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今月の「生きるヒント」

住まいに愛情、暮らしに愛情

一生のうち、住まう家は限られています。長く過ごすところだから、できるだけ居心地よく、自分らしく保ちたい。常に最高のモノに囲まれて生活したり、時間をかけてお手入れしたりは無理でも、それぞれのペースで、日々の豊かさを感じられる暮らしがしたい。こころも充実、エコで豊かな「生きるヒント」をお届けします。

第11回

光の効果。シーンに合わせた明かりと暮らす。

日没と共に眠る生活を送る人が稀な時代、私たちは、部屋を明るくする技術を当たり前に利用しています。照明はどんどん進化、光源の主流は消費エネルギーが少なく長持ちするLEDに移行されてきています。LEDの登場で、照明はますます機能的になりました。一方、ページ後半で取り上げたろうそくも、対極の魅力を見直してもらいたい別物の「明かり」です。

進化するほど自然に近づく照明技術

教えてくれた人

コイズミ照明

竹下佳見さん

コイズミ照明は、大阪に本社を置く歴史ある会社で、照明器具の企画・開発を事業の柱にしています。九州出身の竹下さんは、入社後すぐに東京のショールームに配属されたそう。肩書きはライティングコンサルタント。なめらかな口調で住宅や店舗向けの提案をされるお姿は華麗でした…!

コイズミ照明公式サイト
お手本は太陽の光。朝は白色、夕方からは暖色を

進化する照明、竹下さんに最近のトレンドをお聞きしてみると、「数年前からの傾向として、一室一灯から一室多灯に、人気が移ってきました」と。それから、光源がLEDに切り替わってきたことで、コンパクトでスタイリッシュなデザインと、光色から明るさ、角度まで切り替えられる機能性を併せ持つ器具が続々登場しているそうです。そうした機能を使い分けることで「空間を照らすだけではなく、どう見せるか。天井から下を照らすのと、天井を明るくするのとでは、お部屋の広さの印象さえ変わってきます。素材感のある壁であれば壁面を照らしたり、時間帯によって光の色を変えたりすれば、同じスペースでも雰囲気の変化を楽しむことができます」と竹下さん。そして、「時間帯によって、朝は白色、夕方からは暖色に切り替えるのが理想です。これは自然の、太陽の光に倣ったもので、昼白色はやる気を起こさせ、暖色系の電球色はくつろぎをもたらすといわれています。太陽の光を基準にするのは、私たち照明業界の人間の、基本の「き」なんですよ」。

写真:白色と暖色で、がらりと雰囲気が異なる。

手軽なスタンドライトで一室多灯はじめ

太陽の光を基準にというのは知りませんでした!照明の切り替えで、気分も切り替える…。確かに、自然に近いと体へのやさしさも理にかなっている気がしますし、試してみたいですね。とはいえ、現在の住まいで使っている照明を総入れ替え、というのは多くの場合現実的ではありません。そこで竹下さんに、取り入れやすさ重視でお尋ねすると、「おすすめはスタンドライトです。一口にスタンドライトと言っても、さまざまな大きさや形状がありますので、お好みや目的に合ったものを選んでください。暖色系の光のスタンドライトを、お部屋の隅や棚、観葉植物の後ろに置くだけでも雰囲気が良くなります。意外な使い方では、テレビの裏側に。テレビを見る目が疲れにくくなるんですよ」とのこと。なるほど、スタンドライトであれば、設置や移動に悩まなくていいですね。お値段も数千円からあります。

写真:テレビの裏側に小型のスタンドライトを2つ。立体的な壁面も浮かび上がるよう。

一から考えるなら、まずは自分の生活スタイルを振り返る

これから新築やリフォームで照明も一から考える、という方には、「照明器具をデザインなどから選ぶより先にご自分の生活スタイルを振り返り、そこを入り口にされるほうが、しっくりくる住まいづくりができます」と竹下さん。人それぞれの、家族構成や生活のリズムによって提案が異なるのだそうです。言われてみれば、大人だけの暮らしと子育て中の暮らしは違うし、さらには子どもの成長に応じた生活もあります。朝型か夜型か、家で過ごす時間はどれくらいかにも左右されそうです。照明もそれに応じて…納得です。「設計やインテリアにこだわる方は多いのですが、照明は、明確にこうだというイメージをお持ちになることが少ないのです。ですから、個々の生活スタイルをお聞きしながらご提案するようにしています」と。なるほど。ショールームでは、光の色や明るさ、角度を変えつつ説明を受け、その違いに感嘆。照明に対する認識を改める機会になりました。

写真:触らなければガラスに見える、このライトはシリコン製。東日本大震災を機に開発された。お子様やお年寄りがいるご家庭では特に、防災上すぐれた商品。

ひと言アドバイス

4万時間程度使うことができ、高寿命で知られるLED。従来の電球のように物理的に切れるわけではなく、年数を追うにつれて徐々に暗くなり、明るさが70%になったところが寿命の目安とされています。「最近暗くなってきたな」と思ったら、それかもしれません。

