今月の「生きるヒント」

シリーズ 人生のチャレンジ 移住を選んだ人たち 第11回《後編》林業会社社員 大塚潤子さん

憧れ続けた就職先は林業ベンチャー。東大卒の彼女が選んだ、しあわせな職業。

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プロフィール
おおつか・じゅんこ/茨城県出身。東京大学農学部(森林環境科学専修)卒業。外資系イベント会社、林野庁外郭団体の勤務を経て、東京都檜原村の林業ベンチャー、東京チェンソーズ入社。自らも都心から拠点を移す。十代の頃より関心が高かった環境問題に、国内の林業を通してアプローチし、この分野でのビジネスを成り立たせることで貢献したいと奮闘中。東大卒の“林業女子”として注目されている。東京チェンソーズ公式サイト http://www.tokyo-chainsaws.jp/

田舎は感動がいっぱい!

― この仕事を始めて、仕事の内容はもちろんのこと、ライフスタイルも激変したと思うのですが。

大塚さん :変わりましたねぇ。まず、健康的な生活になりました。毎朝お弁当をつくって出かけ、夕方に作業を終える。早寝早起き、規則正しいリズムで暮らしています。東京では中目黒に住んでいましたし、典型的な都会暮らしです。超ドライな都会暮らしも、それはそれで満喫していましたけれど、今の方が私は好きです。

― ご出身は茨城県のつくば市。農山村でのような暮らしは経験されていないですよね。

大塚さん :いわゆる田舎暮らしは知りませんでしたね。仕事ありきで拠点を移したわけですが、こうした場所が自分に合っているとわかりました。

― しっくりきていますか。

大塚さん :東京は人が多すぎて、マイペースな私でもリズムが狂うというか、翻弄されてしまいます。外と遮断された自分だけの世界を保ちたくて、通勤などではいつもヘッドフォンで音楽を聴いていました。こちらでは、知らない小学生も挨拶をしてくれるんです。だからヘッドフォンはやめました。広い空、きれいな川、挨拶してくれる子どもたち。ただ歩いているだけで、価値のあるものが転がっているように感じられます。

― あぁ、それはいいですね。大塚さんが、そうしたちょっとした事柄に感動する豊かさをお持ちだということでもありますよね。

大塚さん :そうだと嬉しいです。住民票を移したとき、原付のナンバープレートを取り替えようとしたらネジが錆びていてはずせなくて、四苦八苦してたんです。すると、知らないおじさんが近づいてきて手伝ってくれました。私は犬が大好きなのですが、スーパーの前で飼い主さんを待っているワンちゃんにかまっていたら、それに気づいたスーパーのおじさんが「これあげなよ」とお肉をくれたこともあります。なんでみんな、こんなにやさしいんだろうと、感動ばかりしています。

なにをやるかも大事だけど、誰とやるかも大事

― 先ほどからお聞きしていると、人がらみの感動が多いですね。

大塚さん :そうですね。ちょっと逸れますが、どんなに素晴らしい場所や条件を与えられたとしても、ひとりでなにもかも満足することはできませんよね。人には人が必要というか、周りに、誰がいるかがとても大切だと思うんです。なにをやるかも大事だけど、誰とやるかも大事。今の仕事だって大好きですけれど、一緒にやる仲間を仲間と思えなかったら、やっぱり無理だろうなと思います。

― 本当ですね。

大塚さん :その意味でも私は本当に恵まれていて、とても幸せです。大雪のときにみんなで雪かきして、そのあと飲みに行ったことを、「あぁ、いい時間だったなぁ」と思い返せる。新しい土地にやって来たのに、仲間に入れてもらえていること、だからこそ、前向きに頑張れること、しみじみ嬉しく思っています。

東京チェンソーズ代表の青木さんと、事務所の前で。

― 大塚さんは前向きですし、ささやかなような喜びを見過ごさずにつかまえられる方なんですね。

大塚さん :だって、この仕事にも、もし私が虫嫌いだったら、それだけで就くことができなかった。雨の日の仕事のあとの、あったかいミルクティのおいしさも味わうことができなかった。やっぱりすごく幸運なのだと思うのです。それに、前向きということでは、東京チェンソーズの代表の青木は、もう、びっくりするくらい前向きです。そうでなければ、この時代に林業で起業もしないでしょうけれど(笑)。

― なにをやるかも大事だけど、誰とやるかも大事。ですね。

大塚さん :はい。

将来の夢は“スーパーばぁちゃん”

― 大塚さんはこの先10年、林業のプロとして成長してゆかれるのだと思うのですが、ほかに目標や夢はありますか。

大塚さん :今は仕事をおぼえるのに夢中ですが、余裕が出てきたら、ヨガをしたり、犬を飼ったり、プライベートをより充実させたいです。仕事面では、現場の仕事をおぼえるとともに、環境のこと、森や木のこと、林業のことを、もっともっと伝わり届くものにするためにコミュニケーションの力量を上げなければならないと思っています。「いいことをしている」「いいものをつくっている」だけではダメだと思うんです。届けられて初めて価値になるのだから、届ける努力をしなくてはならない。そして、もっとずっと先の夢は…。

― もっとずっと先の夢は?

大塚さん :スーパーばぁちゃんになることです!

― スーパーばぁちゃん!?

大塚さん :そう、スーパーばぁちゃんです。現在、シルバー人材の皆さんと一緒に働くことがあるのですが、いつも感心させられるんです。なんでも自分の手でつくれるし、草刈りなんかもすごく上手で。私は技術を持った人をかっこいいと思うので、自分もそういうふうになりたいんです。

― なるほど。スーパーばぁちゃん、ですね(笑)。

大塚さん :なんでも買ってきて生活するのに慣れてしまっているけれど、買うよりつくるほうが、過程まで楽しめて豊かだと思います。田舎にいると、そういうことの多くが学べるので、少しずつ身につけたいです。一方で私は、ネット通販のような便利さを全否定しているわけではありません。手づくりのこだわりと、便利さとを使い分けてゆきたいと思っています。

大塚潤子さんの生きるヒント『笑顔で“Going My Way”』Going My Wayという言葉は、私が中学生の頃に父が教えてくれました。親の些細な一言がこうしてずっと残っているのだから、子育てって洗脳…って思います(笑)。父は確かにマイペースな人です。私も似たのでしょうか。だけど、自然とGoing My Wayでいられることについては、ポジティブにとらえています。それから、努めて笑顔でいること。どんな局面においても笑顔で前を向くこと。これは社会人になってから訓練されました。笑顔で、否定から入らず、どうやったら解決できるのか考えることが大事。そのほうがずっと開けてきます。人ひとりの人生で、そうたくさんのことはできない。それでもこの道で、ただひとつでも成功事例をつくりたいと思うから。そのために、笑顔でGoing My Wayです。


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