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コラム
夫婦で在宅勤務のいま、“社会”と“同僚”を担い合っている
※この記事は2020年4月11日に執筆したものです。
私が働いている会社では、2月下旬から在宅勤務が推奨され、3月下旬には完全に切り替わった。夫が勤めている会社も同じ時期に在宅勤務になり、私たちは家でふたり、仕事をすることとなった。
夫には持病がある。ニュースで注意すべきとよくいわれる、「基礎疾患のある人」だ。私たちは早い段階から外食を断り、いつも以上に清潔を保ち、外出を避けてきた。けれど、万全の予防に努めていてもこの事態はおそろしく、毎日情報を得てはぴりりと不安がっている。
夫がつぶやいた、「在宅勤務中、妻に言われた一言」
仕事中に難しい顔をしてしまいがちな私に、夫はよく話しかけてくる。おしゃべりな人なのだ。悩んでいそうだったらすぐに気づいてくれるし、不満がっていたら何があったのと言ってくれる。そんな夫がX(旧Twitter)に書いた暮らしのワンシーンは、瞬く間にタイムラインに拡がった。
夫婦でリモートワーク中、気軽にお妻に話しかけたら「あのさ、職場ならまずちょっといいですかって聞くよね?」と言われたんですけどお妻の切り替え力と集中力すごくない?自宅だぜ?
— ゆうせい / 永井勇成 (@wm_yousay) April 8, 2020
誤解がないように書いておくと、私たちはこのことで喧嘩をしていない。「職場ならまずちょっといいですかって聞くよね?」の一言に、むしろ夫は、げらげら笑った。そうか、今ここは職場か、と。結婚して5年目、かつて私たちは同じ会社で働く同僚だったけれど、ふたりきりの“職場“は初めてだ。
自宅と職場の境界線があいまいになったいま
いつものダイニングテーブルで働き、互いに普段出さない表情や声色をとくと見せ合う日々。こうなると、昼間に必要なのはパートナーとしてではなく、「同僚に向けた配慮」だった。ささやかな愚痴や不安を言い合い、昼食に誘って気晴らしの雑談をし、打ち合わせの時間がかぶればどちらかが席を離れる。その合間合間に、「皿洗いはどちらがするのか」「いつ洗濯機を回すのか」といった、暮らしのタスクも振り分け合う。ずうっと“職場“な雰囲気だと苦しくなるから、時々ハグをする。あいまいな中で、私たちは心地よく過ごすために優しくし合っている。
数週間、対面で話す相手はほとんど夫だけ。私にとって、唯一肌感のある“社会“だ。プライベートかつソーシャルな部分も担い合うとなると、荷が重い。けれど、そうするしかない状況でもある。だから、たくさん聞いて、たくさん話して、解消していく。
「なにを不安に思うか」。宅配で届いた荷物に不安を覚えれば、お互いにウェットティッシュで拭き合う。
「なにが足りないと感じるか」。日光が足りないと感じれば、予定を合わせて日の当たる時間に少し散歩をする。
「なにをしていると気が紛れるか」。ふたりで往年の大河ドラマを見ていると、一日があっという間に終わる。
24時間体制で回り続ける、「ふたりきりの職場、ふたりきりの自宅」。息苦しさを感じる瞬間もある。でも、健やかにこの危機を乗り越えるためには、この道しかない。さまざまな役割を担い合っているという自覚が、私たちを優しくさせてくれている。
(写真:藤里一郎 X(旧Twitter)→@shameraman 編集:はつこ)
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