#今できるたすけあい
コラム
わたしたちは、一人で生きていく必要はないことに、気づくことができた
※この記事は2020年6月5日に執筆したものです。
わたしはcotreeというオンラインカウンセリングの会社を経営しています。
コロナ前までは「オンラインでカウンセリングは難しい」と感じていたカウンセラーさんも、ユーザーさんも、すっかりオンラインで話すことに慣れてしまいました。「意外とオンラインでもいけるね」とわかり、コロナ前と比較すると、本当にたくさんの人がオンラインカウンセリングを利用してくださるようになりました。
これまで5年以上サービスを運営していて、「そうはいっても業界の構造上、難しい」と前提としていたあれこれが、一瞬で崩れ去ったような気がしています。「変わらない構造」だと思えていたものって一体なんだったのだろう、と思うのです。
コロナによって社会が前提としていた多くのことが崩れ去ったのは、社会にとっては幸運な出来事でもありました。
「仕事はオフィスでやるもの」「人間関係は顔を合わせないとダメなもの」「共働きは子どもと一緒にいられないもの」「未来は現在の延長線上にあるもの」。
あらゆる常識が崩れ去り、急速に世界が変わりつつある今、全ての前提を疑うことができる。
一方でこの急速な変化は、個人単位で見ると、メンタルヘルスの不調を引き起こす要因にもなります。
cotreeでは、個人や企業さんが、ユーザーさんや一般の方、医療従事者の皆さまにカウンセリングをプレゼントできる仕組み*をはじめました。「困っている方に、メンタルサポートを受けてもらいたい」という気持ちを持ったたくさんの支援者さんのおかげで、現在多くの人が無料でカウンセリングを受けられるようになっています。
この仕組みをはじめてから「○○さんのおかげで、カウンセリングを使うことができました。救われました」という声がSNSなどで届くようになりました。この体験は「自分で支払ってカウンセリングを受ける」という体験よりもずっと尊くて、感謝の連鎖として未来につながっていく希望に満ちています。
「○○さんのおかげで、こんなことができた」
そうやって「誰かのおかげ」が可視化されて、たくさんの感謝が飛び交う社会を想像したら、少し明るい気持ちになれる気がしています。
今まで私たちは少なからず「人にたすけを求めるなんて恥ずかしい」「迷惑をかけてはいけない」など「たすけてもらう」ことへの抵抗感を持っていました。
でも「これはもう自分たちではどうしようもない」という状況になってきて、ようやく「たすけて」と声をあげることができる人が増えているように思います。
たすける方も「人の困りごとに手を出すのはおせっかいかもしれない」「余計なお世話かもしれない」など「誰かに手を差し伸べる」ことへの抵抗感を持っていました。
でも「こんなにも大変な時期なのだから、誰か一人でも手を差し伸べた方がいいはず」という確信とともに、多くの人が「何かできることをやらせてください」と手をあげている。
「たすけを求めれば、手が差し伸べられる」「手を差し伸べれば、誰かの力になる」。コロナを経て、そんな体験をした人がとてもたくさん生まれている。「たすけられた経験」は「たすけたいという意思」へと循環しています。
こんな出来事に触れるにつけ、コロナはわたしたちの「一人で生きていける」という前提を崩し、「たすけあって生きていく」ことへの扉を、開いてくれたのだとも思うのです。
*cotree『新型コロナ
メンタルサポートプログラム』
https://cotree.co/news/covid19_mentalsupportprogram/
(写真:urbancow/iStock 編集:はつこ)
櫻本真理
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