なぜ人は「買っても満たされない」のか? 快楽順応から学ぶ、幸福度を高めるお金の使い方

年収は上がったけれど、しばらく経って「もう少し稼げれば満足できる」と思うようになった経験はないでしょうか。または、ずっと欲しかった時計やバッグを買った翌月には、もう次のものが欲しくなっていたという経験も思い当たるかもしれません。

以前と比べて幸福度が増したはずなのに、気づけばまた次の何かを求めてしまう。

実はこれは、意志の弱さではなく、「快楽順応」という脳のメカニズムに依るものだという研究があります。先人が切り拓いた知恵から、お金と幸福ということについて考えてみましょう。

# Money column

#1

人間はすぐ快楽に慣れる
ランニングマシンのような現象とは?

「快楽順応」とは、「ヒトの脳は変化に反応するが、すぐに比較的一定のレベルの幸福感に戻る傾向がある」と説明する理論です。1978年、心理学者のフィリップ・ブリックマンと社会科学者のドナルド・T・キャンベルは、宝くじ当選者の幸福度が、富を得たという状況に慣れたことによって、1年後には以前とほぼ同じ水準に戻ったという衝撃的な研究結果を提示しました。

「快楽順応」はヘドニック・トレッドミルとも呼ばれます。これはヘドニック(=快楽や欲求の充足)がトレッドミル(=ランニングマシン)のように同じ場所で回り続けることをイメージした、ブリックマンとキャンベルによる造語です。

ほしい!→手に入れる!→慣れる…→もっと欲しくなる!

快楽や幸福にすぐに慣れてしまい、その現状を不満に思ってしまえば、幸福追求は止むことがない。しかしそれは、ヒトにとって必然的な現象なのです。

#2

ヘドニック・
トレッドミル現象が
高速で回転する現代

現代の消費社会は、人間の「快楽順応」という脳の仕組みをうまく利用している側面があります。ずっと欲しかったバッグを手に入れても、すぐに次の欲しいものが見つかるようにと、様々な情報が私たちのもとにやってきます。

例えば広告は、私たちの隠れた欲求やインサイトを巧みに刺激して、ニーズを作り出します。また、SNSのタイムラインではショート動画などで次々と新商品の情報が流れてきて、『あれも欲しい!』と新しい欲求がとめどなく湧いてくる構図があります。

現代は「欲しい」が生まれやすい環境

より多くの幸福、快楽への道を提案することで、現在のように経済は拡大してきました。情報との接続が密接になった現代、購買欲がかき立てられる機会はますます増えています。ランニングマシンが回転する速度は、経済成長とともにますます速くなっているのです。

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ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。年金教育家、投資教育家として執筆/講演を通じて活躍中。Web連載を月20本抱える売れっ子FPで、わかりやすさと親しみやすさ、ユニークな視点に定評がある。講演についても柔和な語り口が好評を博している。

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2026/06/18

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