こくみん共済 coop 主催の版画コンクールの中央審査に携わって以来20年を越えました。我ながらよく続けてこられたものだと思います。落合恵子さんと同道ですから毎年の表彰式での落合さんとの出会いも楽しみになっています。さて、20年を経ての感想から述べてみたいと思います。それは寄せられる作品が大きく様変わりしたことです。20年前はモノクロの木版画が殆どでした。それも生活画と呼ばれるジャンルの作品群で、お父さんやお母さんの仕事(労働)が主な主題でした。現在では殆どこのようなジャンルの作品を見つけることがレアな主題となってしまいました。生活を見つめるたっぷりとした時間が霧消したのでしょうか。あるいはゲームソフトの世界にドップリと浸ってしまっているためでしょうか。あるいは労働を伴う生活を見る機会がなくなってしまったためでしょうか。そうであれば、少々悲しい現実とも言えます。 現在寄せられる作品は殆どが色彩豊かで、技法も多様化しています。ひととき大流行だった一版多色の技法の作品はやや減少傾向のようです。そして目新しいのは版画と描画が混在した所謂ミクストメディアの技法が低学年に多く見られます。版画じゃない!なんて目くじらを立てることもないでしょう。 今回寄せられた優秀・最優秀賞の作品群を見てみましょう。 昆虫(男子1名)とかたつむり(女子1名)。この違いはよくわかるように思います。人の好みの差ですね。 魚(女子2名)とネコ(女子2名)。これも納得ですね。女の子の大好きな生きものですから。カナヘビ(男子)と恐竜(男子)。男の子の大好きな生きものトップですね。これらも人の好みの差になっています。 チョウチョ(女子1名)。昆虫の仲間ですが、ひらひらと舞う艶やかな生きものですから、女の子が選択したことに納得です。 秘密基地(男子1名)とジャングルジム(男子1名)。大木や構造物が好きなのはやっぱり男の子ですね。将来建築関係の仕事に就くかも知れません。そんな予感もします(長い間の教職生活からの推測です)。 自画像にあたるポーズする人(男子1名)と料理する本人(男子1名)。人物を主題にした2人が男の子だったのは少々意外でした。これに男女差はないはずですから、今回に限った偶然のことでしょう。 最後は狼(男子1名)。これも納得ですね。異界、不気味への興味は男子に殊に多い傾向がありますから。 このように寄せられた作品を一瞥して判明するのは、実際の体験をもとにした主題(自分で飼っているカナヘビや料理する自分)が2名で、希少だということです。それに反してイメージ(想像)を繰り広げて色や形を作り上げる作品が多数を占めていることです。これは指導者の指導方法による結果のようにも思います。そのような主題の作品を提案しているからです。 冒頭でも述べましたが、従前のような生活画のジャンルがなくなってしまい、残念な気持ちが沸いてきています。自分や家族の生きている事象を見つめてみることは大切なことのように思えて仕方がありません。指導者の方々の再考を希望します。
生活を見つめてみたい
特定非営利活動法人市民の芸術活動推進委員会 理事長
鈴石 弘之
こくみん共済 coop 主催の版画コンクールの中央審査に携わって以来20年を越えました。我ながらよく続けてこられたものだと思います。落合恵子さんと同道ですから毎年の表彰式での落合さんとの出会いも楽しみになっています。さて、20年を経ての感想から述べてみたいと思います。それは寄せられる作品が大きく様変わりしたことです。20年前はモノクロの木版画が殆どでした。それも生活画と呼ばれるジャンルの作品群で、お父さんやお母さんの仕事(労働)が主な主題でした。現在では殆どこのようなジャンルの作品を見つけることがレアな主題となってしまいました。生活を見つめるたっぷりとした時間が霧消したのでしょうか。あるいはゲームソフトの世界にドップリと浸ってしまっているためでしょうか。あるいは労働を伴う生活を見る機会がなくなってしまったためでしょうか。そうであれば、少々悲しい現実とも言えます。
現在寄せられる作品は殆どが色彩豊かで、技法も多様化しています。ひととき大流行だった一版多色の技法の作品はやや減少傾向のようです。そして目新しいのは版画と描画が混在した所謂ミクストメディアの技法が低学年に多く見られます。版画じゃない!なんて目くじらを立てることもないでしょう。
今回寄せられた優秀・最優秀賞の作品群を見てみましょう。
昆虫(男子1名)とかたつむり(女子1名)。この違いはよくわかるように思います。人の好みの差ですね。
魚(女子2名)とネコ(女子2名)。これも納得ですね。女の子の大好きな生きものですから。カナヘビ(男子)と恐竜(男子)。男の子の大好きな生きものトップですね。これらも人の好みの差になっています。
チョウチョ(女子1名)。昆虫の仲間ですが、ひらひらと舞う艶やかな生きものですから、女の子が選択したことに納得です。
秘密基地(男子1名)とジャングルジム(男子1名)。大木や構造物が好きなのはやっぱり男の子ですね。将来建築関係の仕事に就くかも知れません。そんな予感もします(長い間の教職生活からの推測です)。
自画像にあたるポーズする人(男子1名)と料理する本人(男子1名)。人物を主題にした2人が男の子だったのは少々意外でした。これに男女差はないはずですから、今回に限った偶然のことでしょう。
最後は狼(男子1名)。これも納得ですね。異界、不気味への興味は男子に殊に多い傾向がありますから。
このように寄せられた作品を一瞥して判明するのは、実際の体験をもとにした主題(自分で飼っているカナヘビや料理する自分)が2名で、希少だということです。それに反してイメージ(想像)を繰り広げて色や形を作り上げる作品が多数を占めていることです。これは指導者の指導方法による結果のようにも思います。そのような主題の作品を提案しているからです。
冒頭でも述べましたが、従前のような生活画のジャンルがなくなってしまい、残念な気持ちが沸いてきています。自分や家族の生きている事象を見つめてみることは大切なことのように思えて仕方がありません。指導者の方々の再考を希望します。