版画コンクールが50年を超えて51年目になりました。こんなに長く続いた版画コンクールはこくみん共済 coop の作品コンクールだけです。継続した取り組みに敬意を表したいと思います。その審査に携わる事ができることに私は誇りに思っています。ありがとうございます。 さて、今回の作品たちはみんな力作揃いで選ぶのに苦労しました。予め各地で一次審査が行われ、賞もいただいています。その優秀作品が集まったのですから、当然といえば当然のことでしょう。 多くの作品が色鮮やかな多色の版画でした。一版多色や彫り進め版画の特徴がよく表された作品たちでした。伝統的なモノクロの木版画もありました。木版画では手彩色の技法を取り入れた作品もありました。低学年では版で表した上に手書きで形が描かれた作品もありました。一つの方法ですから、取り入れたいものです。各地の実践を期待したいと思います。 それからもう一つの特色が、画塾からの作品が多く集まったことでした。学校からの作品が減少傾向にあることなのだとしたら、少々寂しい気がします。版画は下書きや版作り、そして摺りと作業が多くあり、時間も沢山かける必要があります。そのために多くの時間が割けない学校現場の実情も浮かび上がっているようです。 集まった作品たちをじっくり見てみましょう。は虫類の作品が多かったのには少々びっくりです。今年がヘビ年だったためでしょうか。竜、しろへび、ワニ、トカゲ、バシリスクたちです。ほとんどが男の子たちの作品でした。だいすきな生きものを主題にすることは版画制作の一番に大事にしたいことですから、それを証明したことにもなりますね。カブトムシを捕まえたのも男の子です。 一方女の子たちはうちゅうやアイドル、うさぎ、パンやと犬を表していました。これは女の子らしい主題ですね。 性についてあまり「らしい」といって強調するつもりはありませんが、今回はくっきりはっきり違いが現れていました。 もう一つの作品群はいわゆる生活画のジャンルに類するものです。生活画は古くからある実践の方法で、新しい絵の会や日本教育版画協会などが取り組んでいました。現在でもその実践は継続しているのではないでしょうか。生活画は自分が実際に体験したことを思い出してえがいているものですが、今回の作品では、トカゲを捕まえたり、カブトムシを捕まえた瞬間の感動がストップモーションとして表現されていました。主題の生きものがくっきりと表現されていましたし、捕まえた主人公の表情も見事に喜びを表していました。また、ソーラン節を踊る主人公はその仕草を真正面から表現し、実感のあるものに仕上げています。 版画は彫刻刀やカッターなどの道具を扱う技術を要するジャンルです。道具によって表現の差も生まれます。またその違いをうまく使い分ける喜びもぜひ味わってほしいものです。
こころおどること
特定非営利活動法人市民の芸術活動推進委員会 理事長
鈴石 弘之
版画コンクールが50年を超えて51年目になりました。こんなに長く続いた版画コンクールはこくみん共済 coop の作品コンクールだけです。継続した取り組みに敬意を表したいと思います。その審査に携わる事ができることに私は誇りに思っています。ありがとうございます。
さて、今回の作品たちはみんな力作揃いで選ぶのに苦労しました。予め各地で一次審査が行われ、賞もいただいています。その優秀作品が集まったのですから、当然といえば当然のことでしょう。
多くの作品が色鮮やかな多色の版画でした。一版多色や彫り進め版画の特徴がよく表された作品たちでした。伝統的なモノクロの木版画もありました。木版画では手彩色の技法を取り入れた作品もありました。低学年では版で表した上に手書きで形が描かれた作品もありました。一つの方法ですから、取り入れたいものです。各地の実践を期待したいと思います。
それからもう一つの特色が、画塾からの作品が多く集まったことでした。学校からの作品が減少傾向にあることなのだとしたら、少々寂しい気がします。版画は下書きや版作り、そして摺りと作業が多くあり、時間も沢山かける必要があります。そのために多くの時間が割けない学校現場の実情も浮かび上がっているようです。
集まった作品たちをじっくり見てみましょう。は虫類の作品が多かったのには少々びっくりです。今年がヘビ年だったためでしょうか。竜、しろへび、ワニ、トカゲ、バシリスクたちです。ほとんどが男の子たちの作品でした。だいすきな生きものを主題にすることは版画制作の一番に大事にしたいことですから、それを証明したことにもなりますね。カブトムシを捕まえたのも男の子です。
一方女の子たちはうちゅうやアイドル、うさぎ、パンやと犬を表していました。これは女の子らしい主題ですね。
性についてあまり「らしい」といって強調するつもりはありませんが、今回はくっきりはっきり違いが現れていました。
もう一つの作品群はいわゆる生活画のジャンルに類するものです。生活画は古くからある実践の方法で、新しい絵の会や日本教育版画協会などが取り組んでいました。現在でもその実践は継続しているのではないでしょうか。生活画は自分が実際に体験したことを思い出してえがいているものですが、今回の作品では、トカゲを捕まえたり、カブトムシを捕まえた瞬間の感動がストップモーションとして表現されていました。主題の生きものがくっきりと表現されていましたし、捕まえた主人公の表情も見事に喜びを表していました。また、ソーラン節を踊る主人公はその仕草を真正面から表現し、実感のあるものに仕上げています。
版画は彫刻刀やカッターなどの道具を扱う技術を要するジャンルです。道具によって表現の差も生まれます。またその違いをうまく使い分ける喜びもぜひ味わってほしいものです。