#今できるたすけあい
コラム

「コロナ休校」で小学校教員がかけられた意外な言葉

※この記事は2020年4月10日に執筆したものです。

新型コロナウイルスの影響で、我が家でも長男の学校が休校になりました。
もちろん僕ら親は変化に対応する必要があったんですが、学校の先生たちも大変だよな……と、浮かんだのは弟の顔。実は僕の弟、小学校の先生なんです。そこで、今回の休校について話を聞いてみました。

ー今回の臨時休校で学校現場は大きな混乱があったのではないですか?

地域や学校の規模によって状況は異なると思いますが、僕の勤務校ではそれほど大きな混乱はありませんでした。事前に「休校が決定した場合、その期間分の課題を準備すること」や「児童の健康状態についてどのように確認するか」などを決めていたからです。それでも、木曜の夕方に発表だったので、その日は夜中までプリント印刷に追われましたが(笑)。

ー3月の休校期間、先生たちはどのように過ごしていたのですか?

例えば、小学校では「預かり自習」を行なっていたので、自習のための準備や自習監督をしていました。卒業式準備については児童と一緒にはできないので、教員で卒業式の装飾を行いました。

ー卒業式ができない学校もありました。

そうですね。僕は当時6学年の担任だったので、卒業式ができたのは本当にありがたいことでした。校長からは「子どもたちの命を最優先にする。その上で最大限の教育活動を行う」「卒業式当日だけは、自分たちが世界の中心なんだ、と6年生に思ってもらえるような1日にしよう」と言われました。そんな卒業式になるように努めました。

ー休校や、卒業式を挙行することに対しての保護者の反応はどうでしたか?

休校中に、各家庭へ児童の健康状態を確認する電話連絡をしました。その際に保護者の方々から「学校での再会が待ち遠しい」「先生方、学校のありがたみを感じる」との言葉をかけられ、驚いたことが印象に残っています。それと同時に「卒業式を絶対に行なってほしい」「卒業式を楽しみにしている」という声が多く届き、この休校を乗り越えようと決意しました。

卒業式は、在校生からビデオメッセージを送ったり、修学旅行での思い出の曲を見送り時に流したりするなど、感染症対策を行いながら新しい試みも行いました。時間をかなり短縮した式にはなりましたが、マスク姿の児童と保護者の表情は晴れやかでした。

ー子どもたちや保護者、また先生たち自身の「コロナ疲れ」についてはどう感じていますか?

新年度が始まり、新しく担当する児童は全員マスク姿なので、顔と名前と声を一致させるのが大変です。「今◯◯さんが言った……」と僕が言うと、「今の言葉は△△さんが言いました」と訂正されることもしばしばでした(笑)。また、グループ学習等は禁止されており、お互いに一定の距離をとっての授業なので、仕方のないことですが指導が難しい状況です。

子どもたちは「また休校かよ〜」「家にずっといるとか退屈だ」と嘆いていました。
保護者については「子どもを学校に行かせてあげたい思い」と「子どもの命を守りたい思い」の間で辛い気持ちでいると思います。僕も2人の息子がいるので、学校や幼稚園に行きたいと言われると「いまはお休みするのが大事なんだよ」と諭しながら、なんとも言えない申し訳なさが残ります。

ー3月から4月にかけて年度をまたぐ休校となりました。そんな中で教員として「たすけあい」を感じることはありますか?

まずは、教員同士のたすけあいがあります。4月の休校では、幼稚園や保育園も休園や登園自粛願いが出ているので、子育てしている教員にとっては大きな問題です。その中で、学校における預かり自習等の業務を分担し、若手教員とベテラン教員が子育て世代の教員をサポートするという体制が整っています。

新しく出会った児童に休校のことを伝えると、寂しそうな表情をしたり嘆いたりしていましたが、「休校しちゃう前に鬼ごっこをしましょう!」と切り替えていました。やはり子どもたちの笑顔には救われる思いがします(しかし感染症予防のため、背中タッチ限定でマスク着用での鬼ごっこでした。マスク着用鬼ごっこは大人にとって苦行です)。

市町村によっては、地域の方々のご意見によって入学式が中止になった学校もあるそうですが、それも一つの答えだと思います。先ほどの校長の言葉でもあった通り「子どもたちの命を最優先にする。その上で最大限の教育活動を行う」のが我々の仕事です。教員の思いと保護者の思いを合わせていく過程は大切なことだと思います。

この3月の卒業生の保護者の方から「本日無事に中学校の入学式が行えました。卒業式ではお世話になりました」と電話をいただきました。お互いの立場を思い、子どもたちの教育を考えることが「たすけあい」なのではないでしょうか。

ー一連の新型コロナウイルス感染症に係るできごとで、教員として感じることはありますか?

まだ収束が見えない問題ではありますが、今回の件から学ぶことや、子どもたちに伝えるべきことは多くあると思います。
様々なデマや買い占め騒動からは情報リテラシーを、また法律改正や緊急事態宣言からは国の政治の仕組みを、より必要感をもって伝えられるでしょう。

また、今まで当たり前だと感じていたことを見つめ直す機会にもなります。物流が止まってしまったら、医療が崩壊したら、学校が機能停止したら、保護者が隔離されてしまったら……。こういった問いかけから、子どもたちに「もしかしたら起こりうるかもしれない」という危機感と、「一つ一つのことにありがとうと言いたい」という感謝の念を考えてもらえると思います。
人と人は、法律や要請を超え、たすけあって生きている。このことを、実感をもって学べる機会だと捉えていきたいです。

ー最後に「今だからできるたすけあい」について聞かせてください。

「感謝の気持ちを言葉にして伝える」ことだと思います。自粛生活が辛くても、普段と違う仕事内容を強いられても「あのときはありがとうございました」と言われるだけで救われる。それに、教師として1年頑張ろうと思えます。
なので、僕は積極的に感謝の気持ちを言葉にして伝えています。荷物を届けてくれた配達員さんに、看護士として働いている妹に、共に体育倉庫を掃除してくれる同僚に。僕の言葉が誰かの心のたすけになることを願っています。

(写真:藤里一郎 X(旧Twitter)→@shameraman 編集:はつこ)

5歳

36歳ライター、可愛い嫁と、息子が2人。X(旧Twitter)で家族について呟いています。
X(旧Twitter)→@meer_kato

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