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今月の「生きるヒント」

住まいに愛情、暮らしに愛情

一生のうち、住まう家は限られています。長く過ごすところだから、できるだけ居心地よく、自分らしく保ちたい。常に最高のモノに囲まれて生活したり、時間をかけてお手入れしたりは無理でも、それぞれのペースで、日々の豊かさを感じられる暮らしがしたい。こころも充実、エコで豊かな「生きるヒント」をお届けします。

第6回

安心エネルギー。自前の電気の家で暮らす。

あって当たり前になっていた電気。東日本大震災のあと、停電や節電で感じた不自由さによって、ありがたみを痛感した人も多いと思います。再生可能エネルギーを、地域や個人で利用しようという動きが進み、また、2016年4月には電力小売りの自由化が始まって、調達の選択肢が増えました。とはいえ、「電力」自体は目に見えず、どんな電気をどう使うか、日常的には意識がしづらいものです。今回は、そんな電気の存在がぐっと近くなる、取り入れ方のご紹介です。

お日様の分け前を、わが家で

教えてくれた人

藤野電力

鈴木俊太郎さん

藤野電力は、神奈川県相模原市・旧藤野町の有志が中心となり、立ち上げた活動グループ。地域住民の手による「自立分散型」のエネルギーを活用した暮らしを目指しています。中心メンバーである鈴木さんは、住宅へのオフグリッド※システムの導入を、設計から施工までを手がける傍ら、ミニ太陽光発電システムの組み立てワークショップなども提供しています。

藤野電力公式サイト

※電力会社の送電網(グリッド)から電力供給を受けず、太陽光などで発電した電気を自ら使う、いわば電力の自給自足のこと。

自宅でつくる電力

「電気」「電力」の存在を気にすることのない生活に慣れていると、鈴木さんに、「今ついているこの明かりは自前で、送電線を通って供給される電力会社の電気ではありません」と言われると、ちょっとした感動をおぼえます。究極のDIYで、ご自宅の建設にも参加するなど、とにかくいろんなものを自分でつくって楽しみ、使って楽しんでいる鈴木さん。東日本大震災以前から、ご自宅で、電力会社から独立したオフグリッド発電を実践していました。実践とはいっても、鈴木さんのそれには、我慢が伴わず、自らが心地よいと感じるやりかたを、心から楽しんでいるご様子です。

お日様や森とつながっているお家

風が通るように設計され、天井の高い鈴木さんのご自宅は、真夏でもエアコン要らず。冬には地域で伐り出した薪をストーブにくべて暖をとり、その熱源で料理もするのだそうです。実際にお邪魔しましたが、とても快適で、写真でも伝わるでしょうか、おしゃれです。鈴木家は、既存の電力会社との契約を維持しながら、屋根に太陽光パネルを取りつけて、使用する電力の一部をオフグリッド発電。照明は基本、自前でまかなっているのだそうで、まずはこれが、無理なくオフグリッドを取り入れるためにおすすめの形だと鈴木さんは言います。ほかに、家電などの使用に必要な電気(もっとも鈴木家は少ないですが)は、主に送電線からの電力供給を受けます。

災害時にも安心のエネルギー

太陽が顔を出さない日が続くと、電力をつくり出すのがむずかしくなるという不安定さはあるものの、電力会社からの電力も後ろに控えているから安心です。そればかりか、震災のような非常時にも、日中、太陽さえ出ていれば、真っ暗になることもなく、携帯電話の充電も心配もありません。そんなときは、電力だけでなく、薪も頼もしいエネルギー。鈴木家ではたくさんストックしてあるので、寒さに凍えることなく、あたたかい料理も難なくできてしまいます。ご自宅の近くには自家菜園もあって、幾重にも万全ですね。だからといって鈴木さんは、常に災害に備えるためにこのように暮らしているわけでもありません。自らの手と知恵を使いながらつくり上げるからこその暮らしを、あくまで楽しんでいるのです。

写真:充電の状況、電気の使用状況によって、電力会社の電気にも簡単に切り替えられ、併用もできます。

ひと言アドバイス

オフグリッドへは、まずは照明からがおすすめだそうです。毎日必ず使う灯りを目で見て確認ができるため、実感しやすくていい。空模様に敏感になり、晴れた日には太陽のありがたみを感じられます。

鈴木さんより

自家発電のいいところは、電力を意識するようになって、節電したり、生活の中で見つめ直したり、エネルギーに対して受け身でなくなるところだと思います。お金を払い人任せにすることが多い世の中ですが、自分の手で快適な環境をつくることには、代え難い喜びがあります。ものづくりの経験がある人はわかると思いますけれど、つくるって、楽しいですよね。

家庭菜園のような電力?