竹下さんより

今後は、光の色のほか、位置や明るさまで太陽の光をお手本にした照明を導入する例が増えてくると思います。時間帯に応じて調光を自動制御するシステムが普及すれば、仕事環境がもっと快適に変わりそうです。多くの現代人は、照明のみでなくパソコンでも一日中ライトを浴びていますので、ご自宅での照明にもめりはりをつけ、就寝前だけでも控えめにするなど、使い方を工夫してみてください。

「静」の時間をつくり出す、魔法のような明かり

教えてくれた人

大與(だいよ)

大西巧さん

創業100年を超える老舗和ろうそく店の四代目。現在では全国的にも珍しくなった専門店として、滋賀県高島市にて、伝統技術を継承しています。大西さん自身も職人としてものづくりに励みながら、現代になじむ和ろうそくの使い方の提案も積極的におこなっています。

大與公式サイト
ろうそくに火を灯す

ろうそくに火を灯すことは年に何回くらいあるでしょう。お仏壇で毎日、という方はそれなりにいると思います。誕生日には、という方、アロマキャンドルでリラックス、という方もきっといますね。レストランやカフェで、テーブルに置いてもらえると、ちょっと贅沢な気持ちになります。使い方によっては、私たちを非日常に誘ってくれる明かりとなるのがろうそく。災害用にストックしておくだけではもったいないので、ぜひ普段の生活に取り入れてみませんか。せっかくなので、日本伝統の“和ろうそく”で、ご提案したいと思います。…とはいえ、“和ろうそく”がどのようなものか、正確に知る人は多くないはず。お仏壇用に売られているから和ろうそく、ではありません。まずはどんなものか見てゆきましょう。

写真:和ろうそくを灯しながらのコーヒータイムは、こんな贅沢があったのか…と思わせるひととき。

今では貴重になった、日本伝統の和ろうそく

最大の特徴は、洋のキャンドルとは異なる材料にあります。本来すべて植物性で、伝統的には櫨(はぜ)という樹木の実を搾取したものが使われます。櫨のロウは、力士の髪を結うときの鬢づけ油の原料としても知られており、かつては化粧品や家具のツヤ出しなど、広い用途に使われていました。和ろうそくの需要の減少と共に、今では貴重なものとなった櫨ロウ。大西さんによると、「この原料を用いて昔ながらの製品をつくる職人は、全国でも十名を数えるほど」とのこと。一般に流通しているろうそくのほとんどは石油由来。和ろうそくは大量生産品とはかけ離れた、職人による手づくりの製品ですから、当然値段はそれらより高めです。ただその違いは、火を灯すとはっきりと感じられます。まず、炎がしっかりと大きめです。芯が太くて火が消えづらく、加えて、ロウもあまり垂れてきません。匂いはほとんどありません。「和ろうそくは環境にやさしく、素晴らしい製品。日本伝統の手仕事を残す意味でも、良さを知ってもらいたいですし、僕たちも、現代の生活に取り入れてもらえるような使い方を提案してゆきたいです」と、大西さんは熱を込めます。

写真:櫨の和ろうそくは、熟練の職人の手によって丁寧につくられる。

デジタルから離れて、炎のゆらぎに心をゆだねてみる

どんなろうそくであれ、火の取り扱いに注意が必要ではありますが、それさえしっかりすれば、とても手軽に楽しめます。1本でも2本でも、火を灯し、照明を消してみると、とたんに訪れる「静」の時間に気分が切り替わります。炎のゆらぎを眺めながら、ひとりの時間を過ごすも良し、家族や仲間と、1本の火が絶えるまで、囲みながらお話しても良し。「不思議と、いつもと違った考えが浮かんだり、いつもと違った会話になる」と話す人もいるそうですが、ろうそくの魔法でしょうか。たまにデジタルから離れて、そんなひとときを過ごせば、心身の休息になりますね。そのあとはいつもより、ぐっすりと眠れそうです。

写真:大西さんが贈り物にもできるよう商品開発したシリーズ。「春」「夏」「秋」「冬」があり、米ぬかの和ろうそくに、四季をイメージした美しい色付けがされている。写真は「春」の一箱。ホワイトデーにいかがでしょう。

ひと言アドバイス

当たり前のことのようですが、可燃物は近くに置かず、見守りながら使うのが基本です。現代の生活においては、放っておいても大丈夫なものに慣れてしまっているので、ここだけは注意しましょう。

大西さんより

自然界では、夜から朝、昼から夜の間にグラデーションがあり、いきなり明るくなったり暗くなったりはしません。一方、室内で暮らす私たちは、スイッチひとつでそれができます。夜眠る前の少しの間ろうそくに火を灯せば、ちょうど「中間」のような時間が持てて、心が落ち着きます。お風呂で使うのもオススメです。眺めながらぼーっとするのも、一日の緊張がほぐれて良いものですよ。

編集後記

最新の照明の竹下さん、伝統の和ろうそくの大西さん、いずれも共通のメッセージをお持ちだったのが印象的でした。やはり人間も、自然のリズムにかなった生活が快適なんですね。竹下さんご自身も、就寝前にろうそくを灯す習慣があるのだそうです。明るさだけにとどまらず、空間のあたたかみや開放感を演出してくれる照明の技術に感謝しながら、ときにはろうそくの、ゆらぐ小さな明かりにゆだね、立ち返るようにしたいと思いました。まさに竹下さんが実践していらっしゃることですね。