国崎先生の
ショートコラム

11月号(No.3)

おやつ大好き
~誘導食で食欲を出そう~

東日本大震災では消防職員が3日間何も食べずに活動したという報告があります。
備蓄されていた非常食が住民に優先して配られ、必死に救助活動をしていた消防職員への食事の配給が忘れられていたからです。

避難所にいる人もすぐに食べられたわけではありません。被災当日は避難や家族の安否などで食事を考えている時間がなかったといいます。食事が配給されるようになって空腹であったことに気づいた人も少なくありませんでした。
被災地では大切な人や物を失った喪失感、余震や火災といった二次災害への不安、不便で不慣れな環境で集団生活するストレスなどで食欲が落ちます。加えてトイレの劣悪な環境により水分の接種を控え体調を崩す人も出てきます。
生きるためには食事や水分を取ることが重要とわかっていても、「最初に届いたのが焼肉弁当で、とても食べられなかった」というように、食欲が低下していたり、空腹が長かったりしたときには胃に負担を大きくかけることへの抵抗が出てきます。

そのようなときに役立つのが「誘導食」※です。お煎餅1枚、ようかん一切れ、ゼリー飲料1袋など、ちょっとしたものを口にすることで、脳と胃に刺激を与えて「もっと食べたい」という気持ちを高めます。袋から開けた時の香ばしい匂い、パリッとした歯ごたえのある触感や、つるんとした喉ごしなど、できるだけ五感で美味しさを感じられるものを選ぶことがポイントです。

家族それぞれに災害時に食べたいおやつを考え、賞味期限が切れる前に食べて、また補充しておく「家庭内流通備蓄」※のサイクルで備えることをおすすめします。

※「誘導食」「家庭内流通備蓄」はともに国崎が考案した独自の防災用語です。