藤野電力による電力のことを、鈴木さんはこう表現します。「農業に例えると、メガソーラーは、効率を追求する専業農家。自宅にソーラーを設置して売電するのは兼業農家。それに対し、うちのようなのは家庭菜園なんです。一つひとつ丁寧に観察しながら、仕組みを学び、プロセスを楽しんで、結果としてちょっぴりしか収穫できなくても喜びがあります」…非常にわかりやすいですね。だから藤野電力は、電話一本でのアフターサービスを提供するようなことはしていません。そこに不安を感じる人もいるかもしれませんが、「自分の手でなんとかできることのほうに安心感や満足感を覚える人に向いています」と鈴木さん。

写真:地域には、藤野電力を導入した、こんな素敵なレストランも。

自分から切り離された「エコな暮らし」ではなく

鈴木さんの暮らしはエコですが、エコが目的なのではなく、結果なのですね。「環境にやさしい製品はいいのですが、そうしたものを買い揃えて“エコだ”というのは、僕の感覚とは少し違います。自分たちの手で快適な環境をつくって、暮らしが自分たちの手の中にあることを豊かだと感じるからです」そう語る鈴木さん、描く豊かさを追及してゆくと、環境にやさしい暮らしに、自然とたどり着くのだと、その暮らし方をもって教えてくれます。だから、ストイックに感じられないし、実際、ストイックなわけではないのですね。

写真:地域から調達し、自分たちで割った薪。こちらも生活を支える安心エネルギー。

ミニマムで10万円ほどの費用で

さて、藤野電力での施工を例にとると、こうしたオフグリッドを取り入れるために、どれくらいの予算が必要なのでしょう。尋ねたところ、ミニマムで10万円、家一軒、ほとんどすべてまかなう規模だと100万円くらいだそうです。新築するときに取りつけるのが最もスムーズだそうですが、後づけもでき、場合によってはマンションでも設置できるのだとか。藤野電力の場合は、リユースのバッテリーを活用したり、安く太陽光パネルを仕入れるなどの努力をしたうえで、鈴木さん自ら施工しているため、低コストを実現しています。今のところ、ほかではなかなか真似できていないそうですが、全国的に広がるといいですね。藤野電力も、それを願っているそうです。

写真:ほとんど自前の電力で暮らしている、神尾さんのお宅の屋根の上。

シンプルであることが心地よい

その藤野電力によるオフグリッドシステムを全面に取り入れ、ご自宅で使用するほぼすべての電力をそれでまかなっている神尾さん宅を訪ねました。「100%満足しています!」と神尾麗子さん。東日本大震災をきっかけに、従来の電力に疑問を感じた神尾さんは、ご自宅の新築に合わせ、満を持してオフグリッドを導入。今の暮らしは、「夢のよう」とおっしゃるほど気に入っているそうです。電力だけでなく、生活のしかた全般に、以前より意識をゆきわたらせるようになり、暮らし向きがシンプルになったとも。国産材をふんだんに使ったご自宅は、鈴木家同様に快適そのもので、「小学生の娘も大喜びです」と、笑顔の神尾さんでした。

神尾さんより

晴れの日の少ない梅雨時などは、充電できず電気がだんだん弱々しくなって、そのままにしていたら冷蔵庫が止まっていたことも。だけどそれを含めても大満足なんです。本当に導入して良かったです。日中のお天気次第で、「今うちにある電力」を家族で大事に使おうという意識を持てるようになったからです。電力会社への支払いは月に400円ちょっとですかね(笑)。

編集後記

電気だけでなく、暮らしの本質を考えさせられました。できるだけ手をかけずに済む便利を快適とするか、鈴木さんたちのように、逆のやりかたに喜びを見出すか、人によって意見が分かれそうではあります。ただ、私たちがずっと追い求めてきた前者の価値観が、それ一辺倒ではどうも違うと思い当たる人は少なくないのではないでしょうか。いずれにしても、手と知恵を使うほどに、暮らす人の側に力がつくのは間違いなさそうです。