過程を経て、改めて至った考えでもあります。見えている景色は以前とは少し異なるのです。
誰もが気軽に立ち寄ることができて、無料で立ち読みもできる書店。古本屋も含めて、行き場がなかったときに、どれだけたすけられたかわかりません。こんなに知らない世界があるのかと絶望しながらも、こんなに知らない世界が広がっているのかと、気持ちが昂った場所が書店でした。
あそこに行けば何かあるという場、さらに偶然の出会いの場として、無意識を意識化してもらえる場としての、書店でありたいです。
棚は書店から一方的に押し付けるものではなく、お客さんとの対話や共話で精度が高まっていきます。対話や共話を続けるためにも、書店が存在し続ける方法を探り続けていきます。
これからも当店が存在し続けることが、たすけて頂いた皆さんへの最大の恩返しになり、まだ出会っていない誰かのたすけの場になると信じています。
(写真:bitterfly/iStock 編集:はつこ)
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